
写真=松林満美
―撮影に入る前の役作りについて教えてください
行平あい佳(以下、行平) 撮影前から城定(秀夫)監督とお話しする機会が多くて、私が考える明乃のイメージを共有させていただいて、意志疎通ができていました。撮影が始まってからも、私と目黒(毎熊克哉)さんとの距離感についてなど、モニター越しではなく近くで見てくださって。ちょっとのニュアンスの違いについても、監督自らが演じてみせてくださったりしたので、とても演じやすかったです。
杉山未央(以下、杉山) 私は、私自身と繭子に似通っている部分も多かったですし、演技の経験も浅いので、私自身の中にある役との共通点を見つけ出して現場に持って行って、監督から「ここは違う」とご指摘いただいた部分を埋めていくような感じでした。私がたどり着けなかった役になりきるヒントを、監督さんが現場で指導してくださったような。とても勉強になりました。
―似ている部分というのはどのあたりですか?
杉山 「変わりたい」という気持ちがあるけど、「どう変わったらいいかわからない」と迷っているあたりとか、でもこれと決めたらガッと前に進むところとかですね。この役を演じることになって初めて「自分にもこういうところあるな」って気付きました。自分のことを見直すきっかけにもなりました。
行平 明乃は、誰にでも通じる部分があると思うんです。会社勤めをしている女性であり、妻という一面もある。普段、生活をする中で、ある程度“慣れ”というか、型にはまり始めたと感じた時に、情熱の向けどころがわからなくなってしまうようなことって、誰にでもあるんじゃないかなって。明乃は、目黒さんにこじ開けられてああいった方向にいったんですけど、ベクトルが違うだけでみんな共通するところがあると思います。私はあそこまで男性を振り回せないかもしれませんけど(笑)。
―お二人とも異色の経歴をお持ちですが、そういう「変わりたい」という思いのあらわれだったんでしょうか
杉山 あぁ、言われてみるとそうかもしれませんね。やってみないとわからないですし、「楽しそう」と思ったらやってみちゃうところがあるので、あまり深くは考えていませんでした(笑)。気付けばのめり込んでいる、という点は繭子と共通しているかもしれないですね。
行平 新しい道にたどり着くために体は向いていたかもしれないですね。母の影響もあり、もともと映画には必ず関わりたいと思っていて、映画のサークルに入ったりしていたんですけど。和菓子屋さんで働いていた時期もあったんですが、大学時代のご縁で映像関連のお仕事のお話をいただいて、思えば遠回りして今のお仕事に続いていますね。絵コンテは、学生時代から書いていたんですが、まさか仕事になるとは思っていませんでした。
―それぞれ初主演、スクリーンデビューとなりました
行平 主演だから、という緊張はあまりなかったです。実感がなかったとも言えるかもしれないのですが・・・、映画の現場に、一番長くいられるということが何よりも幸せでした。でも、監督や技術部のみなさんが注いでいる熱意を視覚的に表現できるのは私たちしかいないので、そこは背筋が伸びるというか。私たちの読解力と表現力で作品の熱量が変わってきてしまうので、撮影している途中から、背負うものの重さを意識するようになりました。
杉山 今回で全部出しちゃったので(笑)、もう怖いものはないですね。これから演技のお仕事にもたくさん挑戦したいですけど、変に気取ったり隠そうとしないで、自分ができることをコツコツやっていきたいと思います。今回の映像もすごくきれいに撮っていただいて。タオルで叩かれるシーンは大変でしたけど(笑)。
―お互いの作品を見た印象を教えてください
杉山 行平さんが出られている第2章は、物語がシンプルで、登場人物も多くないのでメッセージがダイレクトに伝わってきましたね。あと、明乃がとにかくかわいい! 私が想像していた明乃とは全然違う明乃でした。シンプルに明乃と目黒さんの関係に嫉妬しました。
行平 第3章は「エンターテイメント」性が強いなと感じました。登場人物が多くて華やかに見えるんですが、その分、それぞれの悩みとか迷いが複雑に入り組んで、行く末がわからない。そんな中で、繭子の変わりっぷりが、ある種の「シンデレラ」に見えて・・・、変わりたいと思っている人はいっぱいいると思うし、私もそうなので、きれいに変貌できる繭子がうらやましかったです。
杉山 繭子は、服からなにから全部変わるので、おとぎ話みたいでしたよね。相当変わりたかったんだろうなぁ・・・。明乃の変わり方はすごくリアルですよね。現実味があるというか。
―最後に、それぞれご出演の作品についてメッセージをお願いします
行平 第2章に限らず、映像がアーティスティックで鮮やかですし、その中で明乃と目黒さんの関係性が繊細に描かれているので、それを読み解いたときに、理解できていそうでできていないような観後感があると思うので、それが自分の中のどこに起因するのかを紐解いていただくと、新しい世界が広がっていけるような物語になっていると思います。そこに目を向けて観ていただければいいと思います。
杉山 第3章は、繭子という一人の人間が、生きがいもなくなんとなく生きていた自分を変えていく過程を描いているんですけど、それと同じようなことを日常で感じている人は多いと思っていて、人と出会って生き方が変わることや影響を与えることもあると思うので、共感しやすいと思います。セクシーなシーンも多いですが、そこだけじゃなくて、構えずフランクに観に来ていただきたいです。
―ありがとうございました
右・行平あい佳(ゆきひら・あいか)
1991年8月8日生まれ。東京都出身。
『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』明乃役。早稲田大学を卒業後、フリーの助監督として2年間にわたり撮影現場で働き、その後、絵コンテライターに転身。同時に、念願の女優業も開始する。
左・杉山未央(すぎやま・みお)
1995年4月1日生まれ。東京都出身。
『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』繭子役。東京農大を中退後、女優業を始めた新人女優。本作にてスクリーンデビュー。
大手広告デザイン会社で仕事をする目黒(毎熊克哉)は、婚約者のある身でありながら、清楚だがどこか妖艶な魅力のある人妻・明乃(行平あい佳)を口説き、関係を持つようになる。逢瀬にのめり込んでいく2人だが、ある日、目黒の会社に明乃の夫が訪ねてくる。夫は、社会的制裁の代償として、妻である明乃との関係を続け、調教し、詳細を報告するよう伝え、その日から夫の指示の下、さらなる調教の日々が始まった。
『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』
目黒は、数年前の明乃との関係以降、自分自身が奴隷をコントロールして“ご主人様”となり、過去の自分が受けた“隷属”を他人との関係に築こうと懸命になっていた。ある日、繭子(杉山未央)という、見た目は奥手だが強烈な調教願望を刺激する女性と出会い、奴隷として開眼させる。ただ、その視線の先には明乃の影がちらついて離れなかった。そんな折、複数飼っていた奴隷たちとの関係に破綻が生じはじめ・・・。