「当時の熱量を出すためにセリフ以外の部分も大事にしたかった」/『沈まぬ太陽』渡辺大インタビュー

長くテレビドラマ化が不可能とされてきた山崎豊子の傑作小説「沈まぬ太陽」が、開局25周年を迎えるWOWOWによってドラマ化された。連続ドラマWでは過去最長となる全20話で構成され、アフリカや中東での海外ロケなど、かつてない規模で製作された本作。今回は、本作で労働組合のために戦う熱い男・八木役を演じる渡辺大に今作への思いを聞いた。

―「八木」を演じる上で注意した点はなんでしょうか?

ドラマの背景が、いわゆる安保闘争や学生運動の時代だったため、現代の若者世代と当時の若者世代とではもともとの考え方や“熱量”のようなものが違うと感じたんです。今の若い世代はスマートでクール、それに対して当時は粗削りでも熱かった。当時の熱量を出すため、ほかの出演陣と話し合いながら、セリフがないところに動きを足したり、全体のモチベーションを高めながらやっていきましたね。

―セリフ以外で熱量を出すために心掛けたところはどこでしょうか?

どちらかというと、しゃべっているところよりは、表情という部分を大事にしていかなければいけない。みんなそういう意識をもって演じていました。会社や仕事に対する考え方も今とは違うと思うし、主人公の恩地さん(上川隆也)が置かれた立場や葛藤する思いを際立たせるために、まわりの僕たちはとにかくひたむきに、内側から熱くあるべきだ、という話をしたんです。

―現場の雰囲気はいかがでしたでしょうか

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監督には勢いが大事と言われていましたね。最初からどんどんいかないと20話もたないから、ガンガンいってくださいと(笑)。僕たちも「それじゃあガンガンいきましょう」といって演じましたね。監督もセリフのない部分にも気を配ってくださって、だからこそどこも気を抜けないというのがあって、そういうところが熱量を伝える上で活きたんじゃないかなと思います。

―原作「沈まぬ太陽」といえば、父・渡辺謙さん主演で映画化されました。出演が決まってお話はされましたか?

定期的に連絡を取り合っているので、その流れで話しました。「そうか、がんばれよ」という感じで。映画が3時間と長く、今回のドラマも20話なので、「あの作品はボリュームがあるよ」なんて言っていましたね(笑)。役が違いますから、この作品についてのアドバイスというより、役者としてアドバイスをもらいました。

―今後、ご自身が役者として気を付けていきたいことはなんでしょうか?

30歳も過ぎたので、大人の葛藤の部分などを演じられるようになりたいですね。自分が大人になっていくうえで実際にいろいろなものを背負っていくと思うのですが、そのような部分を自分なりに上手く表現できる歳になってきたのではないかなと思っています。30代後半に向けて責任を背負って、果たしていくことで、自分の演技を見ていただく方に「あ、こいつはちゃんと背負っているんだな」と感じていただけるような演技ができ、また、そういう人生を生きなければいけないな、と思います。

―今回の現場についても、まさにその通りですね

みなさんそれぞれ情熱を持って集まってきている俳優さんばかりなので、いかに燃やし合えるか、ということだったと思います。逆に、そういうものを持っていないと難しい現場だったんじゃないかなとも思います。室内でのシーンがほとんどだったのですが、外でシュプレヒコールを上げるシーンを監督が長めに追加してくださって、まさに我々の熱、思いというのを監督が感じ取ってくださったんじゃないかなと思いました。

―最後にメッセージをお願いします

全20話でキャストも総勢300名以上とすごく豪華で、一話一話に無駄がなくて目が離せない作品です。現代と当時とで考え方が違うかもしれないですが、まったく響かないわけでは決してなく、むしろいろいろな立場の方に見ていただくことで感じられる部分がたくさんあると思います。作中で生きている人たちの表情がとても生き生きしていますので、そういったところに注目して、最後までお付き合いしていただければと思います。

―ありがとうございました。

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国民航空の労働組合委員長・恩地元(上川隆也)と、その同志で副委員長の行天四郎(渡部篤郎)は、死亡事故が起きるほど劣悪な労働環境の改善を目指し経営陣と激しく対立する。空の安全を第一に考え、時に愚直に行動する恩地は経営幹部に疎まれ、海外の僻地へ左遷されてしまう。一方、現実主義の行天は恩地と決別し、幹部に取り入りながらも自らの理想の会社像を追い求め出世していく。やがて、空の安全を軽視した国民航空は大型旅客機の墜落事故という未曽有の惨劇を引き起こす―。
公開日:5月8日(日)スタート 毎週日曜よる10:00(全20話・第1話無料放送)
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