
写真=松林満美
―バイクに乗った姿がスタイリッシュで印象的でした
免許は持っているのですが、普段はあまり乗らないので、指導員の方に教えていただきながら、がんばりました。いつもは200ccのバイクに乗るので、ちょっと大きかったです。志保さんは、バイクに乗ったり整備工場でバリバリ働いたりして勝気な印象もあるのですが、お母さんを早くに亡くされて、勇作(小林稔侍)さんに守られながらも、年齢を重ねていくうちに、お父さん(勇作)を支えなければと思っている頃なのだろうと思いました。だから、お父さんと2人だけの暮らしがどんなものなのか、小林さんと2人で食卓を囲みながら理解していきました。
―政美(荒井陽太)と接する姿は、母や姉のような愛に満ちていましたね
そうですね。新しく守るべきもの、支えるべきものが増えた女性の姿なのだと思います。志保さんは、昔は負けん気が強かった人だと思うので、言葉の端々には強い口調が出るけれども、態度にはとげとげしいものがないのだと思います。でも、政美と取っ組み合いをするシーンは大変でしたね(笑)。私みたいな年齢の女性と取っ組み合いをすることなんて、ないでしょうから(笑)。
―作品を通じてだと、印象に残っているシーンはどこですか?
政美がトラックの中でお弁当を食べるシーンです。食べ物をおいしそうに食べる姿は、彼の心が立ち直ってきている証拠でもあると感じたので、物語の中でも重要なシーンだと思います。自分が出ているシーンでは、掛け軸を整理しているときに、お父さんに「触っちゃダメ」って言う場面。親子の、ちょっと距離はありながらも仲むつまじい感じが出ていて好きです。
―小林さんは、今回が初主演でした
私は2度目の共演なのですが、その時と変わらないご様子でした。演技しているときと、そうでないときもあまり変わらずにいらっしゃいましたね。撮影で使う食事を用意される方が、その料理道具を準備されているときに、「今日のメニューはなに?」と声をかけてらっしゃって。主演の方が穏やかな雰囲気だと、現場全体に伝わりますね。本作は、政美の心が時間とともにほぐれていく過程が大切な映画なので、稔侍さんが撮影現場にそういった寛容な気持ちでたたずんでいらっしゃることが大事だったのだと思います。
―政美もおいしそうにお弁当を食べていましたが、本当においしかったんでしょうね
お米がとってもおいしくて。囲炉裏(いろり)で温めたおみそ汁も具がすごく多いんです。古民家での暮らしはどこか非日常的で、でも志保さんは最新型のバイクに乗っていて…。古いものと新しいものが同居している、うれしいリンクができていたなと思います。
―愛知・豊田市が舞台。撮影中はどこかに出かける時間はありましたか?
豊田市のホテルの隣にスポーツクラブがあって、そのプールで泳いでいました。普段も泳いでいるので、日課が続けられてよかったです。実は、あまり観光には行けなくて…。移動に時間がかかっていたので、「今日は、(出かけるのは)やめておこう」というまま終わってしまいました(笑)。でも、撮影する現場がどこも素敵だったので、移動している間も退屈しなかったし、いい景色もたくさん見られたのでよかったです。
―地元の方も協力的だったとか
かなり協力していただきました。特に、名古屋グランパスの試合を観に行くシーンは、一緒に隊列を組んで、歌も教えていただいて。皆さん、自前でグランパスのユニフォームやフラッグを持って来られていました。お店の方から道行く方まで、皆さんに本当によくしていただきました。志保さんが勤める整備工場の方は、セリフを覚えて出演もしてくださったんですよ。地元の方に出ていただけると臨場感が出るので、本当にありがたかったです。
―愛知県に行ってみたいと思う人も多いでしょうね
豊田市が魅力的に描かれることで、愛知県全体の印象がよくなっていると思います。撮影の舞台だけではなくて、愛知には素敵な場所がたくさんあるので、「行ってみたいな」と思っていただけるといいですね。岐阜が近いのも魅力ですよね。山も川もあって。
―最後にメッセージを
出会った人やモノに対して、自分がなにをしてあげられるか、というのは、同時に自分がその人やモノに支えられている…生かされていたり意味を与えられているのだとも言えると思います。そうやってお互いに思いやっていける関係が、スクリーンに映っていると思います。政美やお父さんを支えながら、自分もまた政美やお父さんに生かされている、志保さんの姿を見ていただきたいです。
―ありがとうございました
壇蜜(だんみつ)
1980年12月3日、秋田県出身。
2010年からグラビアアイドルとして活躍。映画『私の奴隷になりなさい』で女優デビュー。主な出演作は『甘い鞭』『地球防衛未亡人』『関ケ原』、ドラマ「半沢直樹」「悪魔の六号室」「アラサーちゃん無修正」「ウチの夫は仕事ができない」など。