「涙せずにこの映画を見られる人は少ない」/『ディバイナー 戦禍に光を求めて』ラッセル・クロウ監督オフィシャルインタビュー

公開中の映画『ディバイナー 戦禍に光を求めて』に主演し、監督も務めているラッセル・クロウからオフィシャルインタビューが届いた。本作は、第一 次世界大戦後、息子を探すため異国の地へ降り立つ父親を描いた実話ベースの物語。初の監督作となる本作で自ら主演を演じた彼が、どのような経緯で今作の制 作に至ったのか、その想いを聞いた。

―この作品の原案(脚本)との最初の出会いについて教えてください。

今 回は2人から話を受けたんだ。一人は当時のユニバーサル・インターナショナルのトップで、もう一人は、数年前、ドキュメンタリーの仕事を一緒にした独立 系のプロデューサー。読んだ瞬間、今までにない経験をした。脚本が響いてきたんだ。物語が聞こえるだけではなく、映像までが目に浮かんできたのさ。この気 持ちを私は「1ページ目ラブストーリー」というのだけど、初めて読んだ時から、私にはこの作品に対する責任がある、と強く感じたのさ。

―今まで俳優として圧倒的なキャリアを積んでこられたあなたが、なぜ監督としてメガホンをとろうと思ったのでしょうか。

こ れまでに自分が出演してきた作品が、監督と密に仕事をする作品ばかりだったことに影響されていると思う。長い俳優人生の中で、何度も問題にぶつかり、そ れを監督と共に解決してきたのが私にとって勉強になった。ある程度の経験と知識を現場で養った私としては、監督することはとても自然な流れだった。特に計 画的だったわけではなくて、経験を積み、たまたま自分の感性と合った脚本に出会うことができた。だから、今度は自分が指揮を取ろうと決めたのはとても自然 なことだったよ。

―初監督として何か苦労しましたか?

そんなのは当たり前さ。特に 監督という立場であれば、映画はそういうものだと理解している。だから苦労も、大変な日は必ずあるけれど、それも映画の一部な んだよ。機関車のシーンを撮影したとき、連日49.5度の暑さだった。しかしスケジュールがあるから、そんな日はただ頑張るしかない。だから私は一つの シーンを複数のカメラで撮影する。一つのシーンをさまざまな角度から撮影することでたくさんの素材を残すことができる。素早く撮影することがどれだけ大事 かというのは、これまで多くの作品に出演してきたからこそ知っていることさ。

―監督をしながら主演をすることの難しさ、逆にやりやすかったことは?

rasseru02利 点は、主演男優に、私が要求する演技を必ずやってもらえるということかな(笑)。それと物語の中に自分自身が入ることができるからそれも利点だね。でも 現場に入り、その日は自分のシーンがないから衣装もメイクもする必要がないと気付くとほっとしたね。監督に専念できる日はより楽しくやれる(笑)。でも ね、周りが思うほど大変じゃなかった。それは何度も言うけど、何年も現場で働いていたおかげで、撮影がどういったリズムで進むかがわかっているからさ。

―この戦いはオーストラリア、そしてニュージーランド国民にとっては歴史上最も大きな悲劇の一つだと聞きましたが、なぜ今映画化しようと思ったのですか。

自 然とつながりを感じたから。水脈を探す能力は実際私の父親も持っていた能力。ほかの人がこの脚本を読んだらその能力は不思議でファンタジーだと思うかも しれないけれど、私は実在することを知っている。だから脚本を読んだとき、深いつながりを感じたんだ。そして私は二人の息子を持つ父親でもある。だからこ の父と息子たちの物語、息子たちの旅、父が息子たちを探すための旅、これらに深く感銘を受けた。そしてオーストラリアで育った私には、ガリポリの戦いやそ の物語はDNAに刻まれていることだ。初めて脚本を読んだ時からいくつもの層にわたって自分とのつながりを感じたんだ。

―戦場のシーンでのエピソードや工夫した点は?

壕 の中での戦いでは動きを何度もリハーサルした。肉弾戦の、激しく、そして緊迫したシーンは、充分な準備があったからこそ撮れたんだ。作品を完成させるた めに撮影のスケジュールが決められている。時間と戦い、天候と戦い、さまざまな要素に毎日左右される。200人とか300人のエキストラが同時に動き、爆 発があれば当然、問題が起きるさ。でもそういったことに備えて準備をする。役者たちは肉体的に、12時間、爆発から逃げる撮影にも耐えられるように鍛えら れていることは分かっていた。私がそのトレーニングをしたから当然だ。

―今後、監督したいテーマやジャンルは?

こ の作品を撮ると決めたときと同じことをすると思うよ。まだ次の作品はどんなテーマになるか分からない。きっと自分でも予想しなかったような作品を撮るん じゃないかな。私が作品を選ぶときはいつもそうなんだ。やったことのないことに挑戦したい。前にやったことのあることよりも、新しいことの方が新鮮で楽し いだろう?

―今作で日本の観客に一番伝えたいことは?

表面上では戦争映画に見える かもしれませんが、これは戦争映画ではありません。戦争を生き延びた人たちが、どうやって自然にまたつながりを求め、前に進 み、生きることに喜びを感じるかを描いた映画です。日本の観客の皆さんはきっと父と子の絆の深さを感じ、子供たちと父親が辿った旅路に心動かされると思い ます。そして、登場人物たちの誇り高き行動、特に、元は敵同士だった人たちの誇りに感銘してくれるでしょう。涙せずにこの映画を見られる人は少ないと思い ます。とても希望に溢れた映画をお楽しみください。

―ありがとうございました。

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ラッセル・クロウ
1964 年4月7日、ニュージーランド生まれ。 幼少期にオーストラリアに移住。『ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印<未>』での主演以降、着々とキャリアを重ね、1995年に『クイック&デッド』でハ リウッドに進出。『インサイダー』でアカデミー賞主演男優賞にノミネート。その翌年に『グラディエーター』で念願の受賞を果たした。最新作に、『The Nice Guys』の公開が控えている。

ABOUT
オーストラリア人のディバイナー(水脈を探し当てる職人)ジョシュア・コナーは、ガリポリの戦いから4年後、戦争で行方不明になった3人の息子たちの最期を知るため、トルコへと旅に出る。故郷からはるか遠い異国の地での捜索は困難を極めるが、コナーの決意は決して揺らがない。イスタンブールで宿を営む美しい女性アイシェや、息子たちと戦ったトルコの英雄・ハーサン少佐らの助けを借りながら、コナーは他者を許すこと、そして自分を許すことを知り、ついには一縷の希望を掴む。
配給:東京テアトル
公式サイト:http://diviner-movie.jp/
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