
写真=松林満美
―「みゆき」をどのように演じられましたか?
簡単に「こうだ」と答えを見つけられるものではなかったです。誰しも、生きていく中で正解というものはないと思うので、「脚本に書いてあるからこう演じる」というのは安直だなと。たとえ脚本から逸れたとしても、私自身が考え抜いて「こう動こう」と思った通りに演じました。
―撮影に入るにあたり取材もされたと聞きました
実際にデリヘルで働かれている方にお話を聞かせていただきました。お金のためというだけではなくて、さまざまな経緯や考えを経てここにたどり着いているんだなと感じました。福島の仮設住宅では、「元気」を感じました。これまであったことを明るくお話しされていて、それが私には驚きでもありましたね。それまでは、お隣さんに行くにも車で…という環境から、仮設住宅では壁を隔ててすぐ隣、という環境に移って、ストレスに感じているのだろうと思い込んでいたのですが、むしろ「すごく便利になった」とおっしゃっていたのが印象的でした。
―福島の住まいで過ごす姿と東京で働いている姿の差がよく表現されていました
自分では意識していませんでしたが、「外の自分」と「中の自分」というスイッチを入れていたかもしれないですね。私の「女性」に対するイメージは、「外で戦っている」という姿で、ましてみゆきは女性にしかできない仕事を選んでやっています。私が思っている「女性」として生きている姿が、観てくださった方に伝わるといいなと思います。
―多くの人の人生が描かれる群像劇ですね
廣木監督自身も群像劇を描きたいとおっしゃっていました。これは福島で生きるみゆきと父・修(光石研)の物語であり、東京で生きる三浦(高良健吾)の物語でもあり、場所は関係なく、生きている人たちの物語なので、誰が見てもフッと入り込める瞬間があると思います。
―一番印象に残っているシーンはどこですか?
脚本をいただいたときから好きだったのは、海のシーン。父(修)が海に向かって「母ちゃーん」と叫びながら服を投げるシーンですね。私にとっても母という存在はすごく大きいので、かなり感情を動かされました。父親の母親に対する強い愛を感じられるシーンです。
―最後に、メッセージをお願いします
これからも、今回のように人の心に触れる作品に携わっていきたいですね。生きていると「この道を選んだのって間違いなのかな」と悩むことや迷うことがあると思うんですが、どこに進んでいってもそれは間違いじゃなくて、自分の中で折り合いを付けられるかどうかなんだということを、この作品を通じて私自身、強く感じました。劇場を出た時に「これまでの人生、これでよかったんだ」とか、「ちょっと立ち止まって考えてみよう」とか、考えるきっかけになってくれたらいいなと思います。
―ありがとうございました
瀧内公美(たきうち・くみ)
1989年10月21日、富山県出身。
『グレイトフルデッド』で映画初主演を務め、ベテラン俳優・笹野高史との共演で話題を呼ぶ。その後は、『日本で一番悪い奴ら』『夜、逃げる』『ブルーハーツが聴こえる 人にやさしく』などの映画に出演。ドラマでは「美女と男子」「とげ 小市民 倉永晴之の逆襲」などに出演し、映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍している。
スタイリスト=馬場圭介
ヘアメイク=中島愛貴(raftel)