
―映画を作ったきっかけはなんでしょうか?
私が敬愛す るノルウェーの作家Frode Grytten(フローデ・グリッテン)の短編に登場するハロルド・ルンデという人物に魅せられました。架空の敵相手に勇敢に戦い、生きるための理由と自 分の存在意義を追い求める姿がドン・キホーテを想起させて実に魅力的なのです。
―ノルウェーの俳優 ビョルン・サンドクヴィストを起用した理由は?
彼は多面性のある俳優で、演技の幅が驚くほど広い。脚本を書き始める前に、ハロルドの役は彼しかいないと確信していました。また、映画と同じぐらい舞台でも活躍する彼が持ち合わせている英知と他者への寛大さを尊敬していました。
―カンプラード氏に本人役で出演してもらいたいとは思いませんでしたか?
もちろん思いました。でも86歳の老人に、凍った池に落ちるシーンを頼むことはできませんからね。
ほ ぼ使用していません。彼らは靴を履いたまま、本当に凍った池の水の中でバタついていました。寒さが撮影中、唯一の困難だったといえます。撮影したス ウェーデンの北部は、撮影中常にマイナス30度以下で、予想以上に過酷でした。ハロルドの店は、私の出身地でもあるベルゲンの近くオサネで撮影されまし た。実際にあるIKEAの店舗の隣です。撮影監督のシーモン・プラムステンがとてもいい仕事をしてくれました。
―本作をどのように形容しますか?ロードムービーでしょうか?
特 にどのジャンルにも当てはまらないと思います。私は観客を驚かせることが好きで、慣例や垣根といったものを取り払いたいと思っています。それと同時に、 根底にある意味や間というものを大切にしています。人間が好きなんです。特に、誠心誠意行っているにも関わらず、失敗したり、まったく間違った方向に進ん で行ってしまうような人に弱い。彼らの姿は私を笑顔にし、時に笑わせてくれます。
でも決してからかっているわけではありません。ユーモア と優しさはとても相性がいいんです。口の悪いハロルドの妻マーニィも私は大好きです。私が映画のな かで老いや、老いていくことについて語るとき、それは自身の過去を遠ざけないのも大切だけれど、それ以上に新しい人に出会い、前に進み続けることこそが大 切なんだということを伝えたいからです。
―ありがとうございました。