「いま思うとかなりひどいことを言ってますよね」/『レディinホワイト』吉本実憂インタビュー

“クズな新人”や“ゲスな上司”をはじめとする“有毒社員”の仁義なき戦いを描いたコメディ映画『レディinホワイト』が11月23日に公開される。パワハラ全開のゲスな上司に真っ向から勝負するクズ新人の如月彩花を演じたのは、『罪の余白』以来、3年ぶりに大塚祐吉監督とタッグを組んだ吉本実憂だ。役へのアプローチ方法や、今作の見どころなどについて語ってもらった。

取材・文=幸谷亮、写真=松林満美

―彩花という役に対し、台本を読んだときはどういった印象を持ちましたか?

台本を読んだ時点では、特徴的な役という印象はありませんでした。ただ、大塚(祐吉)監督とは以前、『罪の余白』でご一緒させていただいていて。変わっている方というのは知っていたので(笑)、「単純なキャラクターにはならないんだろうな」と思いながら読んでたんです。そうしたら案の定、ぶっ飛んだ役でした。

―あそこまで特徴的な役だと、役作りに苦労されませんでしたか?

がんばって彩花を演じようとしたんですが、役が入ってくるまでにかなり時間がかかりました。彩花はいつも自分が一番、自分の言っていることが正しいと考えている。他人が「黒」と言っても、「白」に変える自信すらある女の子なんです。テンションが高くないと演じられないと思っていたんですが、なかなかその状態まで持っていくことができなくて。4日間のリハーサル期間があったんですが、最初の3日間は全然演じられませんでした。

―そのような状況をどのように打開されたんですか?

大塚監督のひと言が大きかったですね。リハーサルの最終日に、「彩花として演じられたらおまえのおかげ。もし演じられなかったら俺のせい」と言ってくれて。がんばってももしダメだったら監督のせいにすればいいんだって、なかば開き直りのような感覚で「どうなってもいいか」って悩むことを諦めたんです(笑)。それでようやく彩花としてスイッチが入りました。その後は監督から「演技をするときは力を抜いて、抑揚もつけなくていい。素の自分で話すように」と言われていたので、朝起きてから現場に到着するまでの間、リラックスするように意識していました。諦めることも悪いことではないんだって気付かされました。

―リラックスするために気を付けたことなどはありますか?

内容を理解する目的以外には、台本をあまり読まないようにしてたんです。その代わり、台本に書いてることだけでなく、プラスアルファの部分を考えるようにしていました。セリフを言うときの効果音や決めポーズを考えることに集中していたので、いままでの映画やドラマと比較しても一番台本を読まずに臨みました。

20181121-01_sub01―実際に吉本さんが提案した演出はありますか?

彩花がたまに中指を立てるポーズをするんですが、大塚監督から「おもしろい中指の立て方ない?」と言われたんです。おもしろいって、なんだよって感じじゃないですか(笑)。効果音を付けたらおもしろいと思って、「ぽよーん」と言いながら中指を立てたんですが、いま考えるとばかばかしいですね(笑)。とにかく、撮影中は毎日楽しかったです。

―外見としてはどういう役作りをして挑みましたか?

リハーサル前のタイミングで、ベスト体重よりも5キロくらい太っちゃったんです。体重が増えると顔が変わりやすいので、大塚監督に「痩せたほうがいいですよね?」と聞いたら、「痩せてるとセリフが嫌味に聞こえるし、太って“ぶちゃいく”なほうが愛きょうがある」と言われて。撮影の日は、朝起きてからたくさん水を飲んでむくませるようにしてました。

―彩花と吉本さんに共通する部分はありますか?

彩花は大事なプレゼンの場面でもキメキメの白いスーツやドレスを着るほど白が好きなんです。一方、わたしは黒が大好き。私服は「ほかの色も着てみたら?」と言われるくらい黒がほとんどなんです。「この色がいい」ってなったらその色ばっかり好んで着ちゃう部分は似ていると思います。

20181121-01_sub04―無神経さと何ごとにも物怖じしない強気な態度で、上司に対しても毒づいたセリフを言うシーンが印象的でしたが、複雑な気持ちなどはありませんでしたか?

正直、なんとも思いませんでした。「ひどい」とか「あり得ない」とか、なにか感じないと人間的にダメですよね(笑)。彩花のセリフに「頭の悪い人と仕事をするのは無理」というのがあるんです。あのときは彩花として生きてる時間が長かったので気付きませんでしたが、いま思うとかなりひどいことを言ってますよね。

―実際に、翔平(波岡一喜)のようなパワハラ全開の上司がいたらどうしますか?

パワハラとは違った意味で嫌ですね(笑)。というのも、翔平は怒鳴るし理不尽なことも言うけど、その反面、正しいことも言うし結果も出してるんですよ。理不尽なことしか言わず、かつ仕事で結果も出してなかったら文句も言えるんですが、パワハラ全開でも、ちゃんと結果を出してるところが厄介。なので、矢本(悠馬)くんが演じた猪瀬が翔平に付いていきたくなる気持ちも分かるんです。わたしの場合、パワハラに耐えながらも盗めるところは盗んで、翔平よりも上にいけように努力すると思います。

20181121-01_sub03―実際に演じてみて、改めて彩花とはどういう女性ですか?

プライドが高く、自由に生きているので嫌われることもあるんですが、わたしはとても好きですね。普通、パワハラ上司におびえていたら自分の意見も言えないじゃないですか。彩花の場合は自分が正しいと思って生きてるので、物怖じせずストレートに言えちゃうんですよ。その辺がかっこいいなって思いますね。

―最後に、今作の見どころについてお聞かせください

彩花がかなりぶっ飛んだ役なので、そのスパイスみたいなものを単純に楽しんでほしいです。この作品を見て楽しんでもらい、何か少しでも共感できる部分などを持ち帰ってもらえたらうれしいですね。

―ありがとうございました

20181121-01_sub02吉本実憂(よしもと・みゆ)
1996年12月28日生まれ、福岡県出身。
2012年に第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリを受賞し、芸能界デビュー。2014年、テレビドラマ「獣医さん、事件ですよ」で女優デビューを飾ると、同年の12月には『ゆめはるか』で映画初出演にして初主演を果たす。2015年、映画『罪の余白』で可憐かつモンスター女子高生役を熱演。その後も映画やドラマ、CMなど幅広く活躍中。2019年1月18日公開の映画『めんたいぴりり』に花山先生役で出演。
インスタグラム=https://www.instagram.com/miyu_yoshimoto_official/
Twitter=https://twitter.com/miyuyoshimoto

スタイリスト=山本隆司、ヘアメイク=小嶋絵美

ABOUT
親の資産で何不自由ない生活を送ってきた如月彩花(吉本実憂)。ホワイト企業と思って入社した会社では、パワハラ全開のゲスなエリート上司と衝突の日々。今まで味わったことのない屈辱に直面する如月だったが、そのゲス上司に負けない驚きのクズっぷりを発揮する。そんな中、時を同じくして彩花の父の会社が倒産。ゲスな上司からの嫌がらせに加え、新人ながら社運を懸けたプロジェクトまで任される羽目になり・・・。
配給:太秦
公開日:11月23日(金・祝)より、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、ミッドランドスクエアシネマほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://www.liw2018.com
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