「原作と同じで、常に先が気になる映画」/『凜-りん-』佐野勇斗&本郷奏多インタビュー

芥川賞作家の又吉直樹が、2007年に舞台用に書き下ろした初めての長編サスペンス『凜-りん-』を映画化した青春ミステリー。反響を呼んだ舞台「凜」の上映から10年の時を経て、佐野勇斗と本郷奏多のW主演で2月22日(金)から公開される。今回が初共演となる2人に、撮影中のエピソードなどについて話を聞いた。

取材・文=幸谷亮、写真=松林満美

―台本を読んだときの印象はどうでしたか?

佐野勇斗(以下、佐野) ミステリー作品がすごく好きということもあって、素直にストーリー自体がおもしろい作品だなって感じました。さすが又吉(直樹)さんだと思いました。

本郷奏多(以下、本郷) 台本を読みながら「どういうこと? この先どうなるの?」という展開が続いたので、最後までドキドキしながら読んじゃいました。なので、原作と同じで常に先が気になる映画になればいいなって。

―演じる上で心掛けた点はありますか

佐野 池田(克彦)監督が「素の勇斗のまま演じてくれればいいよ」と言ってくださったので、これといった役作りはしてないんです。でも、登場人物の中で一番親近感を覚えてもらえるような存在にはなりたいなって。というのも、ミステリアスで重い雰囲気の作品ですし、僕目線でストーリーが展開されていくことも多いので、見ている方の心の拠りどころになれればいいなって思ったんです。

本郷 天童は謎の多いキャラクターなので、それをより感じられるように怪しい雰囲気を持たせようと心掛けました。監督からも細かくいろいろな指示をいただけたので、それを信じて演じた感じです。

―それぞれ、役と共通する部分はありましたか?

佐野 耕太はとても仲間思いの高校生。自分で言うのもなんですが(笑)、仲間思いという点では似てると思いますね。今でも地元に帰れば学生時代の友達と集まりますし、唯一、心を許せるのがそいつらなんですよね。

本郷 独特な雰囲気過ぎて共通する部分はないんですが、「思い出はスマホじゃなくて心に残せよ」という天童のセリフには共感しましたね。食事のときとか、みんな食べる前にスマホを取り出して写真を撮るじゃないですか。ああいうのを見ると、「なんでみんな写真撮っちゃうんだろうな」って思っちゃうんです(笑)。

佐野 えっ、奏多くんの前では絶対に写真撮るのやめようっと(笑)。

本郷 みんなで記念に撮るならいいけど、食べ物や風景を撮っても「その写真、いつどのタイミングで見るんだろう?」って思っちゃうタイプなんですよね。僕も天童と同じで思い出は心に残しまくってます(笑)。

―撮影中に印象に残っているエピソードはありますか?

本郷 5人でリンゴをかじりながら好きな人を言い合うシーンがあって。山の中でたき火を囲んでるシーンなので、青春っぽくてとてもいいシーンなんですよ。それはそれで印象に残ってるんですが、ちょっとしたエピソードがあって(笑)。

佐野 僕もそのシーンはすごく思い出に残ってますね。

本郷 撮影前に助監督さんがリンゴを渡してくれたんですが、片手だけに手袋をされていて、手袋をしているほうの手で運んできてくれたのに、最後の最後、手袋をしていないほうの手で渡してくれたんですよ(笑)。それを見たときに、「なんのための手袋だよ(笑)」って思わず心の中でツッコんじゃいましたね。

佐野 撮影が早く終わったことがあって、櫻井(圭佑)くんと亀田(侑樹)くんと3人でご飯を食べに行ったんです。ちょうど僕の20歳の誕生日に近かったので、お祝いみたいな流れになってごちそうしてもらいました。撮影期間中はタイミングが合わなくてこういう機会があまりなかったので、いい思い出になりましたね。あとは、学校の中庭でお昼ご飯を食べたり、きれいな先生を見つけて叫んだり。学生気分を満喫できたので、高校生のころを思い出しましたね。

―作品中では“ザ・青春”といったシーンが多く見られました。それぞれどういう学生時代を過ごしてきましたか?

