
photo=坂本康太郎
―まさに体当たりで、恋愛、青春、仕事、いろいろなものを表現されたと思いますが、この映画で一番表現したかったことはなんですか?
「青春」というのが一番ふさわしいと思います。「青春」っていうのは一時のことですが、渦中に生きている者たちはそれを青春だと意識していない。それだけ熱中して、熱狂して、懸命に生きていて、後から見たら「青春」だったと気付く一時の「熱さ」みたいなものが凝縮された映画です。見ていただいた方が、その熱さに対して、なつかしさなのか、憧れなのか、擬似体験なのか、なんらかの形で、今、生きているエネルギーに転換される何かを感じていただける映画だと思います。
―そういう「熱さ」をもったナオコという人物を、どのように表現されましたか?
クランクイン前にリハーサルが6日間くらいあったんですけど、劇団の関係性や人物そのものと向き合うことは、自分自身と向き合うことで、そこがとにかくハードでした。私が、本来、演じるべきナオコという人物は「劇団をけん引して指導力のある人物」であったにもかかわらず、私自身にその素養が乏しくて、情けなさが出てしまったんです。監督からも厳しい意見をいただいて、自信を喪失したのが一番はじめでした。その中で、劇団員のキャストとの関係性を構築していく過程がありました。
―結果としてナオコという人物像に深みが出たように感じます
私の足りない部分をみんなが補ってくれて、それが、ナオコを実は裏で支えてくれていた劇団員がいて…という劇中の関係性につながっていきました。もともとの脚本があったんですけど、人物としてこのシーンが成立しないのであれば変える、という、経験したことのない現場でした。その場の空気を捉えていった現場だったので、振り返っても覚えていない部分もあるんです。それがリアリティというか、深みにつながっているかもしれません。
―かなり濃密なリハーサルだったんですね
リハーサルの中で私だけが落後したな、という感じがありました。リハーサルの最終日に、江本監督と1対1で話したときに、「あなたはなんで降りないの? 事務所に迷惑がかかるから?」って言われたんです。これだけ足を引っ張って、なぜ降りようと思わないのか、と。私は虚をつかれたというか、びっくりしてしまって、でもすごくすごく悔しくて、どんなに足を引っ張ろうとも降りたくないと思いました。正確には覚えていないんですけど、「降りません」と伝えたら、「それなら、私は明日からも怒り続けるだろうけど、耐えて。やって」って。混乱したまま翌日の初日を迎えた感じでしたね(笑)。
―そうして出来上がった本編をご覧になっていかがでしたか
撮影当時はまったくどのようなつながりになるのかわからなかったので、改めて作品を見て、「あぁ、面白くなってよかった」って思いました。でも、面白かったと思えたのは、冷静に見られるようになったつい最近です(笑)。やっぱり監督すごいって(笑)。
―女優・早織として、すばらしい糧になりましたね
その通りだと思います。13年くらい女優をしてきて、余計な自尊心みたいなものが、知らぬ間に皮下脂肪のようについていたと思うんです。甘ったれていた部分が粉々に砕かれてよかったです。
―本編で、一番印象深いシーンはどこですか?
一番最後のシーンですね。最後なのであまり詳しくは言えませんが(笑)。ほかの人には理解されない孤独の中で突き進んでいくナオコという人物が、この道を選んだ、というのがはっきりとわかるシーンになっていると思います。
―最後にメッセージをお願いします
熱のある青春映画をぜひ劇場で楽しんでいただきたいです。そして、感想を聞かせていただきたいですね。どう見てもらえるのかな、っていうのが一番、気になる(笑)。
―ありがとうございました。
早織(さおり)
1988年5月29日、京都府出身。
2003年、ドラマ「東京少女」でデビュー。その後、ドラマ「電車男」「1リットルの涙」などの話題作に出演し、2006年の「ケータイ刑事 銭形雷」で初主演を飾る。主な出演作に映画『舞妓Haaaan!!!』『旅立ちの島唄~十五の春~』『百円の恋』など。2017年1月に映画『キセキ―あの日のソビト―』の公開を控える。