
取材・文=幸谷亮 写真=松林満美
―演じるにあたり、どのように役作りをされましたか?
薪人は就職活動中の大学4年生で、自分と年齢がほぼ同じなんです。友達がまさに就活中なので、インターンとかがどんな感じなのか聞いて、演技に取り入れるようにしました。篝家のほかの3人はそれぞれバズってキャラ的にも特徴がありますが、薪人はバズりもしなければ普通の大学生。薪人のキャラを最大限に表現するためには、役に入り込めるかどうかが重要だなって。今回、共演した方たちのキャラの作り方なんかも間近で見ることができたので、すごい勉強になりましたね。
―薪人と共通する部分はありましたか?
薪人ほどツンツンはしてませんが、物静かな性格は似ていると思います。思っていることはあるけど口にはできない、みたいな。でも最近は、それだと損することもあると思っていて。言葉にしないと何を考えてるのか伝わらないので、思ったことはなるべく口にするようにしています。
―薪人は直接言わず、SNSを使って思いをぶちまけていました
自分もその時に思ったこと、感じたことをSNSの投稿画面に書き連ねるんです。でも、いろいろ考えた結果、保存だけして投稿はしないことがあって。これを投稿することで何か言われないかな、おもしろいのかなって不安になるんですよね。
―“SNSあるある”かもしれないですね
SNSでは良くも悪くも拡散され、社会問題にもなったりする。使い方一つで人生が変わってしまうなど、気軽にSNSを使いたくても使えなかったりするんですよね。そういったSNSの難しい部分なども、今作のテーマとして伝えられてると思います。
―身近なテーマなので、共感できることがたくさんありました
今の時代だからこそというか。スマホやSNSが普及してきたことで、家族の形も昔とは変わってきてると思うんですよね。家族間のコミュニケーションが減ったり、関係性が希薄になったり。お互い気にはなるけど、そこまで干渉しなかったり。そういう部分も表現していて、共感できる部分がたくさんある作品です。難しいことを考えずに見られると思います。
―印象に残っているシーンはありますか?
やっばり、なまはげチョップですかね。ほかにもダンスや歌などがあって、見ていて楽しくなるシーンが多いんですよ。TKO木下(隆行)さんと高岡(早紀)さんのインドミュージカル風のシーンなんかは、画面越しにニヤニヤしながら見ちゃいましたね。曲が頭から離れなくて、思わず口ずさんじゃいましたもん(笑)。まわりの人からも「あの曲、やばいね!」って評判です。自分が出ているところで言えば、面接のシーンは印象に残ってますね。家では物静かで常にパソコンと向き合ってる薪人が、面接だと周りが見えなくなって何を言ってるのか分からないんですよ。そういった二面性みたいな部分って誰にでもあるので、ここも共感できるポイントだと思います。
―今回がテレビドラマ初出演。舞台とはまた違った難しさがあったのでは?
全然違いました。舞台は会場の空気感を含め、お客さんと一緒に作品を作り上げていく。一方、ドラマなどの映像作品の場合、シーンごとにカメラを止めて撮影するので戸惑う部分もあって。「どうやって作っていこうかな」って毎回悩みながら演じていました。勉強になりましたし、成長につながったかなと思いますね。
―現場の雰囲気はいかがでしたか?
絶えず明るかったです。内田(理央)さんや木下さんなどのムードメーカーに囲まれ、最初は遠慮がちに縮こまってたんですが、撮影を重ねるうちにいろいろお話ししていただいて。プライベートではイジるタイプなんですが、弟役ということもあってイジっていただきました(笑)。
―今後、挑戦してみたい役はありますか?
ジャンルを問わず何でもやってみたいです。今回はまじめな大学生役でしたが、お笑い系の役もやりたいですし、時代劇なんかにも挑戦したい。もちろん俳優以外にもどんどんチャレンジしたいと思っています。あとは情報番組にも出てみたいですし、本当にいろいろなことに挑戦したいです。
―仕事への意欲が伝わってきますね。お休みの日はどのようにリフレッシュされてるんですか?
本を読んでることが多いです。特に絵本が好きなんですが、この歳になって読むと、懐かしさはもちろん、子供の頃とはまた違った読み方ができて。「こういうことだったんだ」みたいな発見がよくありますね。図書館に行って読むことが多いんですが、隣にいる小さい女の子が「お兄ちゃん、何してるの?」みたいな目で見てくるんですよ(笑)。なので、ちょっと申し訳ない気持ちになりながら読んでます。本当は自宅で過ごすのが好きなんですが、せっかくの休みなのにもったいないなって。なので最近は、映画館に行ったり舞台を観にいったり、外で過ごすことも多いですね。
―最後にメッセージをお願いします
途中から見ても楽しんでいただける作品です。家族が崩壊しても、切っても切れないのが家族というもの。家族にはそれぞれの形があり、共感していただける部分もたくさんあるはずです。放送終了後に『GYAO! 』で独占配信しているチェインストーリーも時間は6~7分と短いんですが、すごい作り込まれていておもしろいので、チェインストーリーも一緒に見ていただきたいですね。
―ありがとうございました
那智(なち)
1997年7月24日生まれ、京都府出身。
浅草軽演劇集団・ウズイチのメンバーとして活動中。舞台を中心に活躍。2019年には「向かいのバズる家族」で連続ドラマ初出演。趣味は絵本を読むこと、映画・舞台鑑賞。