
―『ひるね姫』製作のきっかけを教えてください
今回はプロデューサーの、「自分の娘に見せたい映画を作ったらどうだろう」という提案をきっかけに企画がスタートしました。これまでの作品では、現実の社会で起きていることを個人の話にしていくという形でストーリーを作り上げていましたが、『ひるね姫』では、「娘に見せたい映画」ということとも関連しているのですが、逆に個人から話を構築していき、その中から何が見えてくるかという形でストーリーを展開させていきました。
―ひとつのアイデアから、たくさんの意見が加わって作品が広がっていったのですね
アニメは、ある種、スタッフの力を借りながら作っていく表現方法だと思っています。たくさんの人がかかわるということは、自分だけの表現欲求を貫くことが難しくもあるのですが、そういうところもアニメーション制作の楽しさなのかもしれません。『ひるね姫』の制作中にもそう感じたことがたくさんありました。
―外国人のスタッフもいらっしゃったそうですね
大勢で仕事をするというのは、よさもありますが、それと同時に難しさもあります。一緒に作っているのは、相手も何かを作りたいと考えているクリエイターなので、こちらがお願いした通りではなく、別の方法でやりたいと思う場合もあったりします。そんな時に相手を説得し、納得させて、最良の力を発揮してもらうのが監督の仕事。それもまた、作品をつくる面白さだと思っています。
―見どころはどういうところでしょうか?
『ひるね姫』は、話が進むにしたがって徐々に仕掛けが見えてきます。そして、最後には皆さんがイメージした「答え」みたいなものが見えてきて、腑に落ちるんじゃないかと思っています。最後の最後、エンディングまで目を離さず見ていただきたいですね。
―どんな人たちに見てほしいですか?
ココネと近い年齢の人にはもちろん、ココネの父親・モモタローぐらいの世代の人にも楽しんでほしいと思っています。家族の心の中にいる自分や、逆に自分の心の中にある家族といった「自分の中の他人」を意識し、そこに大事なものが眠っているというに気付いていただけたらうれしいですね。
―ありがとうございました
神山 健治(かみやま けんじ)
映画監督。背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。TVアニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」で監督とシリーズ構成を兼任した。「精霊の守り人」でも再び監督とシリーズ構成を担当。オリジナルTVシリーズ「東のエデン」では原作も務め、映画『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D劇場作品を監督した。