
取材・文=赤山恭子、撮影=映美
―2年連続で「沖縄国際映画祭」にいらして、感慨のようなものはありますか?
2年連続で来られていることは、役者として、やっぱりすごくうれしいことです。昨年は『クジラの島の忘れもの』で来て、今年は『My Country My Home』と『レディ・プレイヤー1』という2作品で来られているので。ああ、でもレッドカーペットを歩けないことだけが心残りです。明日は別のお仕事で、すぐ移動しないといけないので・・・。
―前回は大雨でしたよね
前回は本当に大変でしたよね(笑)。僕らもですけど、集まってくれているお客さんも、取材陣やスタッフの皆さんも、とにかく濡れちゃって。今日は晴れていますし、舞台挨拶はできるので、よかったです。
―舞台挨拶をされる『My Country My Home』で演じた木村アウンは、森崎さんご自身のお話かと思えなくもない役どころです
実は、監督が当て書きをしてくださったんです。もちろん、全部が僕の話ではないけれども、僕が歩んできた人生の一部が反映されている部分が多いかなと思います。それに、最初「役名を森崎ウィンでいこう!」と言われたんですよ(笑)。それはちょっと違う方向にずれていくから、「名前は変えてください!」と、お願いしました(笑)
―特にご自身と重なる点でいうと、どこでしたか?
ミャンマーから出てきて頑張っていること、です。これって、日本ではあまり知られていないことだと思うんですよ。
―日本では、どちらかというとハリウッドのイメージが強いかもしれませんね
そう思います。だから、「ミャンマー人の血が入っているから、こういう役もできるんだね」みたいな感覚に捉えられているんじゃないかな、と思うんです。面白いことに、ミャンマーでは逆で、ハリウッドのイメージがあまりないんです。「日本で頑張っているミャンマー人の男の子」という感じに見られているんです。
―国によって、印象がまったく異なるのは興味深いです
違うことは、僕にとってはすごくプラスなことなんじゃないかな、と思っています。いろいろな顔があるということにつながるので。
―ちなみに、ハリウッドで「森崎ウィン」は、どんなイメージを持たれていますか?
いや、もう「ダイトウ」(※『レディ・プレイヤー1』で森崎が演じたキャラクター)です(笑)。「ダイトウ、ザ・すごい礼儀正しい日本人」と思われています(笑)。
―本作『My Country My Home』は日本語に訳すと「故郷」。森崎さんにとって「故郷」とは?
故郷という生まれ育った場所、自分のルーツというのは、ミャンマーに半分あって、日本にも半分あります。芸能というものに出会ったのは日本で、僕がこの世に生を授かったのはミャンマーですし・・・ということを考えると、故郷は、僕にとってはふたつあるということになるんじゃないかな、と思いますね。
ただ、僕、「いつか絶対ミャンマーに帰ろう」というのがまったくなくて、どんどんほかのところに行きたいな、と思うんです。いい意味で、どこにも属さない、それが森崎ウィン、みたいなところが出来上がっていったらいいなと、すごく思っていて。ちょくちょくマネージャーさんからも聞くんですけど、お仕事のお話をいただくときに、「ウィンさん、今どちらにいらっしゃるんですか?」みたいな(笑)。
―たしかに、謎めいていますね
現場でスタッフさんやキャストさんにお会いしても、「ウィン君ってミャンマーに住んでるの? 日本に住んでるの?」と聞かれ「いや、日本に住んでます!」と答える・・・みたいな。どこに行ってもレアキャラみたいなところがいいな、と思っていて。ただ、どっちつかずにはならないように、うまくコントロールして、いろいろなところに行けたらいいな、というのは考えています。
―「PRIZMAX」について。メンバーが増えて、表記も「PrizmaX」から「PRIZMAX」へと大文字に変わりました。今の森崎さんの心境は率直にいかがですか?
今回、新メンバーを迎えて、いろいろな意味で妥協せずに「攻める」ということで、表記も全部大文字になりました。結果を出すのが僕らの仕事なので、どれだけいいパフォーマンスをするかがすべて。気持ちが強ければ強いほど、お客さんには伝わると思うんです。そこからは、自分との闘いですし、チームとしても闘っていかなきゃいけないと、すごく思っています。
―7名になって、かなりの変化があったんでしょうか
ありますね。7人になってすごくよかったのは、新しく迎えた3人に絶対負けたくないので、その気持ちです。僕は一番でなければ気が済まないので、そういう意味では、新しい風というか、刺激を持ってきてくれてありがとう、と思っています。俺にないものを持っている、いい化学変化という意味で。おそらく客観的に見ると、今すごくいい状態だと思うんです。主観的に見るとつらいですけどね(笑)、余裕を持てないので。
―安泰ではいられない、という意味ですね
そうです。僕らはアジアツアーを目指しているので、今、その気持ちはひとつです。みんなでごはんに行って、話したりすることも多いですよ。求められているうちが華なので、どんどん頑張っていきたいと思います。
―ありがとうございました
2008年、ダンスボーカルユニット「PrizmaX(現・PRIZMAX)」に加入し歌手デビュー。音楽活動と並行してドラマや映画への出演を重ね、2014年、映画『シェリー』で映画初主演。2018年、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビュー。同年、『マイ・カントリー マイ・ホーム』『クジラの島の忘れもの』『母さんがどんなに僕を嫌いでも』などにも出演。6月7日(金)、アニメ声優初挑戦となるアニメーション映画『海獣の子供』が公開。秋には、映画『蜂蜜と遠雷』が公開予定。7人体制となって初めてのワンマンライブ「PRIZMAX Live Level 8 ~CIRCUS~」が7月6日(土)に東京・豊洲で行われる。