「全部つながってる!って思わず鳥肌が立ちました」/『アイネクライネナハトムジーク 』八木優希インタビュー

宮城県仙台市在住の作家・伊坂幸太郎の恋愛小説集を、『愛がなんだ』などの今泉力哉監督が映画化した『アイネクライネナハトムジーク』が上映中。オール仙台・宮城ロケにこだわって撮影された本作は、主人公の会社員・佐藤(三浦春馬)を中心に、周囲のさまざまな登場人物を巻き込み、10年という長い年月をかけて恋と出会いの奇跡の連鎖を呼び起こすラブストーリーだ。本作で女子高生の亜美子役を演じるのは、連続テレビ小説「ひよっこ」などで話題を呼んだ八木優希。9月20日の公開から1カ月が経過したいま、周囲からの反響や撮影秘話などを聞いた。

取材・文=幸谷亮 写真=木下誠

―公開からおよそ1カ月が過ぎました。まずは、周囲の反響から教えてください

「おもしろかった」というのはもちろんですが、「こういう恋愛映画、久しぶりに見た!」と言っていただくことが多いです。よくある恋愛映画って、男女2人が結ばれていくストーリーを題材にした作品が多いと思うんですけど、今回の作品では、いろいろな人がさまざまな場所で出会い、結ばれていく様子が描かれているんです。普通の恋愛映画にはない“新鮮さ”を感じられる作品なんだなって改めて感じています。

―最初に脚本を読んだ時の感想は?

いい意味で“普通”で、でもそれがすごくおもしろいなって思いました。一方で、“普通”って一番難しいとも感じていて。劇中に何か1つでも中途半端なシーンがあると、一気に普通じゃなくなって物語全体の雰囲気が崩れてしまう。私が演じた亜美子とはほぼ同い年だったこともあって、役作りというよりは「普段の自分でやってみよう」と思って挑みました。

―普通を演じるという意味では難しい部分もあったのでは?

本間紗季役の多部(未華子)さんとバスで一緒になるシーンがあるんです。多部さんがものすごくナチュラルなお芝居をされる方で、私もできるだけいつも通りの自分で演じようと思ってたんですが、それでもやっぱり演技っぽくなることがあって。今泉(力哉)監督から「もっと自然な感じで」とアドバイスをいただきました。

―多部さんとは、今作で4回目の共演でしたね

5年ぶりの共演だったんですが、覚えていただいていて、撮影前にご挨拶をしに行った時に「変わったね!」って言っていただきました。前回共演させていただいたのは小学6年生の時で、今作は高校2年生だったので、成長したんだなって思いました(笑)

―亜美子と共通する部分はありましたか?

性格は似ているかもしれないです。私が演じた亜美子は、すごく素直で、思ったことを口にしてしまう女子高生なんですが、私も思わず「言っちゃった・・・」って後から反省することが多いんですよね(笑)

―具体的にそんなエピソードはありましたか?

今作の撮影中に見た映画があって、それがすごくおもしろかったんです。「この感動を誰かに伝えたい!」って思って、撮影の日、共演している萩原利久くんに「あの映画、知ってる? すごいおもしろかったから見てみてね」って話をしたんです。でも、撮影が終わって東京に帰ってきてから気付いたんですが、その作品に萩原くんも出演してたんです(笑)

―そのとき、萩原さんはどのような反応だったんですか?

「あ、ありがとう。見てみるね」って感じでした。本当に申し訳ないことをしたのに、スルーしてくれて、とても優しい方なんだなって。ちゃんと調べずに言っちゃうのは直さないとなって思います。

―萩原さんや恒松(祐里)さんなど、同年代の俳優さんたちとのシーンが多く、和気あいあいとした現場が想像できます

休憩時間も含めて3人でずっとおしゃべりしてました。学校のシーンでは、教室にあった黒板に「アイネクライネナハトムジーク 観てね」って書いて写真を撮って遊んだり。あとは、合唱の練習シーンで歌う「わさび田」がすごく難しくて、3人で「ここの音程が難しいね」って言いながら練習したり。普段、学校にいるような感じで、終始わいわいしていました。

―特に印象に残っているシーンはありますか?

私が出ているところだと、最後のボクシングのシーンは印象的ですね。その日は、観客役の千人規模のエキストラさんがいらっしゃったこともあって、実際のボクシングの試合を観戦しているような迫力でした。現場にいる全員が一体となっていて、あんなに熱いシーンは初めてで本当に感動しました。

―完成した作品を改めてご覧になっていかがでしたか?

物語の核となるような大きな事件は起こらないんですが、「盛り上がるところはきちんと盛り上がっていて、しっかりと見せる映画になってるんだ」って感動しました。特に、三浦(春馬)さんがバスを追いかけるシーンで、走ってる時に小枝を踏むカットがあるんです。そのシーンを見て「ここで全部つながってる!」って思わず鳥肌が立っちゃいましたね。脚本を読んだときとはまた違ったおもしろさがある作品だなって思いながら見ていました。

―伏線がどんどん回収されていくさまも見応えがありますね

そのほかにも、最初に誰かが言っていたセリフをあとで別の人が言ったり。自然な形で繋がっているので、そういうのを探しながら見ても絶対におもしろいと思います。脚本を読んで内容もすべて知った上で見てもこれだけ感動したので、初めてご覧になる方はもっと感動していただけると思います。

―最後に、これから作品をご覧になるファンに向けてメッセージをお願いします

作品の登場人物の隣に自分がいるような感じで、すごくナチュラルな感じで見られる映画に仕上がっています。また、大人から子供まで共通して楽しめる内容ですので、ぜひ劇場に足を運んでいただいて、多くの方に楽しんでいただきたいと思います。

―ありがとうございました

八木優希(やぎ・ゆうき)
2000年10月16日生まれ。東京都出身。
2001年に「仮面ライダーアギト」に出演。生後4カ月にして芸能界デビューを果たす。その後も数々の映画、ドラマ、CMなどに出演。2008年には、出演したドラら「薔薇のない花屋」が第56回ドラマアカデミー賞で特別賞を受賞。2017年には連続テレビ小説「ひよっこ」で、ヒロインのみね子(有村架純)の先輩工員・優子役を演じて話題を呼んだ。

ABOUT
仙台駅のペデストリアンデッキは、大型ビジョンに映る日本人初の世界ヘビー級王座をかけたタイトルマッチに人々が沸いていた。そんな中、街頭アンケートに立つ会社員・佐藤(三浦春馬)の耳に、ギターの弾き語りが響く。同じく歌に聴き入るリクルートスーツ姿の本間紗季(多部未華子)と目が合い、声をかけると快くアンケートに応えてくれた。ふたりの小さな出会いは上司の藤間(原田泰造)や親友の一真(矢本悠馬)、一真の娘の同級生・和人(萩原利久)らを巻き込み、10年の時をかけ、愛と勇気と幸福感に満ちた奇跡を呼び起こす。
配給:ギャガ
公開日:絶賛公開中
(C) 2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会