「息苦しい思いをしている方たちに共感してもらえるはず」/『十二人の死にたい子どもたち』坂東龍汰インタビュー

直木賞候補にも挙がった冲方丁のサスペンス小説を、堤幸彦監督が映像化した映画『十二人の死にたい子どもたち』が1月25日に公開される。集団安楽死をするために廃病院に集結した12人の少年少女たちが繰り広げる密室サスペンスゲーム。キャストが「豪華すぎる!」とSNSを中心に話題になった本作で、不良キャラだが弱者には優しい親分肌のセイゴ役を演じた坂東龍汰に、撮影時のエピソードやプライベートついて語ってもらった。

写真=坂本康太郎 取材・文=幸谷亮

―台本を読んだときの感想を教えてください

12人それぞれの死にたい理由がどんどん明らかになっていって、怖いというよりはワクワクしながらすごいスピードで読み終えてしまいました。自分はもちろん、共演者がそれをどう表現するのかがすごい楽しみで。“お芝居合戦”になるんだろうな、というのが想像できました。

―演じるセイゴについて、堤(幸彦)監督からは具体的にどのような話をされましたか?

セイゴは見た目がオラオラしてるし、すぐにキレるような男の子。一方の僕自身は、オラオラしてなければガタイがイカツいわけでもない。セイゴと僕は似ても似つかないルックスなので、正直、台本を読んだときは僕にセイゴが務まるか不安でした。でも、ただの不良というわけではなく、内面的な優しさを持ち合わせているキャラクターにしたくて僕をキャスティングしていただいたということを監督から聞いて、「僕にも演じられるセイゴがいる」ってことを知って安心しました。

―演じる上で難しかった部分は?

実際に演じてみると、優しい一面を出すのは無理せずにできますが、キレて怒りを表現するのは簡単ではないなって実感しました。もともと声が高いほうなので、もっと低い声で発したり、大声を出すときは思いっきり出したり。それでもまだ声が高くて、練習中に「声が高いから低くして」という指示が何度かありました。それに、不良っぽさを出すためにも、気だるそうな動きをしないといけない。普段はモルモットとか小動物のような動きに近いので(笑)、演技中はライオンやトラなどの動きを意識していました。内心は緊張してて心臓もバクバクしているんですが、それを外に出さないようにしてました。

20190115-01_sub01―テーマが「安楽死」とあって、シリアスな撮影現場だったのでは?

僕も最初はそういう現場をイメージしていました。ノブオ役を演じた(北村)匠海とは以前から親交があったので、出演が決まってから連絡をしたら「ピリピリした現場になると思う」って脅されたんです。でも、蓋を開けてみたら、終始、いろんな話題で盛り上がって笑いの絶えない雰囲気で撮影が進みました。共演者がみんな同世代ということもありますし、監督も現場を和ませてくれるなどユーモアのある方で。安楽死の会場となる部屋で12人がテーブルを囲んでいるシーンの待ち時間なんかも、暗い雰囲気になることはありませんでしたね。

―それだと、シリアスなシーンとの切り替えが難しそうですね

逆に、和やかな雰囲気が緊張感を和らげてくれて、自然とスイッチが切り替わりました。ほどよい緊張感というか。撮影の前はたしかに不安でしたが、途中からはカメラがあるか分からないほど演技に没頭することもあって、いい緊張感を持って撮影に挑むことができました。

―撮影中で印象に残っていることはありますか?

撮影中はみんな仲が良かったんですが、特に新田(真剣佑)くんと一緒にいる時間が多くて。彼はいろいろな作品で活躍している役者さんなので、最初は高嶺の花的な存在だったんですが、実際はめちゃくちゃフレンドリーなんですよ。撮影が終わって一緒に帰ってたら、ピザを食べたいって話になって、彼の自宅でデリバリーのピザを頼んで食べたんですが、それ以降はほぼ毎日のように彼の自宅に入り浸ってて。彼のセリフが多いというのもあったんですが、一緒にゲームをしたりセリフ合わせをしたり。そういうのもあって、撮影中は現場に行くのがいつも楽しみでした。

20190115-01_sub02―楽しく仕事をしている様子が伝わってきます。普段、プライベートではどうやって息抜きをされているんですか?

ショッピングに出かけたり、役者仲間と焼肉やカラオケに行ったり。基本的に自宅で一人で過ごすことはないんですが、いまは仕事にハマってて、どうやったら芝居がうまくなるのかというのを一人で研究することもあります(笑)。ちょっと恥ずかしいんですが、自分で設定を考えて一人で二役をこなしてみたり、鏡の前で表情の研究をしてみたり。撮影を終えた映像を見て「俺、こんな顔してたの?」ってなったらもう手遅れじゃないですか。そうならないように、自分の表情をしっかり把握した上で芝居をしたいなって。役者として自分の表情を知ることも仕事の一つだと思っています。

―今後、挑戦したい役はありますか?

今までやったことのない役、強いて言えば、内なる狂気を秘めた悪役とかに挑戦してみたいですね。今作も不良キャラでしたが、セイゴとは違って目がイッちゃってるような(笑)。特徴のない普通の役もそうですが、そういう振り切った役も演じるのが難しいと思ってて。実際に生きてたら、狂気じみた状況になるってなかなかないじゃないですか。役を通してですが、こういう人生も味わえるっていうのも役者の魅力の一つなんですよね。

―最後にメッセージをお願いします

SNSでも話題になりましたが、本当に素敵な役者さんが集まって、すごいパワーのある作品に仕上がってると思います。そういった意味での注目度はもちろんありますが、12人の登場人物それぞれの「死にたい」理由があって、それぞれの悩みがリアルに表現されているところも、この作品の魅力の一つだと思います。コミュニケーションをとることはもちろん、人と話したり悩みを打ち明けたりすることで今の状況を変えられるかもしれない。この映画を見ることで、何かに悩んで息苦しい思いをしている方たちに共感してもらえるはず。「安楽死」というテーマですが、怖がらずに(笑)、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

―ありがとうございました

20190115-01_sub03坂東龍汰(ばんどう・りょうた)
1997年5月24日生まれ、北海道出身。
2017年に俳優デビュー。2018年、『EVEN~君に贈る歌~』にて映画初出演。NHK BSプレミアム「花へんろ特別編『春子の人形』」では主演に抜てきされる。その後、映画や舞台、CMと活躍の場を広げる。2020年には『峠 最後のサムライ』に出演など、公開待機作が控えている。

ABOUT
ある日、廃病院に集まった12人の少年少女。彼らの目的は「集団安楽死」だった。彼らだけしか知らない計画のはずが、そこで13人目のまだ生あたたかい死体に遭遇する。あちこちに残る不自然な犯行の痕跡や次々と起こる奇妙な出来事に安楽死がはばまれてしまう。まさか、この12人の中に犯人が――死体の謎と犯人を巡り、疑心暗鬼の中、ウソと騙し合いが交錯し、彼らの死にたい理由が次々と明らかになっていく。
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開日:1月25日(金)より、廃病院集合
公式サイト:http://shinitai12.jp
(C) 2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会