
写真=松林満美
―本作は、兼田さんから声をかける形で制作されたんですよね
「MOOSIC LAB」のプロデューサー・直井(卓俊)さんとご縁があって、「監督とスタッフとキャストを集めることができたら一緒にやろう」と無茶ぶりされて(笑)。私も「MOOSIC LAB」にすごく興味があって、なんとしても作品を作りたいと思って動き出したのが始まりでした。素敵なスタッフの方々と巡り合えてできた奇跡的な作品です。
―出来上がった作品を見ていかがでしたか?
生きていく中で、疑問に思うことや答えにたどり着かないもの、これってどうなんだろうってフワフワしたものっていろいろあると思うんですが、それらをリアルに投影することができたと思います。でも、フワフワしたままだと形にならないから、それをロジカルにストーリーに落とし込んでいったんですけど、それが見る方に伝わるのかというのは不安でした。逆に、「そういう解釈になるんだ!」という感想を寄せてくださる方もいて、今は、私たちが作ったものに対してどう感じていただいたのかを伺うのが楽しみになっています。
―役作りはどうされたんですか?
監督からは「あまり役を作ってこないでください」と言われていました。出演者さんの今その時を記録するようなものにしたい、という意図があって。台本の読み込みは余念なくやっていたんですが、現場ですり合わせをして、意見の食い違いもあったりもして、悩んだりもしたのですが、私自身を役に投影していったというのが近いかもしれません。
―歌が印象的な作品ですね
劇中に流れる全20曲ほどの音楽を一度に再生すると、主題歌になるというギミックが隠されています。ちゃんと聞くとどの曲も一緒なんです。鼻歌も含めて。そこに注目して見ていただけるとまた面白いかもしれません。
―お気に入りのシーンはどこですか?
会社の先輩の小山さん(小川ゲン)と歩道橋でケンカしたあと、踊りながら実家に帰るシーンですね。あのシーンは、五反田、大崎、日比谷、新橋、東京、西台、平和島…いろいろな場所を歩いて撮影したものをつなげているんですよ。合計で5日間以上かかってます。足が痛くてしょうがなかったです(笑)。
―撮影中に印象的だったエピソードを教えてください
監督から「ぼくが兼田さんに伝えたいことを脚本に書いてきたから、読んで」と言って渡された脚本を読んだら、冒頭に「相変わらず、かわいくないねぇ」って書いてあって。「なるほどな」と。これは地獄の撮影が始まるぞ、と覚悟しました(笑)。それくらい仲がいいんです。
―初主演の作品となりましたが、特別な思いはありましたか?
やはり特別な思いはありました。これまでの作品で、主演の方に優しくしていただいて、引っ張っていただいた印象があるので、今回は私が中心になるにあたって、共演していただける方がどうすれば自分の立ち位置や居心地のいい場所を見つけられるんだろう、とか、どうすれば喜んでいただけるんだろうというのを必死に考えました。はたしてちゃんとできたのかは疑問ですが…(笑)。出演シーンも多くて少しいっぱいいっぱいになりましたが、そんな時、改めて役者としてあこがれていた主演という立場で芝居ができる喜びをかみしめて、ゆかりという一人の女性と向き合って作品の中で生きることに没頭しました。
―これから挑戦していきたいことはなんですか?
芝居が好きなので、面白い監督さんやプロデューサーさんに出会って、一本でも多く、アイデアに溢れた現場に行きたいです。現場にはハッとするような面白いアイデアとの出会いがたくさんあるからです。舞台も映画も、どんどん挑戦して、パワフルな芝居ができる女優になりたいです。
―最後にメッセージをお願いします
私たちが伝えたいことを全力で詰め込みました。ちょっと詰め込み過ぎたかもしれませんが(笑)。その中で一つでも「いいな」と思ってくれることがあって、見た後、自分の心の中で大切に育てていただける作品になっていると思います。ぜひ劇場でご覧ください。
―ありがとうございました
兼田いぶき(かねだ・いぶき)
1993年8月19日、神奈川県出身。
ハリウッド映画『JUKAI -樹海-(THE FOREST/原題)』『ブルーハーツが聴こえる』などの映画や、スペシャルドラマ「恋するイヴ」や「磁石男」、「信長協奏曲ドラマSP(前編・後編)」などのTVドラマに出演。現在は「ドラゴンクエストX第5期初心者大使」として活動もしている。ドラゴンクエスト夏祭り2017にて舞台「冒険者たちのホテル」に出演。