「10年の節目に最高のプレゼントでした」/映画『サイレント・トーキョー』庄野崎謙インタビュー

クリスマスの名曲「Happy X-mas(War Is Over)」にインスパイアされた秦建日子の小説を映画化した『サイレント・トーキョー』が12月4日に公開された。「リアリティーを徹底的に追及した」と波多野貴文監督が語るように、共同出資で3億円ほどかけて建造された東京・渋谷のスクランブル交差点のオープンセットに総勢1万人のエキストラを集めるなど、空前のスケールで撮影された本作。その中で、カンボジアPKOに参加した自衛隊員を演じる、2021年にデビュー10周年を迎える俳優・庄野崎謙に話を聞いた。

写真=三橋優美子

―99分間の中にスピード感と緊張感が凝縮された作品ですね

始まりから終わりまでノンストップで走り続ける作品で、あらゆるシーンが美しく描かれている映画ですね。YouTuberの方たちも出演されていたり、現代らしいというか、俳優の枠を超えた出演者さんたちによってより作品が広がっている気がします。絶対、この配信は見ちゃうだろうなって思いましたね(笑)。

―足利に渋谷のセットを作り込んで撮影されたそうですね

どこからどこまでがセットなのかまったくわからないですよね。トイレや改札まで作り込んでいたそうです。細かいところまで作り込まれていて迫力があって、間違いなく身近な渋谷で大変なことが起こった、という気になりました。

―カンボジアのシーンもリアリティーがありました

現役の自衛隊員の方などに軍事指導・・・地雷撤去の動きを教えていただきました。本当に細かい部分まで、足の動かし方から、鉄板の持ち方から・・・地雷を撤去するときは、その周辺にも地雷が埋まっているかもしれないので、安全が確保された一本道のエリアだけしか動いちゃいけないんです。撮影に入る前の練習でもそこを厳重に守って、指導していただきながら取り組ませていただきました。

―重い鉄板を軽々と持ち上げていましたね

爆弾が起爆しないよう、人間の体重の代わりにならないといけないものなので、かなり重いんです。でも、自衛隊員の方々はそれを軽々と持っていて、そういった動きこそがリアリティーにつながるということで、演じる上でもすごく気にしました。かなり一杯一杯でした(笑)。渋谷のセットのこともそうですし、カンボジアのシーンでの景色や登場人物の動き、衣装やメイクの“汚し”まで、作り手の細部までのこだわりを感じられて、本当にいい作品に参加させていただけて、刺激になりましたし、経験になりました。

―改めて、本作の見どころはどこでしょうか

日本の作品って、余韻とか雰囲気をたっぷり見せる演出の作品が多いと思うんですが、本作は何を見せたいのかが明確で、じっくり撮影してバッサリと見せたいところだけ見せることで、スピード感や緊張感を出した作品になっているんだと、本作を最初に見たときに感じた印象でした。演じているときは、引きのカットや寄りのカット、角度も変えて本当にたくさんのカットを何度も撮ったんですよ。だからつい、あれもやりたい、これもやりたい、緩急や抑揚を付けたい、と、作り手としての欲が出てしまう。だから、「引く作業」ってすごく大変だと思うんです。でも、完成したこの作品から、そぎ落とすことの大切さ、それによって強いメッセージが作られることを学ばせていただきました。

―来年は、デビューされてから10年目の節目になります

楽しい10年でした(笑)。でも、最初のころは本当に右も左もわからず、自分の演技にも自信が持てなくて、焦っているけどそれにも気付かず、自分を見つめ直すこともできずにここまで来ていました。最近になってようやく・・・今年は新型コロナの影響でじっくり自分と向き合う時間が増えたこともあって、エンタテイメントに対しての向き合い方が変わったと思いますね。それまでは、苦手意識というか、「自分は本当にお芝居が好きなのか?」と思うこともあったんですが、今はやっぱり楽しいなと思えるようになりました。そのきっかけになったのもこの作品の撮影でしたね。

―そんな運命的な作品の公開が、お誕生日の12月4日でした

不思議な気持ちですよね(笑)。年々、誕生日なんてあまり気にしなくなってきたのに、楽しみな映画の公開がカウントダウンしていくにつれて自分の誕生日が迫ってきていて、どっちにもソワソワするという(笑)。でも、365日ある中でそれが重なって、10年の節目としてこんなにありがたいことはないですよね。最高のプレゼントでした。

―最後に、意気込みを聞かせていただけますか

本作のようにスピード感や迫力をズバリお見せするような作品や、じっくりと感情や人間関係を表現するような作品など、日本の映画・・・エンタテイメントって面白いなと思います。その中で、いろいろな種類の作品に参加させていただき、いろいろな役を演じさせていただいて、自分の限界を自分で決めず、自分という俳優がもっと大きく成長できるよう、『サイレント・トーキョー』のような素晴らしい作品にこれからも出会っていけるよう、日々がんばっていきたいと思います。

―ありがとうございました

庄野崎謙(しょうのざき・けん)
1987年12月4日生まれ、福岡県出身。
ドラマ・舞台を中心に幅広く活躍。「ATARU」ではドラマシリーズに続き『劇場版ATARU~THE FIRST LOVE & THE LAST KILL』に出演。主な出演作に、ドラマ「俺の空~刑事編~」「白銀ジャック」「西郷どん」「SUITS/スーツ」「名探偵・明智小五郎」など。現在放送中のドラマ「先生を消す方程式。」(EX)に出演中。

ABOUT
12月24日、恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入る。半信半疑で中継に向かった来栖公太(井之脇海)は、そこにいた主婦・山口アイコ(石田ゆり子)とともに犯人の罠にはまり、実行犯へと仕立てられてゆく。その様子を朝比奈仁(佐藤浩市)が静かに見つめるなか、爆発は起きた。そして次の犯行予告が動画サイトに上げられる。「標的は渋谷・ハチ公前。要求は首相との生対談。期限は午後6時」。独自の捜査を行う刑事・世田志乃夫(西島秀俊)と泉大輝(勝地涼)、不可解な行動をとるIT企業家・須永基樹(中村倫也)、イヴの夜を楽しみたい会社員・高梨真奈美(広瀬アリス)、そして一帯を封鎖する警察、事件を一層煽るマスコミ、騒ぎを聞きつけた野次馬たち。さまざまな思惑が交差する渋谷に“その時”が訪れる。それは、日本中を巻き込む運命のXmasの始まりだった。
配給:東映
公開日:絶賛公開中
公式サイト:https://silent-tokyo.com/
(C) 2020 Silent Tokyo Film Partners