「まったく新しいタイプの青春ムービー」/『スタートアップ・ガールズ』上白石萌音× 山崎紘菜インタビュー

今までにないビジネスを立ち上げ、世の中を変える“スタートアップ”をテーマにした「スタートアップ・ガールズ」が9月6日(金)から公開される。大学生にしてIT×医療で起業を目指すひらめきの自由人・小松光を演じるのは、『君の名は。』でも話題になった上白石萌音。そして、大企業に勤め、起業家に投資をする安定志向のOL・南堀希を、2020年にハリウッドデビューを控える山崎紘菜が演じた。W主演を務めた2人に話を聞いた。

取材・文=幸谷亮、写真=坂本康太郎

―普段の上白石さんとのギャップもあってか、ピンクに染めた光の髪がとても印象的でした

上白石萌音(以下、上白石) 毎朝、鏡を見るたびにぎょっとしていました。「なんだこの髪は!?」って(笑)。私自身、すごく保守的なタイプなので、自分の意思では絶対にやらない髪色です。だからこそ、いい経験になりましたし、ピンクに染めたことで、光っていうキャラクターを演じる上でのヒントにもなりました。自分の中で吹っ切れるきっかけにもなったので、思い切って染めて良かったです。

―池田監督からの指示だったんですか?

上白石 そうですね。本当はエクステで済ませたり、ブルーとかほかの色に染めたりって案も出たんですが、誰も見たことがなく、「どうしてその髪にしたの?」って髪型にしようってことでピンクに行きつきました。

山崎紘菜(以下、山崎) 作品の途中でブルーとかも混じってるんだよね。

上白石 プレゼンや商談など気合いを入れたい時は、ブルーと白のエクステを付けるというのが光のポリシーなんです。

―そういった部分も本作の見どころの一つですね。普段の印象とは違いますが、とてもお似合いでした

上白石 でも、女子ウケはすごく悪くて・・・。その反面、男子や外国の方からは好評で、特に外国の方からは「So cool!」って言ってもらいました(笑)。

山崎 撮影中も目立ちまくりで(笑)。ピンクの髪が常に視界に入っていたので、萌音が常にどこにいるのか無意識に把握できるくらい目立ってましたね。でも、そんな萌音がぴょんぴょんしている姿がかわいくて、とても愛おしかったです。

―逆に、集中したい時なんかは気が散ったり大変だったのでは?

上白石 正直に言っていいよ(笑)

山崎 それは正直ありましたね(笑)。光に思いをぶつけるシーンがあるんですが、そういった集中したい時なんかは視線を外すようにしていました。というのも、光も萌音ちゃんも人を惹きつける力があるので、どうしても引っ張られてしまうんですよね。普段、希は堅実で思っていることを溜め込んでしまうタイプ。なので、思いを吐露するシーンでは集中したくて、視界に入れないようにしていました(笑)。

上白石 皆さんには申し訳ないですが、私は最高に居心地が良かったです(笑)。私自身、光のキャラクターに常にぎょっとさせられてたんですが、鏡さえ見なければ大丈夫なので極力見ないようにしていました。むしろ光でいる以上、何をやっても怒られないんですよ。どんな動きをしても、どんなに邪魔をしても「光だから」っていう理由でオッケーを出していただけるんです。

―そういった意味では、思い切って演じられたようですね

上白石 そうですね。撮影する部屋に入ったら小物などを見渡して、「あれで遊べる、あれも遊べる」って。冗談混じりでテストの時にやっても、監督は「それでいこう」ってオッケーを出してくださるんです。光は身長が低いことをコンプレックスに感じているんですが、起業家の世界だとそれが舐められる要因にもなるので、自分を大きく見せたいという思いもある。なので、階段や駐車場の車止めなどといった段差には必ず登るようにしたり。そういうのもあって、とにかくうるさく、そして無駄を多く演じようと思っていたので、撮影中、体力はものすごく使いましたね。

―自由奔放な光に対し、安定志向のOLである希を演じてみて山崎さんはいかがでしたか?

