
―最初に脚本を読まれたときはどう感じられましたか?
非常に真っ直ぐな脚本だったので、そこがいいなと思いました。すごく感動しました。映画って、ひとつの作品に関わると数年かかるものですが、「それを費やしてもいい」と思える脚本であり、テーマでした。
―もともとは日本が舞台の「忠臣蔵」がモチーフとなっていますね
これまで多くの素晴らしい監督さんが、素晴らしい作品を残しているテーマ。その「忠臣蔵」を、これまでのように日本を舞台に描くのは、はたしてどうだろう、という思いがありました。それに、英語で書かれた脚本を、英語で日本の方たちが演じるのにも違和感がありました。どの国の方も必ず共感できるテーマなので、国を超えて描きたい、普遍的なものを伝えたい、という思いから、本作を監督しました。
―脚本についてキャストとどんな話をされましたか?
みんな、もちろん日本の話ということは分かっていたので、改めて日本のことは勉強しなくていい、ということは伝えましたね。「武士道」のことなどは勉強しなくてもいいから、自分たちが知っている「正義」や「筋を通す」という概念を表現してください、と伝えました。
―「普遍的」というのも、国境や立場を超えて伝わるものがありますね
誰にでも、自分が信じる「筋」はあると思います。会社で働いてる方もそうですよね、「いつか見返してやる!」とか考えている方も多いと思いますし(笑)。死ぬほどの覚悟がないと、長いものに巻かれてしまう。長いものに巻かれると、それがストレスになる…。人生、耐え忍ぶことの連続だと思います。長いものに巻かれるのが悪いことだとは思いませんが、それなら、人の揚げ足を取ったり文句を言ったりすべきではないと思います。それが、本作で描かれている騎士たちの「筋を通す」という態度に表れているかもしれません。
―DVDになると、より多くの立場の方の目に触れることになりますね
そうですね、それが非常にうれしいです。このご時世、なかなか2時間という時間を割くのも大変だと思うので(笑)、一人でも多くの方にお届けできるとうれしいです。まずは見ていただきたいです。好きでも嫌いでもいいので、評価というより、まず見ていただくことが大事だと思います。
―演出において、「黒」の表現に苦労されたとうかがいました
黒をうまく表現するために、大量にスモークを使いました。まぁ、非常にお金のかかる撮り方ですよね(笑)。でも作品に関して妥協はしたくなかったし、やるべきことはすべてやったと思います。また、スモークのことだけではなく、そういうところにこだわらせていただけたというのもうれしかったですね。
―殺陣のシーンに日本の武士道を感じましたが、意識はされたのでしょうか?
ええ。アクション監督のチャン・ドゥホンに発注して、彼がうまい具合にいろんな文化の殺陣を融合してくれました。素晴らしいアクションに仕上がっているんですが、ジャンルとしてはアクション映画ではなく、ドラマ…のつもりです(笑)。
―監督の作品への思いやこだわりはなんでしょうか?
今回の作品で、それをやった経験や、一緒に作り上げた人たちに対して思いやこだわりはあるけれども、いままでに作ったものには、実はまったく執着がないんです。作品作りは、花火をやっているような気持ち、ですかね。形に残らない感覚が自分にはあって、その場での一番の美しさという感覚がありますね。
―今回の作品を経て、これからやってみたいことは?
分からないです(笑)。その場その場で出会うことを大事にしていきたいです。
―ありがとうございました。