
―4DX専用の映画、企画を聞いた時の印象は?
はじめは乗り気じゃなかったんです(笑)。実は、携帯電話もガラケーというアナログ人間でして、新しい技術には詳しくなくて、4DXも存在は知っていましたが見たことはなかったんです。実際に体験してみて、動いてばかりのアクションにはしたくなくて、きちんとドラマも見せたいと思い、プロデューサーもその意図を汲んでくださったので、挑戦してみようとなりました。
―「水」を使う演出は、4DXにぴったりですね
僕が監督デビューしたてのころ、まったく内容は別なのですが「雨女」という企画を考えていて、当時は実現しなかったのですが、「雨を降らせられるならちょうどいいな」と思ったんです。
―実際に作品が出来上がって、いかがでしたか?
4DXエフェクトについても意向を伝え、何度も修正していただきました。はじめは、韓国の4DX社にお任せしていたのですが、出来上がってみると最初から最後まで動いてばかりの4DX効果が盛りだくさん。緩急のバランスがよくないと、本当に効果が必要なときの印象が薄まってしまうし、映画の内容に集中できなくなるので、引き算しつつ、別のエフェクトを追加注文させていただいたんです。担当者の方もホラー好きだったので、「なるほど」と納得してくれていました。
―ここぞというときのエフェクトが本当に恐怖でした
何作か4DX上映作を見せていただいたのですが、やはり派手なアクションが多いんですよね。ずっと動き続けてると映画の内容に集中できなくなるシーンも多いんです。「ここには必要ないのに」と感じる場面もありました。
―新しいホラー映画の楽しみ方ですね
映画はかつて「体験」だったと思うんです。じっくり見てなにかを感じて、一緒に見に行った人のことやその頃の状況や思い出も含めて、それを持ち帰る。いま、映画は自宅どころかスマホでどこでも見ることができるようになって、「体験」から、「鑑賞」を超して「視聴」になっているんですよね。なんとなく流し見の感覚がある。劇場に足を運んでこその「体験」を、4DXという新しい入り口から改めて知っていただくきっかけになるといいなと思います。
―演技について、清野菜名さんはホラー初出演だったそうですね
アクションにも挑戦していたり、奇抜な役どころの印象が強かったので、この作品では、“コンプレックスを持つ普通の女の子”を見てみたいと思っていました。ホラー色のない方、というのもよかったです。撮影は大変でしたけどね(笑)。
―水中撮影もありましたね
水深5メートルのプールでの撮影も大変でした。「雨女」なのに撮影中まったく雨が降らなかったので、全編、雨降らしでしたし、真冬だったので、ずっと震えていましたね。
―最後にメッセージをお願いします
4DXを体験されたことのない方もいらっしゃると思いますが、アトラクションのようにずっと動くものだけでなく、「主人公と同じ体験をする」という、劇場でしか味わえない演出を味わえる、あくまで新しい「映画体験」です。「雨女」はあなたの体も心も濡らします。
―ありがとうございました。
清水崇(しみず・たかし)
1972年7月27日、群馬県出身。
大学で演劇を専攻し、小道具、助監督を経て、3分間の自作映像を機に黒沢清・高橋洋監督の推薦を受けて監督デビュー。ホラー映画『呪怨』が大ヒットを記録し、サム・ライミ監督のプロデュースのもと、USリメイク版で、日本人監督として初の全米興行成績No.1を記録。現在、東京・台場の日本科学未来館で3Dドーム作品「9次元からきた男」が公開中。