
写真=松林満美
―本作における保坂志保の役割はどのようなものでしょうか
志保は、劇中で現代の戦争を知らない世代の象徴として存在しています。無気力に生きてきた彼女が、必死に「生きたい」と思った女性の言葉に直筆のノートを通して出会い価値観を変えていく…そんな過程を大切に演じました。髪型も、監督の思う現代の日本の女子大生のイメージが反映されています。
―戦時中についての予備知識にはどう触れていましたか?
私の祖父が広島の生まれだった関係で、子供のころから戦争についての話をよく聞いていたり、資料に触れる機会が多かったんです。たくさんの絵や写真を見ましたが、どれを見ても、悔しいとか悲しいとか、「どうしてこんなことが起きてしまったんだろう」といった“違和感”を感じていました。最初に本作のお話を聞いたときも、戦争の悲しみや恐ろしさを表していくことになるのだと思っていました。それが私の「戦争映画」に対する印象だったんです。でも、本作は、戦争の悲惨さや苦しんだ人がたくさんいたことに触れながらも、アプローチの仕方が違いました。監督が、映画『アンネの日記』に携われてこられたこともあるからか、ノートという、後世に残るものがキーワードになることも、監督らしさを感じました。
―脚本の印象はいかがでしたか?
この作品は、戦争を描いた作品の中でも、銃撃戦や残虐なシーンがあるわけではなく、少し違った視点から描くことを監督が目指されていたんです。もっと、個人に焦点を当てているというか。だから、撮影に入る時は、監督自身が日本や戦争に対して考えていらっしゃることをよく聞くようにしていました。国の壁を越えて、恋心や助けたいという感情が芽生えたり、逆に日本人同士で対立していたり…。(織田)梨沙さん演じる洋海の役も素敵でしたし、戦時中を描くパートの脚本を、客観的な視点で見ていました。
―ヒロイン・洋海の魅力はどんなところでしょう
洋海は、戦争の渦中にいながらも人を愛していたし、若くても意見をしっかり言える意思を持っていて…。戦争によって理不尽に覆されてきたものをたくさん見ているけど、島で爆撃を免れることができて、ちょっとだけだけど自分の人生を歩むことができた。私がこれまで見てきた戦争作品の中でも、優しい空気に包まれている女性だと感じました。
―印象に残っているシーンはどこですか?
洞窟の中で、言葉の通じない脱走した日本兵と米兵の2人がお互いのヒゲを剃るシーンが印象的でした。本当の“絆”を垣間見る瞬間だったと思います。
―吉岡さんご自身のこれからについて聞かせてください
ここ最近、いろいろな役に挑戦させていただいていて、今後も経験を重ねることで請け負う役柄も増えていくと思います。その中で自分が経験してきたことや思ってきたことを、脚本を読む段階から反映させていきたいと思うようになりました。観てくださった方が勇気づけられたり元気になったり、パワーを送ることができるような人になっていきたいと思っています。
―最後にメッセージを
夏を迎えるこの時期は特に、戦争という忘れてはならない出来事に向き合っていくべき季節かなと思っています。今、とっても平和な日本で暮らしていけることを幸せに感じながら、隣にいる人を傷つけるのではなく、大切に思う気持ちで、毎日を過ごしていきましょう。ぜひDVD、見てくださいっ!
―ありがとうございました
吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日、京都府出身。
2015~16年放映のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の田村宜役で一躍知名度を上げる。2017年はTBSのドラマ「カルテット」での“悪女”ぶりが話題に。多数のテレビコマーシャルに出演し、認知度・好感度ともに急上昇中。主な出演映画は、2015年公開の『明烏 あけがらす』、2016年公開の『つむぐもの』など。待機作には、10月12日公開の映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』、来年公開の『パラレルワールド・ラブストーリー』が控える。
スタイリスト:圓子槙生、ヘアメイク:堀口有紀
衣装協力=HAN AHN SOON(ワンピース)、e.m(イヤリング)、COSMO NOSTALGIA(リング)
撮影協力=ベリーベリースープ 原宿神宮前店