
写真=坂本康太郎
―舞台として人気だった作品を映画化した本作。スタッフの顔ぶれもユニークですが、脚本を読んだ感想は?
岡野真也(以下、岡野) 監督が「(脚本を)映画にまとめるのって本当に難しいね」とおっしゃっていたのが印象的でした。物語自体も、入り組んだつくりになっているので、さらに難しかったのかもしれませんね。逆に、事前にたくさん情報を共有できたので、クランクインしてからはとてもスムーズでした。
鶴田真由(以下、鶴田) ワンシチュエーションの舞台では成立するけれど、映画となったときに「どう画を作るのか」というのに悩まれたのかな、と思います。私も、舞台を拝見したときは、お話として面白いけれど、どうやって映像にするのだろうというのが気になっていました。出来上がった作品が素敵に表現されているのを見て嬉しくなりました。
―今回が初共演でしたが、いかがでしたか?
鶴田 母と娘、お互いに距離感がある役だったので、空き時間も、必要以上に話さないようにしていました。映画の中の距離感を保っていたほうがいいと思って。
岡野 そうだったんですね。あまりお話しできないまま(撮影が)進んでしまったのが心残りでした(笑)。私の役は、家族が好きだけど、反抗してがんじがらめになっている心境を演じる必要があって、おかげでいい距離感を表現できたと思います。鶴田さんは、現場でもずっとお母さんの役そのもので、優しくニコニコされていて、「もう、身をゆだねちゃおう」って思っていました。
鶴田 ありがとうございます(笑)。
―役作りについてはいかがでしたか?
岡野 23歳の娘としてのシーンのときは、ありのままでいようと思いました。反抗期の感じなんて、そのまんま私の反抗期と同じような感じです(笑)。一番悩んだのは、31歳のシーンで母となった立場での「動き方」ですね。出産を経験すると、重心が後ろに移ることがあると聞いて、ゆっくり大きい歩幅で歩いてみるなどして、母親らしさを出すようにしてみました。
鶴田 私は、娘から見たときに「ちょっとイラッとするお母さん」がいいなと思って。本当は、母親だから全部わかっているんだけど、娘からは「お母さんは何にもわかってない」と思われやすいように、天然で話し方もゆっくりしている人物にしていました。あえて気付かないフリをしたりとかね(笑)。
岡野 娘は、そのことにいつか気付いたとき、後悔するんですよね! 私も反抗期があって、きっと深く傷つけてしまっていたのだろうって、今ならわかるから、もし時間をさかのぼれるなら、当時の自分に「ちょっと待て」と言いたいですね。
鶴田 きっと誰にでもそういう経験があるのだと思います。親子だからこそ言えることもあるし、愛されていることがわかっているから強く言ってしまう。裏を返せば、それだけ信頼関係があるということだと思います。切っても切れない縁がそこにあって、それをすべてわかっているのが「母親」なのかな、と。監督が、とてもお母さんのことを大切にされているんですよ。
岡野 そうなんです! 監督の思いがいっぱい詰まっていますよね。モニターを見ながら、ご自身と重ね合せていたこともあったみたいです。
―印象的なシーンはどこですか?
岡野 渡辺いっけいさんとのマジックのシーンは、撮影していて本当に楽しかったです。早朝の撮影だったんですけど、そのことを忘れるくらい楽しかった。
鶴田 いっけいさんが練習している声が聞こえてくるだけで楽しかったよね(笑)。
岡野 動きも本当におかしくて(笑)。リアクションも含めて「団体芸」ですね(笑)。
鶴田 最後の岡野さんとのシーンもすごくがんばりました。物語がつながって集約するシーンでもあるので、とても大切に撮影しました。いっけいさんの手品のシーンで笑っていただいて、最後はそのクライマックスシーンに注目していただきたいです。
―最後にメッセージを
岡野 ジャンルに縛られない作品なので、本当に多くの方に見ていただきたいです。ご家族が円満な方もいれば、折り合いがつかない方もいるし、これから家庭を築く方もいるし、でもどの立場の方にとっても通じるメッセージがあると思います。そう自信を持って、心から言える作品になったと思います。私が普段、家族に言えない感謝の気持ちや恩返しを表してくれるような作品なので、見てくださった方にも、その気持ちを少しでも感じていただきたいです。
鶴田 脚本には「お母さんへの思い」というのがすごく込められていると思うんです。原作の舞台でも描かれていたその思いに監督が共感して映画を作り、私たち出演者がその思いを引き継いで…、どんどんバトンが渡っているような気がします。この世に生を受けたからには必ず母親はいるわけで、そういう意味で人を選ばない作品。見ていただいた方に、最初の「思い」が伝播していってくれるといいなと思います。
―ありがとうございました
左・岡野真也(おかの・まや)
1993年2月22日、栃木県生まれ。
2007年にドラマ「介助犬ムサシ~学校へ行こう!」で女優デビュー。2015年には映画『飛べないコトリとメリーゴーランド』で映画初主演。2016年の映画『下衆の愛』や、2017年のドラマ「ボク、運命の人です。」などで鮮烈な印象を残し、若手女優の注目株となる。現在放送中のドラマ「ブラックリベンジ」などに出演中。
ヘアメイク:宇賀理絵
スタイリスト:瀬川結美子
右・鶴田真由(つるた・まゆ)
神奈川県生まれ。
1988年に、ドラマ「あぶない少年II」で女優デビュー。1993年、映画『卒業旅行 ニホンから来ました』では、織田裕二演じる主人公の恋人役を好演し、広く注目される。以降も、数々のドラマや映画などで幅広く活躍。主な出演作は、ドラマ「マルモのおきて」「犯罪症候群」、映画『ほとりの朔子』『64―ロクヨン―』など。
ヘアメイク:赤松絵利(esper.)
スタイリスト:鈴木えりこ
衣装協力=プティローブノアー(03-6662-5436)、サン・フレール(03-3265-0251)