「人に夢中になる感覚をうまく表現できた」/『アンダー・ハー・マウス』エイプリル・マレン監督インタビュー

ユニセックス的なアプローチで活躍するトップモデルのエリカ・リンダーを主演に迎え、2人の女性同士による真実の愛が生まれる姿を刺激的に描いたラブストーリー『アンダー・ハー・マウス』が10月7日に公開される。“女性視点から見た女性のためのラブストーリー”を誠実に描くため、撮影スタッフをすべて女性で揃えた本作。メガホンをとったエイプリル・マレン監督にその狙いを聞いた。

写真=坂本康太郎

―女性同士の恋愛を描いた本作への思いを聞かせてください

純粋なラブストーリーで、性別や文化に関係なく、普遍性のある物語だと思いました。描き方がいい意味で大胆で、身体が語っていく物語だったので、そこに挑戦するやりがいを感じました。人生を揺るがす衝撃的な恋をうまく描けていたと思います。

―初主演となるモデル、エリカ・リンダーの演技はいかがでしたか?

もちろん、大変満足しています。初めて演技に挑戦した彼女ですが、どんどんカメラの前でセリフを話すことに慣れていくさまが見ていて楽しかったです。彼女自身が自覚していない、体の動かし方のような個性が見つかっていくのも刺激的でした。「彼女らしさ」を見出していくことが、監督としてとても面白かったです。

―スタッフも女性で揃えたそうですね

女性の視点で「恋に落ちる」とはどういうことなのか、なにが女性を魅了するのか、親密になるとはどういうことなのか、を描くために女性スタッフを揃えました。それぞれのスタッフがそれぞれの役割を通じて、スクリーンにそれらを投じていってもらうことが目的でした。

20171005-01_sub01―どういった方に見てほしいですか?

普遍的な物語にしたかったので、特に対象を女性や男性に限定しないように意識して作りました。逆に、そういった枠組みを取り払い、純粋に2人の愛の軌跡を追うことで、視野を広げ、彼女たちの世界に没入していただきたいと思っています。

―そういったメッセージを、映画を通して発していくことが大切ですね

映画の影響というのは非常に大きいと思っています。この作品のキービジュアルが街中に掲載され、当たり前のこととして生活の中にあることが大切だと思います。今まで家族や友人にも本当の自分を共有できないで苦しんできた方もいらっしゃると思いますが、愛にはいろいろな形があり、それは普通のことなのだということが広まっていくことによって、本当の自分を表現する勇気につながってほしいです。

―一番印象的なシーンはどこですか?

2人がベッドで過ごすシーンですね。いつの間にか夜になり、朝になり、必ずしも時系列通りではない。これがまさに「人に夢中になる感覚」なのだと思います。時間の感覚がなくなり、相手を想う大切さを感覚として意識しているけど、別に言葉にはしない。そういった本能的な愛が表現されたシーンだと思います。現実ではそういう感覚を留めておくことはできませんが、映画として残しておくことができて、監督としてとても面白味を感じたシーンでもありました。

―今後、監督としてどういうことを表現していきたいですか?

抽象的ですが、“時を超えた愛”のようなものを撮りたいですね。「これでオスカーを獲るぞ!」というくらいの強い思いで実現したいテーマです(笑)。

―ありがとうございました

20171005-01_sub02エイプリル・マレン
2007年、コメディ映画『Rock, Paper, Scissors: The Way of the Tosser(原題)』で監督デビュー。2012年、『Dead Before Dawn 3D(原題)』では、若手女性監督として初めて3Dアクション映画を手掛けた功績をたたえられ、The Perron Crystal Awardを受賞。2017年には『Badsville(原題)』が公開。女優として、映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』やテレビ「GoodGod(原題)」シリーズなど多くの作品に出演している。

ABOUT
心身ともにたくましいダラス(エリカ・リンダー)は、昼間は大工として働き、夜は毎晩のように違う女性と関係を持っては、自分の居場所を探していた。そんなある週末の夜、ネオン輝くバーの片隅で、ダラスは、ファッション誌の編集者として成功するキャリアウーマンのジャスミン(ナタリー・クリル)と出会う。情熱的に絡み合う2人にとって、お互いの愛を確かめ合うのに時間はかからなかった。しかし、ジャスミンには結婚を約束した彼氏がいるという大きな壁があった。
配給:シンカ
公開日:10月7日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://underhermouth.jp/
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