「単純に『おもしろかった』だけでは終わらない作品」/『空母いぶき』平埜生成インタビュー

かわぐちかいじ原作の人気コミックを、数々の記録的ヒットを打ち出す若松節朗監督がメガホンをとって実写化した映画『空母いぶき』が5月24日に公開する。日本の領土が占領の危機にさらされる――そんな未曾有の事態に立ち向かう「空母いぶき」の乗組員たちの描写を鮮明に描いたこの作品で、アルバトロス隊のパイロット役を演じたのが平埜生成だ。撮影に挑むにあたり準備したことや演じる上で心がけたこと、そして知られざる撮影の裏話などを聞いた。

取材・文=幸谷亮 写真=松林満美

―脚本を読んだときの感想から聞かせてください

純粋にとてもおもしろいと感じました。脚本を読みながら戦闘シーンやミサイルの飛んでいく様子が鮮明にイメージできて、あっという間に読み終えてしまいました。決して軽いノリのストーリーではないんですが、エンターテインメント性の高い作品だと思います。ちょうどドラマの撮影などが立て込んでいてスケジュール的な問題もあったんですが、脚本を読んですぐにマネージャーさんに「どうしても出演したいです!」と連絡しました。

―忙しい合間を縫っての撮影ということですが、どういう準備をして臨みましたか?

まずは、戦闘機関係の資料を読んだり映像を見たりしました。そもそも戦闘機や自衛隊について知らないことばかりだったので、戦闘機の歴史や、どういった心構えで、どういった気持ちで乗っているのか。そして、戦争という危機的状況の中、生きて帰ってくるためにはどうするべきかなどを知っておきたくて。撮影が近づいてからは、元航空自衛隊で、実際に戦闘機に乗っていた方から操縦桿の操作の仕方をレクチャーしていただきました。教えていただく前は機体が滑らかに旋回するイメージをしていましたが、実際はそうじゃなくて・・・。操縦桿を少し動かしただけで機体がガクンって大きく動くだけでなく、それに伴ってかなりの重力がかかって体にも大きな負担になることを知って。知らない世界だったので、とてもおもしろかったです。

―出演するにあたり、体作りもされたそうですね

スポーツジムでマシンを使ってトレーニングをしたり、腕立て伏せをしたりしましたね。当時は少し堕落した生活を送っていて(笑)、体重が増えていた時期だったんです。なので、きちんとトレーニングをしてから臨まないとついていけないなって。太ってるほうが筋肉になりやすいので、ポジティブな気持ちでトレーニングしていました。

―万全の状態で臨まれたんですね。実際、演じる上で気を付けたことは?

戦闘機に乗っている時に目の部分しか写らないシーンがあるんです。いつもなら全身を使って演じられますが、目だけで表現しないといけない。若松(節朗)監督からも「もっと強く」「弱く」などといった具体的な指示をいただいたんですが、今思えば、監督がおっしゃっていたのは目力についてだけではなかったんだなと。いつも以上に難しい反面、演技の幅を広げられるいいきっかけになりました。『空母いぶき』では、作中に目しか映らないシーンが結構出てくるので、その辺にも注目していただくと、より楽しんでいただけるかもしれませんね。

―テーマがテーマなだけに、緊迫した現場の状況がイメージできます

とにかく熱い現場でした。スタッフさんはもちろん、役者陣の熱量も本当にすごかったです。中には撮影中に怒号が飛ぶこともあったんですが、それはこの作品をより良くするためのものであって。ここまで熱い作品にはなかなか出会えないので、ありがたい経験をさせていただけたなって思いますね。

―完成した作品をご覧になって、印象に残ったシーンなどはありますか?

大迫力の戦闘シーンはもちろんなんですが、コンビニ店長役の中井貴一さんのシーンも個人的に好きですね。クリスマス時期の設定ということで、商品に同封するクリスマスカードをコンビニ店長の中井さんが書いているシーンがあるんです。戦闘シーンではないので劇中でもさらっと終わってしまうんですが、短い文章ながらも本質を捉えたすごく大切なメッセージが書かれていて。中井さんの細かい芝居も含め、あのシーンは見ていて印象に残りました。

―「空母いぶき」を見た人に、どのように感じてもらいたいですか?

中・高生くらいのお子さんがいらっしゃる方であれば、親子で劇場に足を運んでいただきたいです。間違いなくおもしろい作品に仕上がってるんですが、感想として単純に「おもしろかった」だけでは終わらない作品ですし、親御さんならお子さんがどういった感想を抱いたか気になるはず。『空母いぶき』を見たことで、お子さんと語り合えるようなきっかけになればいいなと思いますね。

―最後に、作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします

原作を読んでなくても楽しめる映画です。世代によって見た感想なども変わってくると思いますので、お一人はもちろん、ぜひご家族で劇場に足を運んでいただけるとうれしいです。

―ありがとうございました。

平埜生成(ひらの・きなり)
1993年2月17日生まれ、東京都出身。
ドラマ「セクシーボイスアンドロボ」で俳優デビュー。こまつ座「私はだれでしょう」や「誰もいない国」など、舞台を中心に活躍。大河ドラマ「おんな城主 直虎」や映画『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」など話題作に出演して注目を浴びる。5月24日(金)ドラマ「家政夫のミタゾノ」(第6話/テレビ朝日)、6月2日(日)WOWOW 連続ドラマW「悪党~加害者追跡調査~」第4話に出演。秋には、こまつ座の舞台「日の浦姫物語」の出演が控えている。

ヘアメイク=安海督曜(EFFECTOR)
スタイリスト=渡辺慎也(Koa Hole inc)、SHINYA WATANABE(コアホール)
衣装協力=ジャケット/KIIT(TEENY RANCH:電話03-6812-9341;28,000円)、Tシャツ/KIIT(TEENY RANCH:電話03-6812-9341;14,000円)、パンツ/KAZUYUKI KUMAGAI(アタッチメント代官山本店:電話03-3770-5090; 25,000円)、シューズ/Johnbull×OFFICINE CREATIVE(ジョンブルカスタマーセンター:電話050-3000-1038;58,000円)

ABOUT
20XX年12月23日未明、国籍不明の武装集団に我が国の領土が占領される。海上自衛隊はただちに訓練航海中の第5護衛隊群に出動を命ずる。その旗艦こそ、自衛隊初となる航空機搭載型護衛艦で、計画段階から“空母保有”への賛否が二分してきた「いぶき」だった。想定を超えた戦闘状態に突入すると、日本政府は戦後初の防衛出動を発令。戦闘がさらに拡大するものの、戦争に発展することだけは阻止しなければならない。緊迫した状況にさらされる中、彼らが下した決断とは―
配給:キノフィルムズ
公開日:5月24日(金)より、全国ロードショー
公式サイト:http://kuboibuki.jp
(C) かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