
写真=坂本康太郎
―美しいビジュアルが印象的でした
この作品にかかわらずこだわりのポイントです。今回の作品では、美術担当者と私が同じ美大を出ているんです。だからセンスが非常に似ていた。彼が提案するアイデアが私の意見とまったく一致するんです。参考にするビジュアルも一緒。ロケ地も、下見をするためにバスを降りた瞬間から、2人とも「ここにしよう」と決まったんです。
―お二人のヴィジュアルイメージがそのまま再現されているんですね
私たちがイメージした作家の一人が、アンドリュー・ワイエスの絵画でした。そこかしこにワイエスの絵画をモチーフにしたシーンがあるんです。たとえば、犬が寝ているシーン。あるいは、船の中に男性が横たわるシーン。いろいろなシーンで、“ワイエスらしさ”を感じられると思います。
―原作の大ファンだと聞きました
リメイクができると聞いたときは「信じられない」という気持ちでしたね。長い期間をかけて企画を実現していきました。プロデューサーも、たくさんの苦労がありましたが、資金を集め、実現に向けてあきらめずに努力してきたのです。だから企画が実現したときは本当に興奮したし、まさに「信じられない!」という気持ちでしたよ。
―印象深いシーンはどこですか?
撮影していて楽しいシーンを挙げるなら、お母さんに盾突いて、バグパイプを演奏するシーンです。本当に狭い部屋でカメラも動き回りながら撮影したので、楽しい思い出になりました。最後のダンスシーンも、準備は大変でしたが、撮影はとても楽しかったです。丹念に準備すれば、撮影が始まったときに、流れに応じて変えたり調整する余裕ができる。どんなことにも言えることですが、徹底的に準備をすることが大事ですね。
―史実に基づく作品ですし、下調べもたくさんされたのですか?
物語の骨子はある程度決まっていたので、あまり史実に忠実にしようという意識はありませんでした。ドキュメンタリーを作ろうとしたわけではないですからね。でも、時代考証は徹底的にしますし、美術班の用意する小道具は、物語の時代をきちんと反映したものになっています。それがベースにあって、プラスアルファとして私たちらしさ、それこそ“ワイエスらしさ”みたいなものを加えていったのです。
―最後にメッセージを
この映画にある楽しさというのは、普遍的なものだと思います。きっと、日本の映画で「ある島で日本酒が尽きてしまった。そこに日本酒満載の船が座礁してきて…」という作品があれば、スコットランド人の私も興味が出ると思うんですよ。“サケ”も好きですからね(笑)。異文化の作品ですが、シンプルに楽しんでいただければ。「この作品で人生が変わる」なんてたいそうなことは言いませんので(笑)、ぜひ気軽にお楽しみください。
―ありがとうございました
ギリーズ・マッキノン
1960年代のグラスゴーのギャングを描いた『Small Faces(原題)』で1995年エディンバラ国際映画祭最優秀英国映画賞とロッテルダム国際映画祭タイガー・アワードを受賞。以降、数々の賞に輝き、最近手がけたTV作品には、2014年エディンバラ国際映画祭マイケル・パウエル賞/最優秀英国映画賞と観客賞にノミネートされたエディ・イザード主演の「Castles in the Sky(原題)」や、ビリー・ロシュが脚本を手がけたアイルランドのTVドラマシリーズ「Clean Break(原題)」等がある。ジョージ・ルーカス製作のTVドラマ「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」にも携わった。