「僕たちがぶつけ合う愛の形を見届けて」/映画『劇場版ポルノグラファー~プレイバック~』猪塚健太インタビュー

2018年より実写ドラマがFODで公開され、SNSを中心に話題となったマンガ「ポルノグラファー」シリーズが、ドラマ版に続きメガホンをとる三木康一郎監督によって映画化され現在公開中。竹財輝之助が演じる主人公の官能小説家・木島理生の相手役となる純情な元大学生・久住晴彦を演じるのは、映画・舞台など話題作への出演が続く猪塚健太だ。作品への思いを聞いた。

写真=坂本康太郎

―2年前から人気のドラマがいよいよ映画化されました

ドラマシリーズの最初の撮影は2018年だったんですが、今でこそBL作品はすごく増えてきていますが、当時はまだ製作陣も出演者もチャレンジングな領域でした。このような題材を連続ドラマにすることが当時としては珍しく、どういう反響になるかわからないけど、とにかく見てくれた人に何か感じ取っていただけるものがあるように、と一生懸命、丁寧に作っていました。最初は配信、それから地上波で放送されると、すごく熱量のある反響を多くいただいて、それにすごく勇気付けられたというか・・・受け止めてもらえたと感じることができて、その熱量とともにいい方向に製作陣が動かされていった作品だと思います。みなさんの応援のおかげで、今回の映画までくることができたんだと思っています。

―海外での反響も大きいようですね

アジア圏では人気のジャンルになってきていると聞きますよね。2018年頃はちょうどその価値観が変わっていく時期で、「ポルノグラファー」シリーズがそのきっかけになる作品の一つなのかなという気もします。SNSでも海外の方がフォローしてくださることが増えてきて、自分が想像していた以上に多くの方々に受け入れていただいているんだなと感じます。

―動画配信からスタートして、SNSで話題になった本作。今らしい広がり方ですね

作品を気に入ってくださった方が一人ずつ熱量を持ってほかの方に伝えてくださり、それがどんどん大きく広がっていった好例だと思います。

―周りからの評判はいかがでしたか

ドラマは配信だったり地上波だったりといろいろな形で見ていただくことができたので、この作品をきっかけに僕のことを知っていただいた方も多くいましたし、前から知ってくださっていた方には、「こういう役もできるんだ」という新たな一面を見ていただくことができました。ドラマが評判になって続編として続けられることを、この作品を愛してくださるみなさんが一緒に喜んでくれたので、本当にいい出会いだったなと思います。

―ドラマ版と映画版とで、何か違いはありましたか?

ドラマ版も手掛けた三木(康一郎)監督がご自身の考えをすごく明確に持っていらっしゃる方なので、変わってしまったスタッフさんもいましたが、チームの目指すところは同じというか、監督が表現したいことを忠実に実現できるスタッフさんたちだからこそ作り上げることができた今回の映画だと思います。監督は、役者の立場で演出してくださいましたし、「気持ちができるまでずっと(カメラを)回しておくから」と言ってくださったり、すごくやりやすい環境を与えてくれて。今まで舞台で演じることが多かった自分にとって素晴らしい経験になりました。

―映像の美しさも特徴的な作品ですね

純粋に三木監督が撮る映像が美しい。どんな演技をしても必ず美しく撮ってくださるという信頼感が大きかったですね。そしてそれにマッチする音楽も。鬼束ちひろさんが書き下ろしてくださった曲も、本当にピッタリですよね。その世界観で丁寧に作り上げられた人間ドラマで、心情をゆっくり丁寧に表現していただいたので、より美しい世界が表現されたんじゃないかなと思います。

―今後、ご自身としてチャレンジしていきたい領域はありますか?

とにかく何にでもチャレンジしていきたいですね。映像も舞台も、とにかくたくさんお芝居がしたいです。欲を言えば、人間の持っている欲望というか醜い部分、汚い部分をさらけ出すような役に挑戦したいです。それって芝居の特権だと思うんですよね。それを演じることができる役者さんって限られていると思うし、だからこそ、そういう役を任せてもらえるような役者になりたいって思っています。

―たとえば、憧れる俳優さんはいらっしゃいますか?

「この人」というように定めないようにしてはいるんですが、やはりゲイリー・オールドマンは「すごいな」といつも思います。『レオン』の感じに憧れていました。作品によってまったく顔も違いますし、漂う“ヤバさ”がすごいですよね(笑)。日本でいうと、白石(和彌)監督と組んでいるリリー・フランキーさんも、あの手を出せない感じ、お芝居なのに何をしてくるかわからない感じというのが、本当にすさまじいと思います。そういう方を見るとしびれますね。

―普段、気分転換にはどんなことをされていますか?

これという趣味がなくて・・・。外出自粛期間は家にいる時間も増えたので、けっこう持て余していました(笑)。趣味を見つけたいなとも思うんですけどね。実は、竹財さんがゴルフがめちゃくちゃ上手で、僕もそろそろゴルフやってみたいなと思い始めてます。竹財さんに「教えてください!」って言ったら、「いいよ。でもめちゃくちゃ厳しいからね」「最初はゴルフクラブ握らせないから」って(笑)。もう本気ですよね(笑)。でも、ゴルフはマイペースでできるし、大人な感じがうらやましくて。今はまだ出かけるのも気を付けないといけないので、いつかやってみたいなって思っています。

―最後にメッセージをお願いします

ドラマから始まって、見てくださった方々の応援と熱量のおかげでここまで来られました。映画で完結できるのは本当に幸せなことだと思います。携わる人全員が最大限の力を注いで作り上げた作品ですので、みなさんの目に焼き付けてほしいです。原作を知っている方も知らない方も、映画としての脚本になっているので、間違いなく楽しめるものになっています。僕たちがぶつけ合う愛の形を見届けていただければと思います。

―ありがとうございました

猪塚健太(いづか・けんた)
1986年10月8日生まれ、愛知県出身。
代表作はドラマ「今日から俺は!!」、映画『娼年』『斉木楠雄のΨ難』、ミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」「星の大地に降る涙 THE MUSICAL」等に出演。舞台・ドラマ・映画とマルチに活躍中。3月24日(水)、第32回フジテレビヤングシナリオ大賞 ドラマ「サロガシー」に出演。

ABOUT
官能小説の「口述代筆」。奇妙な出逢いを経て恋人になった、官能小説家・木島理生(竹財輝之助)と大学生・久住晴彦(猪塚健太)。木島が田舎へ里帰りしてからも、文通で遠距離恋愛を続けていた二人だったが、就職したての久住とすれ違い、気まずい雰囲気に・・・。そんな折、再び腕を負傷した木島はかつてを思い出すように、地元で知り合った青年・静雄にペンを握らせる。そこへ久住がやってきてしまい・・・。
配給:松竹ODS事業室
公開日:絶賛公開中
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