山崎 希は「普通」や「平凡」というのが代名詞になるキャラクターなんですが、特徴のないキャラクターを演じることが一番難しいと思っていて。その一方で、“普通の人”ってこの世に存在しないとも思っています。みんな生まれた時間や場所が違えば、育ってきた環境も違うはず。何かしら個性もあるので、「その中でも、希の個性はなんだろう?」と考えながら演じていました。自分自身、特に才能があって今のお仕事をさせていただいているわけではなくて、そういう意味では希との共通点もたくさんあったので、自分と照らし合わせながら希の個性を探していく作業をしていました。

―希と山崎さんには、どういった共通点がありましたか?

山崎 強烈な才能を目にした時に、眩しく思ったり憧れを持ったりするところは似てますね。あと、希は言われたことに対して全力で取り組むタイプで、私自身、期待を裏切らないためにも100パーセントの力でやりたいという思いがあるので、そういう責任感のあるところなんかは共通する部分だと感じました。

上白石 私から見てもその通りですね。プロ意識っていうか、言われたことをすべて理解し、最大限に発揮しようとしている姿は、現場で間近で見ていて感じました。例えば、まわりからの指示に対して、たとえそれが自分で納得いっていなくても、一度「分かりました」と飲み込んで、それを自分なりに理解し、解釈してアウトプットするという作業は、言うのは簡単でも実践するのはそう簡単なことではありませんからね。本当、すごいなって。尊敬しています。

山崎 今後は、自分から積極的に提案できるようにならないといけないし、今後の課題だと感じています。

―最後に、作品を楽しみにしている人にメッセージをお願いします

上白石 この作品に出演する以前は、起業はひと握りの天才にしかできないことだと思っていました。たしかに光はそのひと握りに入るかもしれませんが、起業家の発想の源っていうのは、意外と日常の小さな出来事にあるんだっていうことに気付かされました。だからこそ、誰にでも起業家になるチャンスは開かれているので、起業というものを身近に感じていただけたら、この映画の本望だと思います。とはいえ、それを押し付けがましく伝える作品ではないので、まっさらな状態で、アトラクションに乗るみたいな気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです。

山崎 テーマは「起業」ですが、光と希が夢中になっている姿や真剣にぶつかり合っている姿もあって、まったく新しいタイプの青春ムービーだと感じました。光が操縦するめちゃくちゃな船の、ちょっとした船酔いみたいなものも含めて楽しんでほしいですね。それくらい、いろんな人の思考や考え方が揺さぶれる作品になってたら嬉しいです。

―ありがとうございました

上白石萌音(かみしらいし・もね/写真左)
1998年1月27日生まれ。鹿児島県出身。
2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞してデビュー。2014年には『舞妓はレディ』にて映画初主演を飾ると、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。そして、2016年には『君の名は。』でヒロインの宮水三葉の声を演じて話題を呼ぶ。また、同年には歌手デビューも飾るなど、活躍の場を広げる。今後は舞台『組曲虐殺』の出演も控えている。
スタイリスト=嶋岡隆(OfiiceShimarl)、ヘアメイク=冨永朋子(アルール)

山崎紘菜(やまざき・ひろな/写真右)
1994年4月25日生まれ。千葉県出身。
2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞してデビューすると、2012年に映画『僕等がいた』でスクリーンデビューを飾る。2014年には映画『神さまの言うとおり』で初ヒロインを務める。2019年にはフジテレビの連続ドラマ「平成物語~なんでもないけれど、かけがえのない瞬間~」でドラマ初主演。俳優として活躍する傍ら、国内のファッションイベントなどにモデルとしても出演。現在はラグビーワールドカップ2019の開催都市特別サポーターやお天気キャスターなど、幅広く活動。2020年には映画『MONSTER HUNTER』でハリウッドデビューを予定している。
スタイリスト=三浦真紀子、ヘアメイク=鎌田順子(JUNO)

ABOUT
自由奔放かつ天才的なひらめきで、大学生でありながら起業家として活動する光(上白石萌音)。一方、「無難 is BEST」な安定志向で、大企業に勤める究極の凡人OL・希(山崎紘菜)。正反対の2人は、光の事業をサポートする水木(山本耕史)の計らいで、小児医療遠隔操作で診察をする新プロジェクトのビジネスパートナーになる。クセが強くて非常識な光の言動に振り回される希は、光を信じきることができず、仕事にも行き詰まってしまう。
配給:プレシディオ
公開日:9月6日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
公式サイト:http://startup-girls.jp
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