イオンエンターテイメントと千葉商科大学が産学連携「シネマ教育事業」をスタート/シネコン業界で初

イオンシネマ84劇場を運営し、国内最多の709スクリーンを展開するイオンエンターテイメントが、多くのビジネス人材を輩出する学校法千葉学園千葉商科大学と共同で、シネコン業界では国内はじめてとなる「映画興行、映画製作・配給」を題材とした本格的な「シネマ教育事業」カリキュラムを開発。10月27日(木)~12月15日(木)の間、全8回にわたって講義を実施する。イオンエンターテイメント株式会社代表取締役の牧和男氏と、千葉商科大学サービス創造学部学部長・教授の吉田優治氏に話を聞いた。

―今回の産学連携が実現した経緯は?

牧和男(以下、牧):現在の社長職に就くまで、新入社員教育や、社長の教育などに取り組んできました。会津若松市とのプロジェクトで「あいづっこ人材育成プロジェクト」を行ったのですが、映画館のない会津若松市の中学校の生徒に対して、出張映写をしたんです。そこで学生から、「初めて映画を観て泣きました」「生きる喜びを映画を通して学びました」といった感想をいただきました。映画とは、「教育・健康増進」であり、刺激を与えるものだと確信しました。そこへ、千葉商科大学の学生向けカリキュラムの話を聞いて、何かやれないかと思ったのです。

吉田優治(以下、吉田):この連携をするにあたり、3つの目標があります。1つ目は映画で学生を刺激すること。2つ目は6000人いる本学の学生のキャンパスマーケット(企業と学生が大学キャンパスをマーケットとして新たな創造に挑むこと)において、いろいろなものを学ぶこと。3つ目は、大学に新しいスタイルの映画館をつくり、全国780の大学のモデルになって展開していくこと。しかし、現在の学生は映画館に行くこともなく、映画に触れることもないのです。そんな現状の中、どうにか打破したいと思っていたところ、本学の公式サポーター57社のうち、イオンエンターテイメントさんがあったので、お願いし、実現しました。

―映画館で映画を観るカリキュラムを義務付けていますが、その重要性はなんですか?

20160928-01_sub02吉田:本物に触れることが大切だと思っています。映画館離れが続いている中、映画やスポーツ、音楽など、刺激のあるものを観て、感じてほしいです。今流行っている人気映画を観ることももちろんよいですが、少し周りの人と外れたものを観ようとする姿勢が今は少なくなっています。そういった映画も観て、自分自身の映画を見つけてほしいです。そして、洋画を観ることも減ってきていると思うので、ぜひ映画を通して海外を知ってほしい。映画を通すと、ストーリー性のある状況も知れるし、グローバル化といわれている昨今、外に出る前にまず見ることが重要ですよね。

牧:刺激が革新を起こす源ですよね。映画って、例えば自身を主人公として、もしくは親として、そして第三者の立場で観れますよね。そういった観点から、さまざまな刺激を吸収してほしいです。

―大ヒット映画が次々に生まれている一方で、映画離れといわれています。どのようにお考えですか?

牧:映画館って、親に連れていってもらい、友達と行き、恋人と行き、結婚して子供を連れて行き、孫を連れて行く…というふうに、世代を越えていけるものだと思っています。映画を観ることによって、さまざまなことが刺激され、感受性が豊かになります。まずは映画館に足を運んでもらうこと、来てもらうことがこれから先も重要ですね。そのためには、映画館に来てもらい、映画を観やすくすることを考えていきたいです。

吉田:そうですね。「この映画を観た!」という人がいても、それが全体の1%だったとしたら、来ていない残りの99%の人がどうしたら来てくれるかを考えなくてはいけませんよね。イオンシネマで観てるのか、TOHOシネマズで観ているのか…正直どれも一緒の気がしてしまうので、サービス提供モデルを一変させる必要があるかと。どこも同じでガラパゴス化しているので、差別化していかなくてはいけないと思いますね。映画館の年間利用者の低さが表れているので、見せ方づくりを考える必要性が今回の取り組みにおいてのねらいにもなっています。

―ありがとうございました。

牧 和男
1961年、3月生まれ。1985年ジャスコ株式会社(現イオン株式会社)入社。

吉田優治
青山学院大学大学院経営学研究科博士課程 卒業。千葉商科大学サービス創造学部長。

ABOUT
CINEMA EDUCATION PROGRAM
全国にイオンシネマ84劇場を展開するイオンエンターテイメントが、映画と教育を結び付けるために開発した、国内シネコン業界で初となる産学連携の取り組み。これまでの映画鑑賞に付加価値を付けることで、“映画=娯楽”という構図から“映画=娯楽+α”の構図へ昇華させる。千葉商科大学では、映画鑑賞をベースに「映画興行市場におけるサービス創造」を担う人材として必要な感性と知識の修得を目指す目的で、映画鑑賞自体をカリキュラムに盛り込んだ授業を編成。これは経済産業省産学連携サービス経営人材育成事業「In-Campus Real Business Learning」の一環として実施され、2016年10月から、実際に学生たちが映画を観て単位を取得するという試みが開始される予定。このプログラムの大きな特徴は映画の鑑賞方法にあり、これまでの映画関連授業のように、教室で映画を観る、自宅でDVDなどで鑑賞するといった形式ではなく、映画館で映画を観るということが義務付けられている。
公式サイト: