「人を前向きにさせるというのも拝み屋の仕事」/「拝み屋怪談II」藤田富&北原里英インタビュー

東北で拝み屋を営む郷内心瞳が、実際に相談者から聞いたり自ら体験したりした怪異の数々をしたためた怪談実話集「拝み屋怪談」シリーズ。2018年の夏にはドラマ化され、好評を博した。その人気を受けて完成したシリーズの続編「拝み屋怪談II」が、BSテレ東などで配信・放送されている。主人公の郷内心瞳を演じるのは、前作に引き続き藤田富。リアルな熱演に注目が集まっている。シリーズ初参加となったのは、郷内の妻・郷内真弓役に抜擢された女優の北原里英。今回は、夫婦役を演じた2人にお互いの印象やそれぞれの心霊体験について語ってもらった。

取材・文=志村昌美 写真=三橋優美子

―まずは、シーズン2が決定したときのお気持ちから聞かせてください

藤田富(以下、藤田) 視聴者やスタッフのみなさんのおかげだと思ったので、前作を超えなければいけないという責任を感じました。撮影中も全員がそういう思いで作品を作っていたので、ぜひ期待してほしいです。郷内にも妻ができたり、同じ能力を持った霊能者も出てきたりと、ワクワクするような内容になっていると思います。

―北原さんは新シーズンからのご参加ですが、決まったときはいかがでしたか?

北原里英(以下、北原) 彼女ではなくて、妻の役というところに「自分も大人になったんだなぁ」と感じましたね(笑)。あとは、ちょうどこの撮影のときにほかの朗読劇で藤田さんと共演することになっていたので、同じ時期に違う役でご一緒するというのはおもしろそうだなと思って、すごく楽しみでした。

―ドラマ、舞台と共演してみて、お互いにどのような印象を持っていますか?

北原 舞台とは違ってドラマや映画の場合、出るシーンによってバラバラだったり、控え室が違ったりするので、撮影のときはそこまでお話できなかったんですけど、最近になってすごく話しやすい方だなと思うようになりました。あとは、同年代なのにすごくしっかりしているなと。舞台で脚本を書かれたりしているからというのもあるかもしれないですね。

藤田 僕はどちらかというと、第一印象で軽く見られがちなので、だからこそ実際に会ったときにいいなと思ってもらえることが大事だと思っています。なので、そんな風に言っていただいてすごく光栄ですし、内心は「ヨッシャー!」って感じです(笑)。

―では、北原さんの印象を教えてください

藤田 グループのリーダーをやっていたということもあって、すごく体育会系な方なのかなと思っていました。でも、意外とおっとりしていますよね。あとは、真面目でしっかりしているという印象です。

北原 根っこはわりと体育会系だと思うんですけど、自分ではそこまでしっかりしているとは思っていないですね。キャプテンをやっていましたが、もともとは責任のあるポジションとかは苦手なので・・・。

藤田 でも、その抜け感がステキだなと思います。あと、遠くない未来に結婚しそうな雰囲気がありますよね?

北原 本当ですか(笑)?

藤田 年齢というよりも、同年代でも近いうちに結婚しそうな人と全然そういうことがなさそうな人がいますけど、北原さんは仕事と家庭を両立して、ママになって・・・みたいなことを、いつしてもおかしくないようなしっかりさがあるんですよね。絶対にいい家庭を築くんだろうなと感じますし、それはこの作品でも出ています。

北原 結婚しそうなオーラがあるんでしょうか・・・(笑)

―そういう意味では、今回の妻役はまさにハマり役ですね

藤田 そうなんです。役作りなしですよ!

北原 でも、奥さんの役柄というのはいままであまりないことでしたし、2人は普通の夫婦という感じでもないので、個人的にはけっこう意識して取り組ませていただきました。拝み屋という特殊な職業の人と一緒になるだけでなく、自分にも霊感があるような役どころなので、キャピキャピした新婚の雰囲気は避けて、抑え目なアプローチでお芝居をさせていただきました。

―霊感のある役だったということですが、お二人は霊感がありますか?

北原 私はまったくないです。

藤田 僕も何回か見たことがあるくらいで、霊感があるというわけではないと思います。

―今回の撮影で心霊現象などは起きなかったのでしょうか?

藤田 シーズン1の撮影中は見たこともありましたが、今回は何も見なかったですね。ただ、突然目が痛くなり、3日間だけ腫れてしまったことはありました。いまだに原因不明です。あとは、学生時代のときから同じ女性の霊を何度か見たことがあるくらいだと思います。

北原 それって、郷内さんに憑りついている加奈江と同じじゃないですか・・・。

藤田 そうそう、加奈江みたいに付いてきちゃってるみたいな感じだったんですよ。でも、実は今年の1月頃に除霊してもらいました。

北原 それならもう安心ですね!

藤田 でも、おもしろいことに霊能者の方とホテルのロビーラウンジで会って、そのままそこで除霊してもらったんです(笑)。

北原 お寺とかじゃなくて? 全然イメージ湧かないけど、そんなことってあるんですか!?

藤田 お経みたいなものを唱えてもらってから、息を吸ったり吐いたりしているうちに、「もういなくなったから大丈夫」と言われました。

―ドラマとは逆に除霊される立場になってみて感じたこともあったのではないでしょうか

藤田 自分が除霊されるのは初めてだったのですが、終わったあとに何かすっきりしている感覚があったんですよ。そのときに、自分の思い込みで拝み屋に相談する人もいるかもしれないけど、話を聞いて除霊をすることで人の暗い気持ちをゼロにし、前向きにさせるというのも拝み屋の仕事なんだなと感じることができました。

―北原さんもホラー映画に出演された経験がありますが、怖い経験はなかったですか?

北原 いまはまったくないですが、AKB48にいた頃に、地方のホテルに泊まることが多かったので、そこでちょっと怖いことはありました。ロケで富士山に行ったとき、前日に泊まったホテルが6人部屋だったんですけど、樹海の近くにあったので、入った瞬間から嫌な雰囲気は感じていたんです。そのあと、電気をつけた瞬間に窓ガラスを見たら、四隅まで手形だらけだったんですよ・・・。でも、その日そこで寝るわけだから口に出してはいけないと思って、みんなには黙っていました。

藤田 でも、寝る場所は、さりげなく窓から遠いところにしたとか?

北原 たしかに、窓からは一番遠いところを選びましたね(笑)。でも、私の頭の上にも小さな窓があって、そこからコツコツと音がずっと聞こえていたので、結局は一睡もできなかったんですよ。そんな状態で富士山に登らないといけなかったので、かなりきつかったです。

―ほかのメンバーの方たちは大丈夫でしたか?

北原 実は、霊感のある子も眠れなかったようなので理由を聞いてみたら、私と何人かが寝ていたベッドルームから女の人の声が聞こえていたからって言われたんです・・・。あとから聞いたのでまだよかったですけどね。でも、私の隣に寝ていた全然霊感のなかった子がそのあと霊感を持って倒れちゃったりして、大変でした。

―まさに拝み屋の出番ですね。ちなみに、普段ホラー作品を観ることはありますか?

藤田 僕は驚かされるのと大きな音が苦手ですし、怖いのであまり観ないですね。ただ、もちろん「拝み屋怪談」は観ましたよ。

―ストーリーがわかっていても怖いものですか?

藤田 怖いですよ、普通に(笑)。

北原 あとからCGで入る部分に関しては、現場ではお化けの代わりにマネキンを相手にしていたりするので、結構わからないんですよね。

藤田 そうそう、逆におもしろいくらい。

北原 シュールだよね。

藤田 僕なんてお風呂のシーンで、美容師さんが練習で使うマネキンの首を自分で湯船のなかに沈めて、自分で頭を水面から出して、「わー!」って驚かないといけなくて(笑)。

北原 それは大変ですよね。

―北原さんはホラー作品をご覧になりますか?

北原 私はジャパニーズホラーが好きなんです。でも、ビビりなので、夏のイベント的な感じで友達とお泊り会をしながら暗くして観るとかがいいですね。一人だったら、昼間でも観られないと思います。

―お好きな作品はありますか?

北原 好きなのは、お化けより人間の怖さを感じるストーリーが多いオムニバス作品の「トリハダ」シリーズ。そのほかは、「世にも奇妙な物語」のアニメ版みたいな「週刊ストーリーランド」がオススメです。子供の頃から好きだったので、同年代でこれを見ていたという人と会うと、仲間意識が芽生えてすぐに仲良くなれるんですよ(笑)。

藤田 僕は『着信アリ』かな。

北原 私もホラー映画の中で一番好きです! ガラケーだった当時、着信音を同じにしていたくらい。怖すぎてすぐにやめましたけど・・・。でも、オーディションでも特技として真似していたほど大好きな作品です。

藤田 それはかなりすごいエピソードですね(笑)。

―最後にメッセージをお願いします

北原 これまでと一番の違いは、郷内さんに奥さんができたことですが、それによって彼の人間らしさも見えるので、視聴者の方がますます感情移入しやすい物語になっていると思います。ぜひ、そういった部分も楽しんでいただけたらうれしいです。

藤田 今回も豪華なゲストのみなさんに参加していただいていますが、ストーリー自体いままでとは異なるこだわりがあると感じています。前作を観ていただいた方も、シーズン2からという方も、みなさんが存分に楽しんでいただけると思うので、幅広い方々にご覧いただきたいです。

-ありがとうございました

藤田富(ふじた・とむ/写真左)
1992 年 4 月 14 日、大阪府出身。
雑誌「Samurai ELO」の専属モデルを経て、2015年から俳優の活動をスタート。翌年には特撮ドラマ「仮面ライダーアマゾンズ」で主演に抜擢され、話題となる。2019年5月に公演された舞台「俺はヤンキーになりたかった。」では脚本にも初挑戦し、新たな才能を発揮。6月には朗読劇「いつもポケットにショパン」で、北原里英と共演。映画待機作は、『地獄少女』(2019 年秋公開予定)、『喝 風太郎!!』(2019 年冬公開予定)など。

ヘアメイク=北野恵利、スタイリスト=椎名倉平

北原里英(きたはら・りえ/写真右)
1991年6月24日、愛知県出身。
約10年間所属したAKB48グループを昨年卒業し、本格的に女優としての活動を開始。主演を務めた2018年の映画『サニー/32』や舞台「新・幕末純情伝 FAKE NEWS」では、体当たりの演技を披露して注目を集める。今後は、ヒロインとして出演する舞台「HERO~2019夏~」が7月31日から上演、板尾創路と増本庄一郎の二人が企画・制作する舞台公演「THE BAMBI SHOW 3RD STAGE」が10月25日から上演。

ヘアメイク=熊谷美奈子、スタイリスト=徳永貴士

ABOUT
東北で拝み屋を営んでいる郷内心瞳(藤田富)は、依頼人から持ち込まれる奇怪な相談と日々向き合う生活を送っていた。献身的な妻・真弓(北原里英)と暮らしていた郷内だったが、そんな彼の前に少女・桐島加奈江が再び現れることに。さらに、霊能者の小橋美琴からも、新たな相談を持ち込まれてしまうのだった・・・。
配給:
公開日:dTVチャンネルにて毎週土曜23:30~、ひかりTVにて毎週土曜24:00~配信中/BSテレ東にて毎週月曜24:00~放送中
(C)2019「拝み屋怪談II」製作委員会