
取材・文=志村昌美、写真=松林満美
―文学的にも映画的にもファンの多い江戸川乱歩作品。オファーがあったときはどう思いましたか?
みなさんが知っている歴史のある作品に出演できるということだけでなく、「少年探偵団」という人気シリーズのなかで小林芳雄を演じられることは、ひとりの役者としてもすごくうれしかったです。もちろんプレッシャーもありましたが、「B2takes!」のみんなもいたので、ひとりで抱えこまずにやっていこうと思いました。
―気心知れているメンバーと一緒ということで、楽しむ余裕も生まれましたか?
そうですね。みんなといるときは楽しかったですが、仕事になった瞬間にはスイッチを切り替えて一生懸命に取り組んでいたので、とてもいい雰囲気で撮影ができたと思います。
―映画では初主演となりますが、これまでとは違う不安もあったのではないですか?
それもありましたね。というのも、舞台では何度か主演をさせていただきましたが、映画では初めてだったので、「自分の演技力がどこまで通用するのか」ということ。あとは、「映像向けの演技ができるのか」という心配もありました。でも、ありがたいことに監督はじめ、スタッフのみなさんがとてもやさしくて、真摯に向き合ってくださったので、お芝居もやりやすかったです。
―舞台と映画の現場で違いを感じたのはどんなところですか?
まずはお客さんがいないというのが一番ですが、稽古ではなく、本番までに自分で役を作っていかないといけないのも大きかったですね。自分の役作りが正解なのかは現場に立って演技してみないとわからなかったので、特にその2つが違うなと感じました。
―そういう意味では、舞台とは違う緊張感もあったのではないでしょうか?
実は演技をしている最中、久々に手が震えてしまったこともありました。僕にとってはそれだけ慣れない現場だったんですけど、自分なりに必死には向き合えたと思っています。
―出来上がった作品を観たときはどう思いましたか?
やっぱり“胸熱”というか、入り込めるシーンがたくさんあったので、みんなでがんばって作り上げてよかったなとは思いました。
―小林とタッグを組む井上を演じた寺坂頼我さんとW主演ということで、お2人のシーンが多かったと思いますが、現場での様子を教えてください
頼我くんとは待機時間でも仲良くさせてもらっていました。僕は結構ボケたがりなんですけど、頼我くんは見捨てることなく、僕がボケると全部にツッ込んでくれていたんです(笑)。だから先輩の僕の方が甘えていた感じですね。現場も僕が引っ張るというよりも、みんなで一緒に、という感じでした。
―みなさんで和気あいあいと盛り上げていく感じの現場だったんですね
そうですね。ただ、頼我くんと明智小五郎役の小木(茂光)さん、ヒロインの前田(希美)さんの4人で事務所にいるシーンのときは、推理を説明するところで、僕の超絶長ゼリフがあって、監督がワンカットで撮りたいということだったので、その練習をずっとしていました。だから、そのときだけは僕に余裕がなくて、あんまり和気あいあいとはしてなかったかもしれないですね(笑)。
―俳優として先輩の小木さんとご一緒されてみて、学んだところを教えてください
小木さんは僕たちに合わせてくれたという印象がありましたが、小木さんの演技は普段話しているようななめらかな感じだったので、「やっぱり映像の演技はこういうものなんだな」というのを感じながら、いろんなことを学ばせていただきました。
―ご自身が小林を演じる上でこだわったのはどんなところですか?
小林は、感情をあまり表に出さないんですけど、心ではいろんな感情が動いているキャラクター。それをセリフとしては言えないので、細かい所作などで僕なりに表現したつもりです。みなさんにも、ぜひそういうところを見てもらえたらうれしいなと思っています。
―小林は明智と出会って人生が変わりますが、ご自身にとって印象的な出会いはありますか?
僕の芝居の師匠が江戸川萬時さんという方なんですけど、今回は江戸川乱歩の作品だから、不思議なご縁ですよね。萬時さんは僕が初舞台でまだ演技のイロハも何もわかっていなかったときに、ずっとお芝居を見てくれました。ご家族がいるのに、稽古が終わったあとも夜中まで付き合ってくださったり、無償の愛をくださった方なんです。だから、いまでも萬時さんの顔に泥を塗らないように、そして萬時さんが誇ってくれるような役者でいようというのが僕の根っこにあるもの。そういう意味でも、すごく特別な出会いだったので、小林にとっての明智先生が僕にとっての江戸川萬時さんですね。
―今年で27歳。30代が近づいてきていますが、20代のうちにしておきたいことは?
制服が着られるうちに、学園モノをやりたいです(笑)。というのも、僕は『ウォーターボーイズ』がめちゃくちゃ好きで、2が終わって10年経ったときに「10周年だから何かあるでしょう」と思って、マネージャーさんに情報収集をお願いしたほど。結局、何もなかったんですけど、今後もし『ウォーターボーイズ』があれば、僕が若いうちにやってほしいなと思います!
―逆に、もっと大人の男になりたい願望はありますか?
それもあります。先生役とか、戦争を題材にした作品とかもやってみたいですね。ただ、そのためには人となりを育てないといけないなと思っています。役者にとって、人となりが見えたら勝ちだなと思う部分があるので、役者としても、ひとりの人間としても、人格者として愛されるような生き方をしていくのが目標です。
―プライベートでもいろいろな経験や挑戦をしていくことが大切だと考えていますか?
そのために、まずは器を大きくしていきたいなと思います。いまは結構小さいので・・・(笑)。なので、友達をおごりの旅行に連れて行ってみたいですね。あと、これからやろうと思っているのは、いい肉体を目指すために本格的にジムに通おうかなとも思っています。
―忙しい毎日の中で、どうやってリラックスしていますか?
友達と笑いながらご飯を食べている時間が、僕にとっては一番ストレスが飛んで行っているなと思う瞬間。地元が近いので、どれだけ忙しくても「今日は帰れる」と思ったら、地元に帰って、固くなった頭をほぐしてからこっちに戻って仕事するようにしています。
―小澤さんにとって、友達は大きな存在なんですね
そうですね。いままでは地元の友達がいればいいかなと思っていたんですけど、巡り合わせや人との関わりを大事にしていった方がきっと人生も豊かになりますし、人としても成長できると思うので、今後はいろんな関係を築いていきたいです。
―最後に、作品を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします
この作品は僕と頼我くんがW主演を務めさせていただき、「B2takes!」のメンバーも総出演という盛りだくさんの探偵エンターテインメントです。内容としても、友情やアクションなど、どの世代の人でも楽しめるような見どころが満載の素晴らしい映画になっています。1回のみならず、2回3回といろんなものを感じながら観てもらえるとうれしいです。
-ありがとうございました
小澤廉(おざわ・れん)
1991年8月12日、神奈川県出身。
2013年にエンターテインメント集団「B2takes!」に加入したのち、同年10月には「仮面ライダー鎧武/ガイム」のラット役で俳優デビューを果たす。その後、「おそ松さんon STAGE~SIX MENS SHOW TIME~」など舞台を中心に活動。「ダイヤのA The LIVE」の沢村栄純役で話題となり、2.5次元俳優として人気を博す。日本テレビ系情報番組「PON!」ではお天気お兄さんを担当する。2018年は映画単独初主演となる『新宿パンチ』が公開。