
写真=松林満美
―難しい役作りだったと想像するのですが
どの作品でもそうなのですが、演じる人物のことを想像して、その役と自分との距離を縮めていくようにしているんです。今回の場合、「一人の人間が“こうじゃなかった場合”」というのが常に存在していると思ったので、「その人生を歩んだ場合のアキ」を、それぞれ想像して演じました。女優として成功した、そうでなかった、挫折した、いろいろある中で、その場合の環境での人間の考え方というのを想像して、近づいていった感じですね。
―では、桜井さんが女優じゃなかったら?
すさんでいたかもしれないですね(笑)。もちろん、それはそれで満たされる人生を歩んでいたとは思うのですが、本当にこのお仕事をしていて幸せで、この満足度がないと想像するなら、今とはまったく別の考え方や振る舞いをしている自分になっていただろうなと思います。それが、今作のアキにも言えることで、同じ人間でも、生きる環境が違えば話し方や雰囲気が違ってくると思って演じました。観る方も「もし今の仕事をしていなかったら」という想像ができると思うので、人によっていろいろな見方ができる作品かもしれませんね。
―カイト役の高橋一生さんとの共演について
カイトは17歳のアキの人生において非常に重要なパーツで、その重要性をセリフではなく雰囲気や表情で醸し出されていたので、すごく自然に表現ができました。高橋さんがお持ちの雰囲気と相まって、不思議で温かいカイトを感じました。
―音楽と映像が印象的な本作。作品を観ていかがでしたか?
台本を読んだ段階から「なんて壮大な世界観なんだろう」と感じ、撮影に入ってからもどんな形に仕上がるのか楽しみでした。完成した作品を観て、映像と音楽の相乗効果を目の当たりにし、改めて音楽の力を感じました。圧倒されました。
―一番印象に残っているシーンはどこですか?
アキがカイトに「私は女優を目指している」と夢を明かすシーンですね。カイトの持つほんわりした雰囲気が出ていて、この2人の会話がとても好きです。素敵なシーンになっていると思います。
―これから先、やってみたいことは何ですか?
「これがやってみたい」というのもあるんですが、どちらかというと受け入れ態勢ができてきたというか。いつ何が来ても受け入れられるキャパを広げていきたいなと思うようになりました。自分で「こうしたい」と完全に決めてしまうと、それと違うものに対して距離感が生まれてしまうなと思って。自分が演じる限り、自分というものは出てしまうものでもあるので、ある程度は受け身でもいいのかなと。
―最後にメッセージを
この世界観を体感してください!
―ありがとうございました
桜井ユキ(さくらい・ゆき)
1987年2月10日、福岡県出身。
2015年から、石井岳龍監督の『ソレダケ/that’s it』や園子温監督の『リアル鬼ごっこ』、三池崇史監督の『極道大戦争』といった日本映画界の誇る鬼才監督の作品に出演。2016年には、ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」に出演。2018年に映画『真っ赤な星』が公開予定。