「ファンタジー映画として見てもらえれば」/『下衆の愛』渋川清彦&岡野真也インタビュー

『グレイトフルデッド』などの内田英治監督がメガホンを取った異色のヒューマンドラマ「下衆の愛」が4月2日に公開される。“下衆”な自主映画監督 とひとクセある登場人物たちの“最後の悪あがき”を、笑いを交えて描いた。本作で、夢をかなえようと奔走する主人公の映画監督テツオ役を渋川清彦が、才能 あふれる新人女優のミナミ役を岡野真也が演じている。

―それぞれが演じたキャラクターの“魅力”を教えてください

渋川清彦(以下、渋川) 魅力といっても、まさに“下衆”な人物ですからね(笑)。でも、テツオはひとつ、本気で好きなことがあって、そのためならなんでもやるというところがカッコいいんじゃないですかね。

20160401-01_sub02岡 野真也(以下、岡野) ミナミは女優になりたくて上京し、いろんな経験をしていくのですが、そこで「私は女優だ!」って腹をくくるところが魅力ですね。 「私は女優になる」という台詞があるんですが、役者をやっていれば誰もが思っていることを、台詞で言えるって、ある意味、怖いなと思いました。でもそれが 役に対しての腹のくくり方だったので、もしそれが現実世界であっても、その時の気持ちがあればおかしくないと思います。

―撮影現場はどのような雰囲気でしたか?

岡野 前半はおとなしかったミナミが、後半にはインパクトのあるシーンばかりだったので、そもそも現場の空気を感じている余裕はありませんでした(笑)。撮影は1週間くらいで、わりとぎゅっと詰めて撮ったのですが、シリアスではなかったしピリピリもしてなかったですね。

―完成した映画をご覧になって、印象に残ったシーンはどこでしょうか?

渋川 個人的に嬉しかったのはタイトルバックにかっこいい音楽と煙草を吸っている姿が流れたことですね。いわゆる「映画!」という感じでとてもかっこよかったです。

―真に迫ったシーンが多い印象でした

渋川 響子に叩かれるシーンは本当に痛かった(笑)。腰が入っていたからすごく重たいんですよ。(効果)音はほぼ生音です。

岡野 私も叩いたり、乱暴にされるシーンがあって、もともと台本にはなかったシーンだったんですが、監督にその場でやってって言われてがんばりました。その分、やっぱり生々しさはありますよね。

20160401-01_sub03―台本にない演出も多かったのですか?

渋川 アクションに関してはその時その時に話して決めましたが、割とぎゅっと書かれていましたね。

岡野 撮影する前に監督に、目の前で転がって芝居している役者を撮りたいと言われていたので、いい意味で意識をしているものになっているんじゃないかなと思いますね。

―終わり方も、非常にインパクトがあるというか、気になる感じになっていますね

渋川 あれはやっぱり監督のセンスですよね。最初に書いてった台本の内容とは変えたんですよ。監督が「やっぱり(この終わり方じゃ)嫌だ」ということになって(笑)。僕はけっこう好きですね。

―最後にメッセージをお願いします

渋川 キャラクターがいっぱいて、それぞれが個性が強いので、そこを楽しんでほしいですね。

岡野 タイトルで敬遠する方がいるかもしれませんが、内容的には面白いですし、少年漫画の原作を見に行く軽い気持ちで見にきてください。

渋川 言っておきますけど、ぼく自身はテツオみたいなことしませんよ(笑)。「映画の業界ってこんな感じなんだ」って鵜呑みにされても困るので、この映画はファンタジー映画として見てもらえればと思います(笑)。

―ありがとうございました

渋川清彦
1974年、群馬県渋川市出身。
男性ファッション誌でモデルとして活躍。1998年に映画『ポルノスター』で俳優デビュー。以降、『青い春』『ナインソウルズ』『フィッシュストーリー』など数多くの映画に出演。マルチな演技に評価が高く、2016年は『蜜のあわれ』『テラフォーマーズ』が公開。

岡野真也
1993年、栃木県出身。
中学1年生のときに女優の道を歩み始め、テレビ、映画、舞台、CMなどに出演。主な出演作に、『飛べないコトリとメリーゴーランド』『アナザー』『俺俺』『図書館戦争-THE LAST MISSION-』などがある。

ABOUT
映画監督・テツオは映画祭での受賞経験が唯一の自慢のしがない自主映画監督。彼は大した仕事もせずに女優を自宅に連れ込んでは、快楽にふけるだらしない日々を送っていた。ある日、才気あふれる新人女優のミナミ(岡野真也)と出会う。それを機に創作意欲が湧き出したテツオは、プロデューサー貴田(でんでん)やパッとしない女優の響子、ハメ撮りで稼ぐ助監督マモルらと共に新作制作に動き出すが…。
配給:Thirdwindowfilms
公式サイト:http://www.gesunoai.com/
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