「テレビではできないような内容に挑戦できた」/「夫のちんぽが入らない」中村蒼インタビュー

衝撃的なタイトルと、実体験に基づく悩みを赤裸々に綴った内容が話題を呼んだ、主婦こだまによる自伝短編小説「夫のちんぽが入らない」がNetflixでドラマ化。久美子(石橋菜津美)とともに、性生活を伴わないパートナーとして共に歩むことを決意する夫・研一を演じるのは、舞台やドラマ、映画で幅広く活躍する中村蒼だ。演出のタナダユキ監督とは、2016年のドラマ「タチアオイが咲く頃に~会津の結婚~」以来、2度目のタッグとなる。今後、多くの作品を控える中村に話を聞いた。

写真=三橋優美子

―原作を読んだときの印象は?

夫婦間の話だけではなくて、教育現場の話とか思ったより深い内容だったので、これをそのままドラマにするのか、ある程度エンタメ性を加えるのかは気になりました。タイトルも衝撃的ですけど、内容も違った衝撃がありました。

―実話を基にした物語ですが、どのような準備をされましたか?

夫婦の話だったので、相手役の石橋さんと撮影を進めながらその関係性を表現していけたらいいなと思っていました。お互い、あまりきっちり話し合って役作りをしていくタイプではないので、意識して打ち合わせをしたというわけではなく、撮影もだいたい順撮りだったこともあって、自然な流れでできたかなと思います。

―監督から特別な指示はありましたか?

タナダ(ユキ)監督とは2回目のお仕事だったんですけど、ワンカットで進めたり、あっさりシーン撮りが終わったり、サバサバ進められる監督なので、必要な場面以外は好きなように演じさせていただいて、何かあれば監督から指導をいただくような撮影現場でした。すごくやりやすい現場の雰囲気を作っていただけました。

―FODやNetflixでの配信。新しいジャンルでの放送についてどう感じますか?

ドラマを一挙に観られるのはいいと思います。好きなときに好きな分だけ観られるというのもネット配信ならではだと思いますし、内容もテレビではできないようなことに挑戦できるので、新しい挑戦かなと思います。字幕もいろんな国のものが付くらしいですし、観ようと思えば世界中の人が観られるので、その点もネット配信らしいなと思います。

―映画館やテレビとは違った視聴環境で、観る人の幅が大幅に広がりますね

ドラマの2人は、遠回りしながら自分たちの悩みを解決しようとしていて、人によっては「病院にいけばいいじゃん」とか「誰かに相談すればいいじゃん」とか思うのかもしれないですけど、この2人にはその環境が与えられなかった。まわりの人は「普通こうでしょ」って当たり前のように“その人の普通”を2人に押し付けて、そのせいで2人は回り道せざるを得なかったんですけど、その分、2人だけがたどり着ける考え方やものの見方ができて、「自分たちだけがたどり着いた結論だ」ということで力強く前に進むことができたのだと思います。ドラマでの2人はそういう道をたどったけど、夫婦間の問題とか、恋人や異性との悩みって世界共通というか、内容は違えど同じ悩みは誰にでもあると思います。だから、どんな方が観ていただいても共感できる部分があると思うし、世界中の人に少しでも助けになると嬉しいですね。

―今年は舞台やドラマなど多くの作品の公開が控えています。7月末からはシェイクスピア原作の舞台「お気に召すまま」にご出演されますね

まだ脚本も稽古も先なので、原作を読んだだけなのですが、シェイクスピアの作品に出させていただくのは初めてですし、自分がやらせていただいていいのかなって思いもありつつ・・・、シェイクスピアの作品は人によって解釈が違ったり、「私はこう思う」とか捉え方も自由で、難解な分、人それぞれ感じることが違うので、また新しい作品が生まれるんじゃないかなと思っています。演出の熊林(弘高)さんとは前回もご一緒していて、稽古で「なるほど」と思うことを言っていただいたり、すごくセンスを感じる方なので、またお仕事できるのが楽しみです。

―先日は、NHKスペシャルで主演ドラマ「詐欺の子」も放送されました

詐欺に関する資料を読んだり映像を見たりしましたが、詐欺被害の実情を知ってびっくりしました。ニュースでよく見かけますけど、自分のまわりに被害に遭った人がいないこともあって現実味がなかったんですが、演じてみて、こんなにも簡単にその世界に巻き込まれてしまうというか、知らないうちに事件に加担するようなこともあるほど身近なんだと知って、驚きました。まず知るということが大事だと思いますし、頭の中にその知識がちょっとでもあれば被害を回避できることもあるかもしれないので、微力ながらその助けになれているといいなと思います。

―最後にメッセージをお願いします

ドラマ「おとちん」は、夫婦の問題だけじゃなく、個人の問題で悩んでいる人にもヒントになる作品だと思いますし、個人的にも思い入れのある作品になったので、多くの人に観ていただきたいと思います。そのほかの舞台やドラマも、それぞれ全然違う物語、ジャンルでもあるので、これからもいろいろな作品をみなさんに提供していけるといいなと思いますので、応援よろしくお願いいたします。

―ありがとうございました

中村蒼(なかむら・あおい)
1991年3月4日生まれ、福岡県出身。
寺山修司原作による舞台「田園に死す」で主演デビュー。主な出演作品に、映画『東京難民』、テレビドラマ「無痛~診える眼~」「命売ります」、主演ドラマ「詐欺の子」、舞台「OTHER DESERT CITIES」など。7月末から舞台「お気に召すまま」が公演予定。

ABOUT
主婦こだまの自伝である短編小説「夫のちんぽが入らない」がNetflixでドラマ化。原作は、2017 年 1 月に大幅に加筆修正され書籍化し、発売 1 カ月で13 万部の売り上げを突破。「Yahoo!検索大賞 2017」では小説部門賞を受賞した。
配給:フジテレビ
公開日:FOD・Netflix にて全話一挙配信中