
写真=三橋優美子
―まずは脚本を読んでの感想を教えてください
茅野愛衣(以下、茅野) 劇場版だけあってすごく分厚い台本で・・・(笑)、ずっと手に持っているとしびれてくるくらい重量感のある台本で、めくれどもめくれども会話劇が続いていました。『冴えカノ』って、人物同士が掛け合う姿をとても大切にする作品なので、今回もそれがすごく表れている本になっていました。
大西沙織(以下、大西) 劇場版だからといって何か変わることもなく、1期・2期からつながっているお話として臨みました。でも、やはり今回は英梨々と詩羽先輩との会話の中でも、一つの「決着」に向けて進むものが出てくるので、そういう部分を受け入れていく部分では、アニメとの違いも感じました。
茅野 アニメの中でも、プライベートと仕事の両立は難しい・・・って思いましたね(笑)。どんな職業の方でも同じだと思いますけど、仕事と恋ってすごく難しいバランスでいるんだなって。そういう部分がリアルに描かれていて、これこそ脚本の丸戸(史明)さんらしさというか、“丸戸節”というのを感じました。
大西 しかも、(主人公の)倫也は、プライベートにも仕事にも関わってくるんですよね。だから切り離して考えるってわけにもいかないから、モヤモヤしますよね。
茅野 そう、“モヤモヤ”だよね(笑)。「劇場版だから、きっときれいに進むんだろう」と思う方もいらっしゃると思うんですけど、そんなことないんですよ、『冴えカノ』は(笑)。二転三転どころじゃなくて、心をかき乱されることがたくさんあって。
大西 私たちもヘトヘトになりながら収録してましたよね(笑)。収録を2日間にかけてやったんですけど、初日が終わるころには、「明日も残ってるけど・・・どうなるんだろう」って。
茅野 それこそ、倫也役の松岡(禎丞)さんは、集中を切らしたくないということで、ずっと立っていらして。たぶん炭酸水しか口にしてないんじゃないかな・・・。
大西 休憩もあまりしたくない感じでしたもんね。お弁当も食べずに、早く次を録りたいって感じで。
茅野 それくらい集中している姿が倫也と重なる部分が多くて、引っ張ってもらいましたね。
―みなさん、しっかり準備して収録に臨まれたんですね
茅野 出演者のみなさんそれぞれ、自宅で台本を読んでみて、セリフの長さなどをチェックしてから持ち寄るんですけど、その読み合わせが終わらない終わらない(笑)。でも、『冴えカノ』はずっとおなじみのメンバーでやっているので、「こんな感じになるかな」というのは想像できました。
大西 面白かったのが・・・「初日にここまで録る」というのは特に決まっていなかったので、「きっとここまでくらいだろうな」と想像するところまでしかチェックしていなかったんです。そしたら、意外と順調に進んじゃって。チェックしていないところまで収録するかも・・・となったときの私と安野(希世乃)さんの焦りようといったら(笑)
茅野 途中、時系列が入れ替わるようなシーンもあったりするんです。今回、その時系列順に録るかも、という話が出てきたんですよね。アニメの収録だと、実はそういうことって珍しくて、途中に回想シーンがあっても、映像通りの順番で収録することが多いんです。
大西 うしろにあるシーンを先に撮るかも、という話が出てきて、「あばばば」って・・・(笑)、戦慄(りつ)する2人がいました。
茅野 お芝居や掛け合いを大切にしてくれる作品だからこそ、そういった録り方も考えてくださって。でも、結局は大丈夫だったんだよね?
大西 はい! ちゃんとチェックしてる部分までで終わりました!
―英梨々と詩羽、それぞれの見どころはどこでしょうか
茅野 2人の会話をたどると、テレビシリーズのいろんな場面で、「もしかして詩羽はあのときこう思ってたんじゃないか」とか、「英梨々は実はあのことを知っていて話してたんじゃないか」と想像できることがたくさんあるんですよね。だから劇場版を見る前にテレビシリーズも振り返っていただきたいし、「Girls side」からのエピソードもあったりするので、原作やそのまわりのシリーズもチェックしていただくと、シーンやセリフが味わい深いものになると思います。
大西 とにかくエネルギーを注ぎに注いで挑ませていただいたので、見どころといったら「全部」です。絞れないなぁ・・・。もちろん、倫也と恵の関係がどうなっていくのか、というのが大きな見どころではあるんですが、英梨々と詩羽先輩の関係とか、英梨々と恵の関係とか、どうなっていくのかも見どころです。2期の最後で、英梨々と恵が仲直りするエピソードも描かれていたんですけど、あそこって、素の女の子同士の関係性だなって思ってて。同い年だからこそ出る、詩羽先輩とのやり取りでは出てこない空気感もあるので、そういうところにも注目してほしいですね。
―最後に、作品を楽しみにしている人にメッセージをお願いします
大西 みなさんの期待に応えられる作品になっていますし、きっと期待以上のものが劇場版には詰まっているともいますので、内容を楽しんでいただきつつ・・・びっくりしていただきたいです。
茅野 私たちも想像していなかったようなシーンも入っていたり、驚きが詰まっていたので、原作をすべてチェックしているという方でも「ヒッ!」ってなると思います。一つ言えるのは・・・絶対、最後まで観てください。あと、挿入歌も歌わせていただいていて、すごく作品に寄り添った素敵な楽曲になっています。豪華版パンフレットにCDが付いているので、ぜひご自宅に戻ってからも曲を聴きながら余韻にひたってください。
―ありがとうございました
大西沙織(おおにし・さおり/写真左)
8月6日生まれ。千葉県出身。
2012年から声優活動を開始し、アニメ「好きっていいなよ。」や「TARI TARI」などに出演。アニメやゲーム、ラジオなど幅広く活躍。代表作は、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』アイズ・ヴァレンシュタイン役、「ストライク・ザ・ブラッド」ラ・フォリア・リハヴァイン役、「ガーリッシュナンバー」柴崎万葉役など。
茅野愛衣(かやの・あい/写真右)
9月13日生まれ。東京都出身。
2010年、声優として本格的に活動をスタートし、アニメ「とある魔術の禁書目録II」の五和役でレギュラー出演。翌2011年にはアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で早くもヒロイン・本間芽衣子(めんま)役に抜てきされる。ほか、「この素晴らしい世界に祝福を!」「戦姫絶唱シンフォギア」「ソードアート・オンライン アリシゼーション」など数多くの人気作に出演。