「これまで見てきたどの戦争作品より、優しい空気に包まれている」/『STAR SAND―星砂物語―』吉岡里帆インタビュー

2017年8月に公開された、アメリカ出身の作家ロジャー・パルバースによる初監督作品『STAR SAND―星砂物語―』のDVDが発売中。戦火から逃げ出した脱走兵たちの交流を描いた本作は、「(戦うことを嫌って軍を離れる)“卑怯者”こそが平和の実践者である」というパルバース監督の強いメッセージが込められ、戦争を描く作品の中でもユニークな視点で物語が展開する。本作の2016年の現代パートで、卒業論文のために入手した1冊のノートから、戦時中の出来事に興味を持つ大学生・志保を演じたのが、人気急上昇中の女優・吉岡里帆だ。本作への思いを聞いた。

写真=松林満美

―本作における保坂志保の役割はどのようなものでしょうか

志保は、劇中で現代の戦争を知らない世代の象徴として存在しています。無気力に生きてきた彼女が、必死に「生きたい」と思った女性の言葉に直筆のノートを通して出会い価値観を変えていく…そんな過程を大切に演じました。髪型も、監督の思う現代の日本の女子大生のイメージが反映されています。

―戦時中についての予備知識にはどう触れていましたか?

私の祖父が広島の生まれだった関係で、子供のころから戦争についての話をよく聞いていたり、資料に触れる機会が多かったんです。たくさんの絵や写真を見ましたが、どれを見ても、悔しいとか悲しいとか、「どうしてこんなことが起きてしまったんだろう」といった“違和感”を感じていました。最初に本作のお話を聞いたときも、戦争の悲しみや恐ろしさを表していくことになるのだと思っていました。それが私の「戦争映画」に対する印象だったんです。でも、本作は、戦争の悲惨さや苦しんだ人がたくさんいたことに触れながらも、アプローチの仕方が違いました。監督が、映画『アンネの日記』に携われてこられたこともあるからか、ノートという、後世に残るものがキーワードになることも、監督らしさを感じました。

―脚本の印象はいかがでしたか?

この作品は、戦争を描いた作品の中でも、銃撃戦や残虐なシーンがあるわけではなく、少し違った視点から描くことを監督が目指されていたんです。もっと、個人に焦点を当てているというか。だから、撮影に入る時は、監督自身が日本や戦争に対して考えていらっしゃることをよく聞くようにしていました。国の壁を越えて、恋心や助けたいという感情が芽生えたり、逆に日本人同士で対立していたり…。(織田)梨沙さん演じる洋海の役も素敵でしたし、戦時中を描くパートの脚本を、客観的な視点で見ていました。

20180626-01_sub01―ヒロイン・洋海の魅力はどんなところでしょう

洋海は、戦争の渦中にいながらも人を愛していたし、若くても意見をしっかり言える意思を持っていて…。戦争によって理不尽に覆されてきたものをたくさん見ているけど、島で爆撃を免れることができて、ちょっとだけだけど自分の人生を歩むことができた。私がこれまで見てきた戦争作品の中でも、優しい空気に包まれている女性だと感じました。

―印象に残っているシーンはどこですか?

洞窟の中で、言葉の通じない脱走した日本兵と米兵の2人がお互いのヒゲを剃るシーンが印象的でした。本当の“絆”を垣間見る瞬間だったと思います。

―吉岡さんご自身のこれからについて聞かせてください

ここ最近、いろいろな役に挑戦させていただいていて、今後も経験を重ねることで請け負う役柄も増えていくと思います。その中で自分が経験してきたことや思ってきたことを、脚本を読む段階から反映させていきたいと思うようになりました。観てくださった方が勇気づけられたり元気になったり、パワーを送ることができるような人になっていきたいと思っています。

―最後にメッセージを

夏を迎えるこの時期は特に、戦争という忘れてはならない出来事に向き合っていくべき季節かなと思っています。今、とっても平和な日本で暮らしていけることを幸せに感じながら、隣にいる人を傷つけるのではなく、大切に思う気持ちで、毎日を過ごしていきましょう。ぜひDVD、見てくださいっ!

―ありがとうございました

20180626-01_sub02吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日、京都府出身。
2015~16年放映のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の田村宜役で一躍知名度を上げる。2017年はTBSのドラマ「カルテット」での“悪女”ぶりが話題に。多数のテレビコマーシャルに出演し、認知度・好感度ともに急上昇中。主な出演映画は、2015年公開の『明烏 あけがらす』、2016年公開の『つむぐもの』など。待機作には、10月12日公開の映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』、来年公開の『パラレルワールド・ラブストーリー』が控える。

スタイリスト:圓子槙生、ヘアメイク:堀口有紀
衣装協力=HAN AHN SOON(ワンピース)、e.m(イヤリング)、COSMO NOSTALGIA(リング)
撮影協力=ベリーベリースープ 原宿神宮前店

ABOUT
1945年の沖縄。戦火を逃れて遠く離れた小島に渡り、一人で暮らし始めた16歳の少女・洋海(織田梨沙)は、洞窟で脱走兵である日本人・岩淵隆康(満島真之介)と、アメリカ人・ボブ(ブランドン・マクレランド)という2人の青年に出会う。戦うことを嫌って軍を離れた“卑怯者”同士の2人は、言葉が通じないながらも洞窟の中で暮らすうち、心を通わせていく。日系アメリカ人の母を持つ洋海は、時折通訳となりながら彼らの身の回りの世話を焼くうち、3人の間には不思議な関係が築かれていった。しかしある日、洞窟に隆康の兄・一(はじめ/三浦貴大)がやってきて、ついに悲劇が起きてしまう。2016年の東京。大学生の志保(吉岡里帆)は、卒業論文のために教授から一冊の日記を手渡される。それは、戦時中に沖縄の小島で暮らしていた少女のものだった。志保は日記を読み、そこに封印されていた過去の出来事に興味をひかれ…。
配給:The STAR SAND Team
公開日:DVD発売・レンタル中/iTunes、Google play、Amazon Prime Video、U-NEXT、Video Market、DMM. COM、ひかりTV、J:COMオンデマンド、dTVにて配信中
公式サイト:http://www.star-sand.com
(C)2017 The STAR SAND Team