
写真=三橋優美子
―初出演となる本作、どのように演じようと思われましたか?
初めての映画ということで不安もあったんですが、中川(龍太郎)監督と(仲野)太賀さん、スタッフの方々とお会いして、ディスカッションというか、どのように進めていくかを話し合う機会をいただけて、すごくありがたいなと思いました。撮影に入る1カ月前くらいだったと思います。それからたい焼き屋さんでの練習もさせていただいて。「みんなで作っていく」ということをみなさんから言っていただけて、安心して現場に入れました。
―1日経つと記憶がなくなってしまうという、難しい役どころでした
一番難しかったのは「しゃべり方」だったかもしれません。バックボーンとか人物の生い立ちみたいな中身のアプローチは監督さんたちと深めていくことができましたけど、実際にその人物を演技で表現するためには、自分の口癖とかを直さないといけなくて。「こよみってこんなこと言わないですよね」とか「こんな言い方はしないよね」って、何度も確認させていただきながら進めました。今のはちょっと“(素の)私”が出過ぎちゃったかな、とか、逆に冷たすぎたかな、とか、加減が難しかったです。
―監督からはどのようなアドバイスがあったんですか?
監督さんからは、「衛藤さんの魅力を消さないでほしい」と言っていただけました。「私の魅力ってなんだろう」って悩んだところもありましたけど、まずは共通点を見つけようと思いました。こよみはすごく強い女性なんですけど、私も強い女性でありたいなっていう憧れもあって、そういう部分は共感できるかも、と。でも、1日で記憶をなくしてしまうことのつらさって、なかなか自分との重ね合わせで想像できるものではないので、特に、毎朝同じことの繰り返しになるシーンなんかは、フラットになろう、と割り切って演じました。
―太賀さんのリアクションとのコンビネーションも重要でしたね
太賀さんは、観てくださる方たちのことを本当に考えてらして、私より遥かにすごいところでディスカッションされていました。「それだと観ている人に伝わらない」って・・・。演技って、自分と、目の前で演じている相手以外にも、観ている方の存在があるんだって気付かされて、感動しました。
―こよみを演じてみて、人と人との関わり方で影響を受けることなどありましたか?
こよみのセリフに「世界」って言葉が何度も出てくるんです。どうしても、人って自分の見ている世界と、ほかの人が見ている世界を同じと考えてしまいがちなんですけど、こよみは「同じものを見ているけど、私の世界とその人の世界は別のもの」って考え方なんですよね。自分の中には全然なかった考え方なので、そういう風に人生を捉えてる人もいるんだと思うと、それはそれで素敵な生き方だと思うし、「たしかに!」と思うし、自分もそういう視点を持ってみたいなと感じました。
―撮影されていた2019年は、大きな転機となった年でしたね。頑張り続けられる原動力はなんでしょう
そうですね・・・。実は、最近お会いする方に聞かれることが多くて、考えていたんですけど、自分の中で目標が明確というか、目標を立ててそれを目指してがんばるのが好きなんですよね。ちょっと高めの目標を立てて、それに向かっていくための課題を一つ一つクリアしていくのが得意なので、意識的に目標を作る、課題を立てるようにしていました。性格も負けず嫌いなので(笑)。自分に向かって「あなたならできるでしょ」って言い聞かせるようにしてました。
―今後の意気込みを聞かせてください
新しいことに挑戦するとか、新しい目標を立てるということは、待っていても機会が与えられるものではないと思うんです。だから自分で作っていかなきゃいけないんですけど、それってけっこう難しいんですよね。今は幸いにも時間にゆとりが持てていて、朝にゆっくりごはんを食べて、「今日、天気いいな」って思える時間があるので、そういうものを大切にしながら、流れに身を任せるのも今はいいかな、とも思います。ゆっくり、次に自分が本当に何をしたいのか、何を目標にすべきなのかを見つけていけたらいいなと思います。
―ありがとうございました
衛藤美彩(えとう・みさ)
1993年1月4日生まれ、大分県出身。
2011年に1期生として乃木坂46に加入し、2019年3月に卒業。現在は、ファッション誌『美人百花』のレギュラーモデルや、「プロ野球ニュース」のキャスターとしても活躍。自身初のフォトブックが発売中。2020年秋公開の映画『みをつくし料理帖』では遊女役に挑戦する。