佐野 中学生までは毎回学級委員長をやるほどまじめだったんですが、高校生になってからは友達といるのが楽しすぎて。ちゃんと学校には行くんですよ。その上で、友達と授業中にふざける、みたいな。迷惑な生徒ですよね(笑)。

本郷 けっこう適当な高校生でした。あえて青春っぽいエピソードを挙げるなら、文化祭でバンドみたいなのをやったぐらいですかね。

佐野 めっちゃ青春じゃないですか。

本郷 高校生のときに『NANA2』って映画に出演したんですよ。ベースを弾いている役を演じたんですが、それを見てくれた友達から熱烈なオファーがあって。たぶんですが、ベースを弾けるメンバーが見つからなかったんだと思います。その熱烈なオファーに応える形でしょうがなくって感じで・・・。

佐野 かっこいい! 絶対に女子からキャーキャーじゃないですか。

本郷 いや~、そんなことはなかったかな。

―お二人の仲のいい雰囲気が伝わってきます。今作が初共演ということですが、第一印象と撮影後でイメージが変わったことはありますか?

本郷 佐野くんは第一印象も今も好青年ってイメージですね。いい子だし、礼儀正しいし、元気だし。意外な感じはまったくありませんでした。

佐野 ドラマや映画でミステリアスな役を演じたり、バラエティーでは独特な雰囲気を醸し出したりってイメージが強かったので、近寄りがたい感じの人なのかなって勝手に思ってました。でも、共演したことでそのイメージは覆りました。いい意味で、普通のお兄ちゃんなんだなって。

―完成した作品を見た感想を教えてください

佐野 最後まで誰が犯人なのか分からないので、純粋に「おもしろくて素敵な作品だな」って思いました。

本郷 初めて台本を読んだときのドキドキ感が表現されてるなって。とりわけ派手な事件が起きるわけではないですし、莫大な費用をかけて映像を作っているわけでもないんですが、出演している役者たちがみんな素敵なお芝居をしているので、しっかりと見せる映画になってると感じました。そういうのが好きな人には、特に気に入ってもらえると思います。

―最後に、作品を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします

佐野 人って誰しも悩みがあると思うんです。でも、それぞれの悩みを抱えた登場人物が、些細なことをきっかけに悩みを解決して元気になっていく。一人で悩みを抱えず、まわりの誰かに頼って生きてもいいんだってメッセージが盛り込まれている作品です。ミステリーが好きな方はもちろん、そうでない方も楽しめる作品になっていると思います。

本郷 個性あふれるさまざまな登場人物が出ているので、誰かしらに感情移入できるはず。そういった意味ではいろいろな方が楽しめる作品になっています。なんといっても“世界の又吉先生”の作品なので、ぜひ劇場で本格ミステリーを楽しんでいただけたら嬉しいです。

―ありがとうございました

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写真左・佐野勇斗(さの・はやと)
1998年3月23日生まれ、愛知県出身。
2015年に映画『くちびるに歌を』で俳優デビュー。2016年に放送されたドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」では、演技力の高さから“期待の若手俳優”として注目を浴びる。2018年には大ヒットを記録した映画『ちはやふる-結び-』や『羊と鋼の森』『青夏 きみに恋した30日』『3D彼女 リアルガール』『走れ!T校バスケット部』などに次々出演。ボーカルダンスユニット・M!LKとしても活動中。
ヘアメイク=中島愛貴(raftel)、スタイリスト=伊藤省吾(sitor)

写真右・本郷奏多(ほんごう・かなた)
1990年11月15日生まれ、宮城県出身。
2002年に映画『リターナ』でデビュー。2005年には映画『HINOKIO』で主人公の岩本サクラ役を熱演。その後も映画『テニスの王子様』『GOTH』で主演に抜てきされる。人気マンガを実写化した映画『GANTZ』『進撃の巨人』『鋼の錬金術師』では、主要なキャラクターを演じて注目を浴びる。映画はもちろん、テレビドラマや舞台などでも幅広く活躍。2019年4月19日に映画『キングダム』の公開が控える。
ヘアメイク=佐鳥麻子、スタイリスト=川地大介

ABOUT
100年に一度、村から子供が消える――。高校生の野田耕太(佐野勇斗)が住む小さな村には、ある伝説があった。くだらないことでふざけ合いながら過ごす青春の日々。耕太が通う高校に不思議な雰囲気の転校生・天童義男(本郷奏多)がやってくる。そんな天童ともすぐに溶け込み青春を謳歌していたある日、村の子供が1人、2人と消え、耕太の友達も姿を消す。そこで疑惑の目を向けられたのは、天童だった。
配給:KATSU-do
公開日:2月22日(金)より、全国ロードショー
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