
―ドラマを生放送で演じる試み。どういった心構えで演じていますか
1対1の掛け合いという相手ありきのシチュエーションで、タイムリミットも5分と決められている中で、どうやって演じるのが正解なのか、かなり試行錯誤しています。あまり台本通りにしっかりお芝居をした場合、「生芝居」である意味があるのか、というご意見もあって、エチュード(即興劇)のようにアドリブの応戦をしてみたり…。
―ハプニングも許容するスタンスのドラマですよね
だから毎回ハラハラするんです(笑)。私は普段、劇団で演劇をやっていて、台本をもらったらとにかく一言一句を覚える、というやり方なので、逆にそれがドラマを窮屈にしてしまったりもするんです。生芝居で起こるハプニングや、セリフが飛んでもアドリブでなんとかするという展開も面白さや醍醐味だと感じる方もいらっしゃって、新しい芝居の形かもしれませんね。舞台と違って稽古時間もないですから。
―そんな中でも決めごとのようなものはあるんですか?
それすらない状態ではあるんですが(笑)。私なりに脚本から解釈しているのは、ガールズトークというか、本音を垣間見せるものなのかな、というのはあります。そのための“寝室”なんじゃないかなって。本編のドラマ「奪い愛、冬」は、人間の露悪的な部分をデフォルメして、荒波のようにエンターテインメントに高めているものだと思っていて、一方でこのスピンオフドラマは、海面の荒波とはちょっと離れた深海の、貝の中の真珠のような素朴なかわいさとか、礼香さん(ダレノガレ明美)が一人になったときの本音の部分を、監視カメラで覗いているようなものだと捉えています。それがちゃんと表現できているのか、と言われると黙っちゃうんですけど。
―ご自身が演じるメイド・朝比奈真純はどのような人物ですか?
ドラマ内ではまったく出てこない、自分の中での設定なんですが。もともとはお金持ちのお嬢様で、エスカレーターで高校まで進むはずが、親の会社が倒産して一気に転落し、高校受験もしていなくて途方に暮れていたところを、同級生だった礼香お嬢様に「ウチに来なよ」と言われて、それ以来、10年にわたり尾上家にメイドとして働いている…という気持ちでやっていました。私の中だけで。だからなんだってわけでもないんですけど。
―共演のダレノガレ明美さんについて
長セリフのプレッシャーとかすごいのだろうなと思いながらも、それに焦っている横顔とか、ちょっとした仕草とかに、かわいらしさが見える瞬間があって、それがこのスピンオフドラマの求める礼香お嬢様の姿なんじゃないかなと思います。私は、そんな礼香お嬢様をあわあわしながら見てるメイドの朝比奈、という関係性なのだと。
―ある種、特殊な環境でのお芝居で、学ぶものも多そうですね
普段、舞台をやるときは、台本を深く深く読み込んで、スキューバダイビングのように深く潜るイメージなんですが、今回のドラマは、まるで毎週25メートルプールを一気に泳いでいるような感覚です。なんというか…、セリフの応酬が、テニスのラリーをしているような感覚で。こういう言い方をすれば相手は返しやすいんだ、というのを初めて知ったり…。
―演者さんのその距離感や未完成な部分も、生ドラマという新しい面白さかもしれないですね
そうですね。難しいですけど、スタッフのみなさんがきちっと場を作ってくださっていて、作品に対する愛をすごく感じますね。今回のドラマで本当にいろいろなことに気付かせていただいたので、絵や作詩といった他の活動にも生かしながら進んでいきたいです。
―ありがとうございました
小野寺ずる(おのでら・ずる)
1989年5月17日、宮城県生まれ。
□字ック所属。女子美術大学卒業後に現在の活動をスタート。“子どもの声”と“獣の瞳”を武器に、舞台を中心にイラストやポエムを発表。舞台「荒川、神キラーチューン」でCoRich舞台芸術祭2014俳優賞を受賞。
小野寺ずるTwitter
小野寺ずるプロフィール
AbemaTV
毎週土曜20:54~21:00