「話が進むにしたがって仕掛けが見えてくる映画」/『ひるね姫』神山健治監督インタビュー

『東のエデン』『精霊の守り人』『攻殻機動隊S.A.C.』など、重厚な世界設定の中で人間ドラマを描いてきた神山健治が、原作・脚本・監督を務める『ひるね姫』が公開された。本作では、これまでの作品とは一転、ごく普通の女子高生が主人公。モチーフは「夢」で、夢と現実が交錯する世界を描いた。本作誕生のきっかけを聞いた。

―『ひるね姫』製作のきっかけを教えてください

今回はプロデューサーの、「自分の娘に見せたい映画を作ったらどうだろう」という提案をきっかけに企画がスタートしました。これまでの作品では、現実の社会で起きていることを個人の話にしていくという形でストーリーを作り上げていましたが、『ひるね姫』では、「娘に見せたい映画」ということとも関連しているのですが、逆に個人から話を構築していき、その中から何が見えてくるかという形でストーリーを展開させていきました。

―ひとつのアイデアから、たくさんの意見が加わって作品が広がっていったのですね

アニメは、ある種、スタッフの力を借りながら作っていく表現方法だと思っています。たくさんの人がかかわるということは、自分だけの表現欲求を貫くことが難しくもあるのですが、そういうところもアニメーション制作の楽しさなのかもしれません。『ひるね姫』の制作中にもそう感じたことがたくさんありました。

―外国人のスタッフもいらっしゃったそうですね

大勢で仕事をするというのは、よさもありますが、それと同時に難しさもあります。一緒に作っているのは、相手も何かを作りたいと考えているクリエイターなので、こちらがお願いした通りではなく、別の方法でやりたいと思う場合もあったりします。そんな時に相手を説得し、納得させて、最良の力を発揮してもらうのが監督の仕事。それもまた、作品をつくる面白さだと思っています。

―見どころはどういうところでしょうか?

『ひるね姫』は、話が進むにしたがって徐々に仕掛けが見えてきます。そして、最後には皆さんがイメージした「答え」みたいなものが見えてきて、腑に落ちるんじゃないかと思っています。最後の最後、エンディングまで目を離さず見ていただきたいですね。

―どんな人たちに見てほしいですか?

ココネと近い年齢の人にはもちろん、ココネの父親・モモタローぐらいの世代の人にも楽しんでほしいと思っています。家族の心の中にいる自分や、逆に自分の心の中にある家族といった「自分の中の他人」を意識し、そこに大事なものが眠っているというに気付いていただけたらうれしいですね。

―ありがとうございました

20170329-01_sub02神山 健治(かみやま けんじ)

映画監督。背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。TVアニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」で監督とシリーズ構成を兼任した。「精霊の守り人」でも再び監督とシリーズ構成を担当。オリジナルTVシリーズ「東のエデン」では原作も務め、映画『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D劇場作品を監督した。

ABOUT
岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている森川ココネ(声:高畑充希)。何の取り得もない平凡な女子高生の彼女の特技といえばどこでも眠れることくらい。彼女は最近、寝る度に同じ夢を見る。それは、彼女が小さい頃に父親(声:江口洋介)から語り聞かされた自作のおとぎ話。父親の逮捕をきっかけに謎を追う彼女。それは彼女にとって思いがけず、自分を見つける旅でもあった。
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開日:絶賛公開中
公式サイト:http://www.hirunehime.jp
(C)2017 ひるね姫製作委員会