
―本作に出会った経緯を教えてください。
もとも と、長く親交があるニコラス・カザン(エグゼクティブ・プロデューサー)とリチャード・サックルという人が一緒にやっていた企画でした。送られてき た脚本を読んだら面白かったし、私も弁護士の資格を持っており、夫も弁護士として法廷に立っているので、法廷劇に興味がありました。こういう風に撮りたい というイメージも彼らと同じでしたので、ぜひ一緒にやりましょうという感じで決まりました。
―撮影期間と撮影時期を教えてください。
撮影期間は24日間でした。『フローズン・リバー』のときもそうでしたが、短い期間での撮影でした。撮影時期は2014年の7月にニューオーリンズでおこないました。
―本作を作るにあたって、何かイメージのようなものはありましたか?
最 初のコラボレーションでは『チャイナタウン』のようなムードをこの映画に持ってほしいと話しました。レニー・ゼルウィガーが演じたキャラクターには 『チャイナタウン』のフェイ・ダナウェイやファム・ファタールのように、はたして良い人なのか悪い人なのか、観客が見ていても分からない、そういう雰囲気 を出したいと思いました。
映画的なアプローチを考えていたからこそ、裁判でのシーンを少しモノクローム的な色彩にしているんです。その部 分が『チャイナタウン』や『評決』などと いった作品へのオマージュにもなっていますし、色彩設計も明るくしすぎず、抑えめにしています。あとは、私はこの作品に限らず、映画をリアルに感じてもら いたいという常々思っているので、裁判中に法廷内の人々が飽きてしまったその瞬間でさえも描きたかったのです。いろいろなことが起きている、そういう法廷 内のリアル作りたいと思い、そういったことを最初にたくさん話し合いました。
と にかく今回は、すべての面でリアリティを追及しました。特に法廷のシーンは、テレビドラマでやりつくされた感じがあるため、映画で見せてもなかなかリア ルに感じてもらえないのではないかと思いました。だからこそ、革新的な方法をとるしかないと思いました。例えば、映像がモノトーンに近くなる瞬間を作った り、実際の法廷の光そのままの照明にしたり、そういうことを恐れずに描きました。
―本作にはフラッシュバックが多用されていますね。
今 回すごく重要だったのは、フラッシュバックで見えていることはすべて本当に起きていることだと観客に思わせることでした。フラッシュバックですべてが描 かれていることもあれば、寸止め的なところもあるわけですが、証言台に立っている人たちは嘘をついているかもしれないが、フラッシュバックで描かれている ことは事実であるという風にこだわっているのです。
―キアヌとレニーに関して撮影中の印象的なエピソードはありますか?
と にかくキアヌはこの撮影中、ずっとレニーが素晴らしいとスターを見るような目で彼女を見ていました。だけど、レニーのほうはキアヌがそういう風に自分を すごいという目で見ていることに全然気付いていなかったんです。いろいろなことをキアヌが言っていたりするんだけど、全然気が付かないくらい、とにかくレ ニーは謙虚でした(笑)。接していると、本当にオスカー女優だということすらわからないんです。その瞬間瞬間を生きている、そういうことを気にしないで生 きているというところがあるんです。
―ありがとうございました
コートニー・ハント
1964年アメリカ生まれ。
自ら手掛けた短編版を劇場長編へと昇華した意欲作『フローズン・リバー』で2008年のサンダンス映画祭グランプリ、アカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネートされ、一躍世界から注目された女性監督。本作が長編第二作にあたる。