
―脚本のどんなところに惹かれましたか?
人と人のつながりがとても丁寧に描かれていて、温かい映画だなという印象でした。岡山は自然が豊かなイメージがあったので、その風景の中でこういった人間模様を描けたら、いい映画になりそうだな、という想像がふくらみました。
―何にでも一生懸命な彩音。彼女のどんなところが魅力ですか?
一生懸命で真面目だけど、失敗したらすぐ心が折れちゃうし、結局まわりに助けられているけど、一人だったらきっとあきらめているだろうな、という、すごく人間らしいところに惹かれました。監督も「そこに生きている人間が撮りたい」とおっしゃっていて、映画のヒロインとしてではなく、そこにいる人間として魅力を感じました。いま生きている環境で夢を見つけながら、妹のためにがんばっている素敵な女性だと思います。
―演じる上でどのような点に気を付けましたか?
余計なものをそぎ落とす作業が大変だったかもしれません。なるべくナチュラルに、語尾も自分のものに変えていいから、とにかく「普通に」というのを意識して演じました。監督がうまく演出して感情を持っていってくださったので、リラックスして演じることができました。津田(寛治)さんや斎藤(工)さんがコミカルなテンポで演じると、自然と彩音もそれに合わせてお茶目な部分が出るといった、現場での偶然…おそらく監督さんが意図していたと思うのですが、感じるままに演じました。
―岡山・赤磐での撮影はいかがでしたか?
暑かったんですけど、自然に囲まれて元気が出るという、すばらしい環境でした。赤磐の方々が温かく迎え入れてくださって、たくさん協力していただいて、そのなごやかな雰囲気が撮影現場にも伝わっていく感じでした。監督もみんなをファミリーみたいに扱ってくれる方だったので、キャスト、スタッフの年齢の幅が広かったんですけど、そんなことを感じさせない空気感でした。防蛾灯が照っている景色がきれいで、撮影中、何度も通った道でもあるので、すごく好きな場所になりました。
―地元の魅力がどのように伝わればいいと思いますか?
こういった「第一次産業を応援します」というコンセプトの映画があることはすばらしいことだと思いますし、この作品はすごくエンターテインメント性があって、コミカルでありつつヒューマンドラマも描かれているので、これを入り口に初めて赤磐のことを知っていただく方でも楽しんでいただける作品だと思います。見ていただければ、赤磐の自然や土地柄のよさとか、桃もすごくおいしそうに映っているので、興味を持っていただくきっかけになれるのかなと思います。
―桃もかなり召し上がったんですか?
本当にたくさんいただきました(笑)。地元の方が毎日、差し入れをしてくださって、本当においしくて幸せな時間でした。ブドウとか梨とか、おいしいものがたくさんある場所なんです。桃の収穫のシーンでは、桃がちゃんと見えるように、と、その場で教えていただいたのですが、高価な桃を獲らなければいけないので、すごく緊張しました。
―印象的なシーンはどこですか?
2カ所あって、「ここはどこですか」「赤磐です」という会話と、斎藤さんに向けて言う「みんなが助けてくれるの」というセリフのシーンです。3週間の撮影期間中、岡山でいろいろな人と触れ合ったり、空気を吸っていくなかで、どんどんしっくりくる言葉になりました。心から「その通りだな」と思いながら、実感して言えるセリフだったので、深く印象に残っています。
―最後にメッセージをお願いします
どの年齢層の方にも見ていただけるお話になっていると思いますし、まずは赤磐の方に大切に思っていただける映画になってくれたらうれしいなと思います。人との出会いを大切にしながら、つぎ木のように夢をつないでいって、夢の種をまいていこうと思えた作品でもあるので、優しい気持ちになるというか、ほっこりする映画になっていると思います。
―ありがとうございました。
高梨臨(たかなし・りん)
1988年、千葉県出身。
2008年の映画『GOTH』でスクリーンデビュー。2012年、アッバス・キアロスタミ監督によるカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『ライク・サムワン・イン・ラブ』で、第27回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。ほか、映画『醒めながら見る夢』『わたしのハワイの歩きかた』、ドラマ「花子とアン」「まっしろ」「不機嫌な果実」などに出演。11月18日(金)より、huluオリジナルドラマ「代償」が日米同時配信開始。「不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~」が2017年1月にスペシャルドラマで放送。