
写真=松林満美
―普段、テレビに出られている時とは大きく印象が違いますね
まわりの方々からも「印象が違うね」とよく言われました。でも、私自身は南海子と近い部分がたくさんあるんです。コンプレックスが強かったり、人との関わりが苦手だったり…。テレビでは“愛人にしたい”とか華やかなイメージを持っていただくことが多いと思いますが、私生活はけっこう地味なんですよ。巻き髪もしていません(笑)。
―この作品をきっかけに、またご自身のイメージが変わるかもしれませんね
それもいいかもしれませんね(笑)。どちらの面も持っているので、「こんな一面もあるんだね」と、どちらも受け入れていただけるとうれしいです。役作りの面では、私は結婚していないし子供もいないので、気持ちづくりに苦労しましたけど、性格などの面ではスッと入っていけました。
―脚本を読まれた感想を教えてください
三浦しをんさんの原作は、精神的な描写がすごく細かく描かれていて、人間の闇の部分が表現されていることに感動しました。映画では、ほとんどのシーンが2人芝居…1対1の構図なんです。2人というのは、楽しくもあり、怖くもあるシチュエーションなんですよね。芝居と芝居のぶつかり合い、というような。
―共演した井浦新さん、瑛太さんの印象はいかがでしたか?
新さんは、撮影の合間も信之そのものでした。もちろんお話などはしたのですが、まったくつかめなくて距離があって…、信之になりきってらっしゃったからですが、いまだに新さんの人となりがわかりません(笑)。瑛太さんも輔そのものでしたね。南海子は、輔に対しては一番感情を出すシーンが多いので、かなりコミュニケーションを取りましたし、お芝居的にも助けていただきました。
―かつてワークショップにも通われていたという、大森立嗣監督の現場はいかがでしたか
ワークショップに通っていたのは8年ほど前だったのですが、そのころはすごく厳しい方というイメージでした。今回は、現場の臨場感を大切にしたいということで、アドバイスも最低限にして任せていただいたんです。最初は、本当にこれで大丈夫かなと思ったりもしたのですが、監督には絶大な信頼を寄せているので、監督がいいならOKかなと思いながら。もっとビシビシやっていただいてもよかったんですが(笑)。
―女優として信頼されている証ですね
いえいえ、全然そんなことないです。もともと女優志望でこの世界に飛び込んで、でも不器用で後悔ばかりしていて、今でも自信がないのでいろいろなワークショップに通っているんです。「なんでこんなことができないんだろう」という反省の日々ですね。まわりの役者さんからもすごく刺激を受けています。ようやく、物怖じせず演技できるようになった程度でしょうか…。いろいろなバラエティに出させていただいて、度胸はつきました(笑)。
―完成した本作をご覧になっていかがでしたか?
監督のエネルギーと、ジェフ・ミルズさんの音楽に圧倒されました。怖さを掻き立てられる感覚は、これまでの日本映画にはあまりない感じでした。大森監督は、普段は穏やかな方なので、奥深さを感じました。音楽によって、映画の色が大きく変わった印象ですね。
―一番印象に残っているシーンはどこですか?
南海子と輔が草むらで話をするシーンです。南海子が初めてつらさを告白する、大切なシーンでした。そのときに、監督から「相手を信用して当たっていけ」とアドバイスいただいて、自分で抱え込むのではなく、相手と対峙して演技するように心がけるようになりました。私自身にとっても重要なシーンになりましたね。当日はどんよりくもっていたので、映像を見て、「こんなにきれいな草むらだったんだ」と感じたシーンでもありました。
―南海子もまた、闇を抱えています
信之、輔、未喜(長谷川京子)に比べると、南海子が一番、観る方が感情移入しやすい役柄かもしれません。でも、南海子も知らず知らずのうちに人を傷つけ、暴力的なことに巻き込まれていって、闇を抱えるようになるのですが、そういうことは日常でも起こり得ることなので、誰が見てもいろいろな解釈ができる内容だと思います。ある意味、南海子が一番怖いかもしれませんね。
―妻として、母として、女としての顔を持つ南海子を演じ分けたポイントは?
あまり作りこむようなことはしなかったんですが、それぞれの立場で対峙している相手に対して、南海子が思っていることを大事にしようと思って演じました。自然と表情にもそれが表れてきたと思います。
―最後にメッセージを
すごく魂のこもった、衝撃的な映画です。みなさん、心構えを持って、映画館の大スクリーンを通じてその迫力を感じてください。
―ありがとうございました
橋本マナミ(はしもと・まなみ)
1988年8月8日、山形県出身。
1997年に芸能界デビュー。グラビアアイドルとして人気を誇る一方、女優としても活躍。主な出演作に、映画『闇金ウシジマくん』『きいろいゾウ』『オー!ファーザー!』『アキラNo.2』、ドラマ「不機嫌な果実」「せいせいするほど、愛してる」「女囚セブン」などがある。また、「バイキング」などバラエティ番組などでも活躍中。