
写真=松林満美
―尾崎監督は、門脇さんをイメージしてストーリーを書かれたそうですね
尾崎監督とは、ドラマ「ブラックプレジデント」でご一緒して、その時の役が、おとなしくて、でも芯がある風変わりな女子大生役。その役のイメージに近いかもしれません。真実ちゃんは、私にとってはむしろ“女版・尾崎さん”という印象があります。監督ご自身を真実ちゃんに投影されているのではないかなと思います。
―小沼真実はどういう女の子ですか?
尾崎さんの描く女の子は本当にかわいくて、守ってあげたくなるような女の子ばかりで。真実ちゃんもその通りの女の子です。私とまったく真逆です。私はアウトドア派ですし、自分の話もよくします。あまり自分についてしゃべることに恥ずかしさも感じません。自分の意見を外に出して、どう思われるとか気にならないといいますか、冷静に自分を俯瞰している部分が大きいです。
―門脇さん自身はアウトドア派なんですね
山登りとかマリンスポーツとか、自然系が好きです。両親も自然が大好きで、子供の頃からいろいろな場所に連れていってもらいました。女優という仕事をはじめてからは、肌が焼けることを考えるとなかなか行けないですけど…。
―出来上がった作品を見ていかがですか?
かわいらしい映画になったなという印象でした。若い女の子が撮ったような映画。脚本で感じていた以上に、ガーリーな作品になりました。ファッションもすごく素敵で、真実ちゃんが最初のほうに着ているカーディガンなどの古着の感じも、すごくかわいくて好きです。
―どんなメッセージが込められた作品でしょうか
最近はカテゴライズされやすい世の中で、真実ちゃんのような子は“引きこもり”とか“オタク系”とかにジャンル分けされて、「こういう人はこういうものだ」と決めつけられる傾向が強すぎると思っています。そういうのって何かを貧しくしているような気がします。真実ちゃんは、はたから見たら「なんの取りえもない」と思われていたけど、彼女自身はイラストという生きがいを見つけて、生き生きしていますよね。何が好きとか何が大事とか、何が幸せかって、決めつけられるものではないし、逆に自分が、「自分はこうなのだ」と思い込んでいることが、はたして本当に幸せなのか。「本当は、そんなにがんばらなくてもよかったんだ」と気付く瞬間が、この映画にはあると思います。
―印象に残っているシーンはどこですか?
セミナーにゲスト参加するシーンです。シーンとしては、いいことを言って感動的な場面にすることもできるシーンだけど、そうはなっていない。それがすごくリアルだと思うし、ある意味、真実ちゃんが自分自身を受け入れた瞬間だったと思います。「別に一歩を踏み出さなくてもいいんだよ」というのが、この映画の本質だと思うので、このシーンは特に印象に残っていますね。尾崎監督らしいというか、あえてドラマチックにしないというのはすごいと思います。いろんなことを肯定してくれる映画だと思いました。
―最後にメッセージをお願いします
何が一番幸せなのかとか、自分は何が一番好きなのかとか、わかりづらい時代だと思うので、一歩立ち止まってみるのにいい作品だと思います。疲れちゃったり、がんばり過ぎちゃってる人にこそ見てほしい映画です。
―ありがとうございました
門脇麦(かどわき・むぎ)
1992年8月10日、東京都出身。
2013年の映画『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』で映画初主演。以降、NHK大河ドラマ「八重の桜」、舞台「ストリッパー物語」、NHK連続テレビ小説「まれ」、映画『二重生活』『太陽』、ミュージカル「わたしは真悟」など幅広く活躍。2014年の映画『愛の渦』『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』『闇金ウシジマくんPart2』の演技で第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞などを受賞。映画『こどもつかい』が公開中、9月に『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の公開が控える。